FILE32・敵の確信は、打ち砕くのみ
「・・・フ・・・フフフフ・・・」
不意に将捕が笑い出した。
「お、おい、将捕・・・どうしたんだ?」
「いいや、なんでもないさ、手乞」
支配人・・・手乞も怪訝な顔をしている。
将捕の笑い声はまだ続いている。
私は沈黙を守った。
「いくら私たちを倒しても、あの餓鬼は戻ってこないさ」
「どういうことよ・・・?」
私は静かに聞いた。
「どういうことだろうね」
将捕がクククっと笑った。
そこまで言われてはっとする。
あいつらを倒したら、錬の居場所が特定できない・・・。
「さて、われわれを倒すかな?」
「・・・」
言葉に詰まった。
こいつらを倒さないと、錬を助けられない。
でも、こいつらを倒しても、錬を助けられない。
どうすれば・・・。
「フフ・・・それでは、われわれは行こうか。どっちにしたって、あの貧弱スパイもそろそろ限界だろう。われわれがじかに手を下すことなんてないさ」
将捕がクククっと笑った。
じゃあ、錬は何か危険なところに・・・。
そして、思い出す。
錬は、こいつらと会話をしていたじゃないか。
つまり・・・
私はにやりと笑う。
「錬のこと、貧弱なんて言ったの、後悔させてやるよ」
「え・・・?」
手乞が一歩身を引く。
将捕も怪訝な顔をしていた。
「錬は、馬鹿で弱くてだめだめだけど、あんたの変装、見破ったんだからね」
私は一歩間合いをつめる。
「そっちがその気なら・・・」
将捕が顔に手を当てた。
べりべりと音を立てて、特殊名句と思しきマスクがはがれていく。
少林拳さんの顔の下から現れたのは、20代と思われる男の笑い顔だった。
「俺は、昔ちょっとなの知れた武道家だったんだ。ちょっとやそっとのことじゃやられない」
手乞が将捕の陰に隠れる。
私は体勢を低くとった。
「手加減はしないよ」
そういって将捕が高めに構える。
「してもらわなくても、結構よ!」
将捕が一気に間合いをつめてきた。
「さて、その言葉、後悔に変えてやろうか?」
「こっちの台詞ね」
足が高々と伸びてくる。
私は手を突き出した。




