FILE30・絶対助ける!
「ちっ・・・」
私があの部屋にたどり着いたとき、もう人影はなくなっていた。
当然、錬もいない。
私は携帯電話を耳に近づけた。
「一つだけ、聞きたいことがある」
少林拳さん・・・じゃない、将捕の声がする。
錬と将捕の間に壁のようなものがあるのか、すごく聞き取りにくい。
つまり、錬は、何か箱のようなものに入れられている・・・?
「何故、俺が偽者だと分かった。普通、仲間だと思っている奴の携帯を盗聴なんてするわけがない」
「・・・お前に、慎重さが足りなかったからだ」
「ほう」
「少林拳は、慎重な男だ。お前みたいな軽い行動、絶対にしない」
「そうか・・・ふむ、新たな変装の課題が見えてきたな。今度からは、そういうところにも気をつけるとしよう。最も、まさか君なんかにばれるわけがないと思っていたからな。今回は、あまり本気でかかっていなかった。
貧弱スパイもなめてかかってはいけない」
そういってクククっと笑う声がした。
その声にカチンと来る。
前までは、私も錬のことをだめな奴だと思っていた。
でも、今は違う。
将捕の変装を見破ったんだ。
それを、「貧弱」なんて、絶対二度といわせるものか。
私はそう心に誓った。
「だが、お前の命もこれまでだ」
「・・・僕も、一つだけ教えてほしい」
「何だね?」
「ここは、どこだ?」
「そんなことを聞いてどうなる?」
「別に・・・知りたいだけだ」
廊下を走っている途中、錬が指示通りの質問をした。
言い訳もきちんと出来ている。
「フフ・・・冥土の土産って訳か・・・良いだろう。ここは、倉庫だよ。一階の一番大きな倉庫だ」
「一階の・・・一番大きな倉庫・・・」
勝手に解釈した将捕の声と錬のつぶやき。
一階の一番大きな倉庫・・・
私は職員用の大きな倉庫を思い出す。
あそこだ!
私は一目散に走る。
「そう、ここが、貴様の墓場だ・・・」
将捕とは別の声・・・あの支配人だ。
前の電話で分かっていたが、あの支配人も将捕の・・・その奥の組織の仲間。
二人ということは、何事も行いやすくなる。
錬を殺しやすくもなるし、逃げやすくもなる。
私は走るスピードを上げた。
絶対助ける。
その言葉だけが、私を勢いづかせていた。




