FILE24・緻密なものほど疑ってかかれ
「では、僕が立てた作戦を説明する」
ファーストフード店に入って、私たちは少林拳さんの話に耳を傾けた。
「隠れ場所だが、あの取っ手のすぐ近くにトイレがある。そこなら、十分隠れられるだろう」
私は脳内に見つめていた地図を蘇らせる。
確かに、すぐそばにトイレがあったはずだ。
でも、少林拳さん、よく憶えたな。
ちょっと地図見ただけなのに。
「まず三人で取引の現場に警察の格好をして現れる。背丈が少々低くても、十分ばれない」
「・・・」
「そして、不正行為と言い放ち、持ち物検査をし、麻薬があったところで、現場を押さえる。そこで、飛来君が狂人を装い、麻薬を持って逃走する。僕と錬は、わざと飛来君と麻薬の持ち主を取り逃がし、二人で逃走劇を繰りひろげさせる。飛来君は、でたらめに走ればいい。君のスピードと体力なら、お坊ちゃまぐらいいくらでも切り離せる。そして、相手をまいて、どこでも良いから隠れる。
その間に僕と錬は、本部に連絡し、現場を押さえる」
私はゆっくりうなずいた。
「もうすぐ午後6:00だ。9:30までに、本部と連携をとり、警察官の制服をまわしてもらう。それまで、ゆっくりしててくれて良いぞ」
その言葉を聞くと、即座に錬が立ち上がった。
「悠、行こう」
そんなに急いで、どうしたんだろう?
私は疑問に思ったが、錬について席を立つ。
後ろを振り返ると、少林拳さんが誰かに電話をかけている。
恐らく、本部だろう。
そして、私たちが座っていた店の一角の席には、少林拳さんだけが残った。
「あぁ、私だ。どうした?」
山沢は、突然の部下からの電話に落ち着いてかかった。
「例のスパイについて?パソコン部からの情報か?・・・あぁ、何か分かったか!・・・あぁ・・・」
部下からの、突然で、しかし、好都合な連絡を受け、山沢はうれしそうに笑う。
「そうか、では、そのままそこで計画Cの実行を頼む」
山沢はそういって携帯を切った。
弟抄もなかなか使えるじゃないか。
山沢が考えるようにあごに手を当てる。
計画Aはうまく行った。
Bは失敗したが、Cがうまくいけば、ダイジョウブだろう。
山沢は、続いてかかってきた作戦Dを実行している将捕の連絡に耳を傾けた。
「あぁ、将捕、どうだ?」
将捕と呼ばれた部下は、淡々と状況を正確に説明した。
「そうか、で、うまくはいくか?・・・ふん、70%・・・その少女が危ないと?身体能力と観察力?だが、もう一人の餓鬼ほうは本部と確実な連携が取れているだろう?そっちのほうが・・・あぁ・・・何、頭が悪い?それでスパイか?・・・あぁ・・・」
山沢は少し表情を曇らせたが、にたっと笑って告げた。
「良いさ、大丈夫だ。では」
電話を切ると、山沢は馴玄の元へ戻った。
「処分は順調です」
「そうか!」
馴玄は心底うれしそうに言った。
「えぇ」
山沢は、一つ一つ言葉を選ぶ。
失言は、絶対あってはいけない。
「では」
山沢は、馴玄からの指示がないのを確認すると、部屋を出た。
冷静沈着な顔の仮面がぼろぼろとはがれた。
その下から現れた顔は、鬼面。
ひどくゆがんだ口元が、ゆっくりと動いた。
「もうすぐ・・・」




