FILE38・本部にて−複雑な友人関係
「悠・・・やっぱ、すごいや・・・」
僕は悠の寝顔を見てつぶやいた。
手の中に収まっている、将捕の携帯をぐっと握って、本部に電話をかける。
「あ、R772です。実は、体験工作員が、敵の一人の携帯を手に入れていまして・・・はい、履歴なんかが残っているかもしれません。敵には逃げられたそうですが・・・はい、ですが・・・どうも、敵に我々の個人情報が漏れているみたいです。はい、少林・・・小林拳の変装なんかもしていましたし、そっくりでしたよ。本当に驚きです・・・はい、では、すぐ回収をお願いします。はい、次の任務先が決まり次第連絡を下さい。それまでは休養でよろしいですか?はい・・・では」
そう言い、電話を切った。
もう一度悠の顔を見る。
どこか安心したような表情で眠っている。
結局、僕らが去った後、僕が本部に連絡を入れる前に将捕と手乞は逃げてしまったらしい。
それでも、将捕の携帯があれば・・・少しは新たな情報が手に入るかも知れない。
悠は、腕がこんな風になっても、ちゃんと仕事をこなしてくれた。
僕なら・・・どうだっただろう?
痛みに泣き喚くんじゃないだろうか。
悠は・・・本当に、すごい。
僕は、本心から本当に感心していた。
「そうか・・・」
国際国家機密工作所所長、滝川は、R772からの報告を聞いて、考え込んだ。
“どうも、敵に我々の個人情報が漏れているみたいです”
個人情報が漏れている。
良く考えてみれば、漏れてもいない限り、敵がR772と体験工作員に接触できるはずがなかった。
だが、体験工作員の得た携帯は、なかなか有力な情報だ。
敵と直接接触して、腕の傷だけで一時戦闘不能まで追い込むとは・・・
なかなかの人材だ。
「所長!」
情報部隊隊長の、雄桜が、所長室に飛び込む。
「どうした、雄桜」
滝川が怪訝そうな表情で雄桜を見る。
「実は・・・敵の携帯電話を調べたのですが・・・」
「何も・・・わからなかったか?」
「逆です」
「逆?」
滝川は聞き返した。
雄桜が真面目な表情で続ける。
「はい、例の、今一番危険なあの奴らですが、実は、あの、世界的にも影響を及ぼしている、大手会社の馴玄株式会社とのつながりが・・・」
「何、馴玄株式会社と?」
「はい、あの携帯の登録者などを調べたのですが、馴玄株式会社で支給された携帯電話のようで・・・これが、関係ないとはいえないのでは?」
「確か・・・あの対峙した敵は将捕と呼ばれていたな」
「はい、現在、本名の特定中です」
「わかった。そのまま、調査を続けてくれ」
「了解です」
そういって、雄桜は部屋を出て行った。
馴玄・・・お前、何をしているんだ?
滝川は、旧友である、馴玄のことを考える。
お前、間違った道を進んでるんじゃないだろうな?
馴玄・・・
滝川は、複雑な気持ちで部下からの報告を待った。




