FILE25・錬の確信
「ちょ・・・ちょっと錬?」
私はすたすたとファーストフード店を離れる錬に呼びかけた。
「何?」
「何でそんなに急いでんの・・・ゆっくりしてたって、ダイジョウブでしょ?」
「ゆっくりしてちゃだめなんだ!」
いつもの数十倍あわてて・・・あせっている様子の錬。
あの、のほほんとした雰囲気は全くない。
そして、デパミチの一番端にある、公衆電話街に出る。
最近は、携帯電話の普及でほとんど利用されていないところだ。
「錬・・・?」
錬は、受話器を持ち上げて百円玉を公衆電話に入れ、携帯番号と思われるところに電話をかける。
「・・・あ、もしもし?僕、錬だけどさぁ・・・うん、で、今どこにいんの?あ、本部?・・・当たり前だな、悪い悪い。いや、ちょっと、状況把握だよ。別に音を上げてるわけじゃないさ。うん。じゃあな、ばいばい」
30円くらいですんだんじゃないかと思われるぐらい短い会話を遂げると、錬は受話器を置いた。
「誰にかけてたの?自分で持ってる携帯でかければよかったじゃない」
「携帯じゃ、電波を把握されるんだ」
「は?」
「後で言うよ」
錬は、何かを確信したように歩き始める。
「ちょっと・・・」
私はその背中を追いかけた。
「何が分かったのよ?」
「今はいえない」
「はぁ?」
「それより、今は取引だろ?」
だだっこだった錬が、急に大人びた気がした。
「・・・」
「だから、その前に腹ごしらえだよ」
「は?」
「ドーナツ食べよう!」
そして、この瞬間、再びだだっこに戻る。
「はいはい」
私は渋々といった様子で自分の財布を取り出した。
でも・・・錬も、あんな表情するんだなぁ・・・
私は、さっきの大人びた錬を思い出して、なんだか不思議な気分だった。




