FILE36・悠の状態
僕はホテルの二人部屋をチェックインすると、スーツケースを気に留めながら部屋に向かった。
そして、部屋に着くとすぐに悠をスーツケースからだし、何重にもタオルを敷いたベッドに寝かせる。
僕は携帯電話を取り出して、本部に電話をかけた。
「あ、R772です。緊急連絡です。体験工作員が負傷を負いました。今、大岩ホテルにいるんで、直ちに、救護をお願いします」
悠を見ると、苦しそうな表情を浮かべたまま倒れている。
僕は水道の水を器に流し、悠の隣に座った。
タオルに水をしみこませ、傷口に当てる。
「う・・・」
「あ、ごめん・・・」
悠が小さく呻いた。
僕はできるだけ慎重に傷口をタオルで拭いた。
「おい、俺だ。W4498だ。R772、ドアを開けろ」
ドアの前から男の声がした。
W4498・・・は、わたるンだ!
僕はあわててドアを開けた。
ゴツ
外開きのドアを勢いよく開けてしまったため、わたるンこと、工作員救助部隊Aランクの大野渉に勢いよくドアがぶつかる。
「あ・・・ごめんなさい・・・」
「全く、お前は変わってないなぁ・・・」
「わたるンも変わってないジャン」
「いい加減、わたるンって呼ぶのはやめろ」
「いいじゃん、わたるン」
僕はそこまで言って、こんなことをしている場合ではなかったことを思い出した。
「そうだ!悠が・・・」
僕が言い終わらないうちに、わたるンが部屋に入る。
「これは・・・」
わたるンがあわてたように救助器具を取り出す。
「ねぇ、ヤバい?悠、死んだりしないよね?」
「うるさい」
僕はわたるンに一括され、静かにわたるンの隣に座った。
わたるンは、悠の傷口に麻酔を打ち、消毒用手袋をきちんとはめると、僕に向かってつぶやいた。
「一部の血管が切れている。今から、切れている血管をふさぎ、傷を縫う。わかったか?」
僕はただうなずくことしかできなかった。
わたるンを信じるしかない。
そう、だから、悠は絶対大丈夫。




