FILE22・黒の陰謀と重役決定
「山沢」
馴玄は短く山沢を呼んだ。
「はい」
「団体Aが転がり込んできた」
「予測どおりですね」
「あぁ、処分実行だ」
「了解です」
山沢はすばやく動き、馴玄の前から姿を消した。
廊下に出た山沢は携帯電話を耳に近づける。
「・・・あぁ、私だ。皇成だ。団体Aの件だが・・・」
山沢はそこまで言って、いったん言葉を切った。
「上は処分といっているが、利用価値がある。計画の人員に使え。あぁ、少々の事はやってもいい。どうせ、処分される身だ。使ったほうが良いだろう」
山沢の口元が醜くゆがむ。
「そうさ、もうすぐ。もうすぐ、全てが終わるんだ」
そういって山沢は携帯を切った。
もうすぐだ・・・もうすぐ、全部終わる。
「少林拳。疲れた」
錬がまた泣き言を言い始める。
「僕の名は小林だが・・・ちょっとぐらい我慢しろ」
少林拳さんは錬を見てまた歩き始めた。
さっきから、デパミチの中をぐるぐると回っている。
一階へ降りて、また5階へ。その繰り返し。
私は全く平気なのだが、錬がふらふらとお菓子のコーナーに行こうとする。
そんな錬の口の中に私は十円ガムを押し込んだ。
満足げにかみ始める錬。
本当に、餓鬼だ。
「・・・」
少林拳さんが、ちらりと私のほうを見る。
そして、不意に立ち止まった。
「思ったとおりか」
「・・・?」
私と錬は少林拳さんの言葉に顔を見合わせた。
「君は、握力に加えて体力も相当なものだな」
私の頭には、まだ「?」がたくさん浮かんでいる。
「君は気づいていないかもしれないが、今相当な距離を歩いている。訓練の受けていない人間ならもうくたばっている」
そうか、だから、錬がいつもに増してふらふらなのか。
私の頭の「?」が一つ減った。
「それに、あの小さな取っ手を見つける観察力、変な奴らからの回避の方法、変装能力もある」
ちらりととなりを見ると、錬は黙って少林拳さんの話を聞いている。
「今回、重要な作戦は必然的に錬がすべきだと思っていたが、こうも実力の差を見せ付けられるとな・・・今回の作戦の重役を、飛来君に任せよう」
少林拳さんが苦笑混じりにそういった。
「え」
私と錬は同時に叫ぶ。
と同時に、別の客の視線がいっぺんに私たちに向いた。
いそいそと場所を移動しながら、私たちは少林拳さんの周りに群がる。
「どういうことですか?!」
「悠は体験工作員だよ?!」
私たちは口々に言う。
「体力も、対処能力も、錬より飛来君のほうが格段に上だ。本部の訓練を受ければ、階級5は確実だろう。そんな金の卵と階級一。どっちに重役を任せると思う?」
私はほめられてうれしかったのだが、少林拳さんの氷のような言葉は錬に容赦なく突き刺さっていく。
「・・・はい」
錬は苦しそうにうなずいた。




