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短編集  作者: 七瀬乃


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3/7

嘘つきの彼に、私がついた最大の嘘

「ねぇ、雨の匂いってなんか良くない?」

 彼の雨傘に入った私は、彼を見上げながら言った。

「そうだね。雨の匂いって良いね」

 彼が微笑みながら言った。彼の嘘はここから始まったらしい。


 私が焼きたてパンを買ってきた時は、一瞬彼の動きが止まった。

「わぁ美味しそうだね」と言って、完食していた。


 私がバレンタインにチョコをあげた時も、「美味しそう」と言って食べていた。


「猫と犬どっちが好き?」

「君はどっちが好き?」

「私は猫!」

「……僕も猫が好きだよ」

 そんな些細な嘘の積み重ね。

 


「僕は君に嘘をつき続けてた。もう疲れたんだ」

 別れ話をしている今、彼はずっと語っているのだ。

 彼はヒクヒク肩を震わせながら泣いていた。


 私は口を半開きにして聞いていた。


 そんなの知ったこっちゃない。

 嘘をつかずに正直に言えばいい。自分で嘘をついて、それが苦しくなって別れたい? 私のせい?


 私は歯を食いしばって思いっきり息を吸った。

息を吐き出すと同時に言った。

「私は最初からあなたのこと好きじゃなかった」

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