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短編集  作者: 七瀬乃


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最期の嘘

 私の震える手を彼が握ってくれている。生暖かい血に染まった手で。


 ヒュードォン、という爆発音が耳を通り、全身に響いた。建物は地震のように揺れ、何かが焦げたような匂いが充満している。

 何度爆発音を聞いただろう。


「君は……本当に僕の言うことを聞かないんだから」

 力のない声で彼が言う。


「だって、私達はどんな時でもずっと一緒って言ったでしょ?」


「前はそう言ったよ……でも……今は状況が違うだろ……」

 彼の体を見る。ふくらはぎから下の足がない。お腹には爆発で飛んできた破片が刺さっている。床に血が広がっていく。

 その光景から私は目を逸らす。


「私はあなたのそばにいたいの」


「僕は……君には生きていてほしい。今……なら、まだ間に合う。逃げろ……」


「逃げないわ。あなたと一緒に死ぬ」

 彼の手を強く握る。


「お願いだから……僕を……安心させて死なせてくれ」

 

 私は口をぎゅっと結び、目を瞑る。一呼吸おいてから、目を開けた。


「嘘よ。もう少ししたら逃げるわ。そして、助けてもらって、私は生き続けるの。あなたよりも背が高くて優しくてかっこいい人と結婚するわ」


「ふふ。安心……したよ」

 彼を見ると、穏やかな表情をして笑っていた。

 

 私は天井を見上げた。

 彼の手が少しずつ力を無くしていくのを感じる。私はまたぎゅっと握った。


「愛してる」

 そう言って彼の顔を見ると、彼は目を瞑っていた。


 ヒュー、と音が近づいてくる。

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