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SPY・KIDS  作者: 奏良
23/44

FILE22・黒の陰謀と重役決定

「山沢」

馴玄は短く山沢を呼んだ。

「はい」

「団体Aが転がり込んできた」

「予測どおりですね」

「あぁ、処分実行だ」

「了解です」

山沢はすばやく動き、馴玄の前から姿を消した。

廊下に出た山沢は携帯電話を耳に近づける。

「・・・あぁ、私だ。皇成(おうな)だ。団体Aの件だが・・・」

山沢はそこまで言って、いったん言葉を切った。

「上は処分といっているが、利用価値がある。計画の人員に使え。あぁ、少々の事はやってもいい。どうせ、処分される身だ。使ったほうが良いだろう」

山沢の口元が醜くゆがむ。

「そうさ、もうすぐ。もうすぐ、全てが終わるんだ」

そういって山沢は携帯を切った。


もうすぐだ・・・もうすぐ、全部終わる。



「少林拳。疲れた」

錬がまた泣き言を言い始める。

「僕の名は小林だが・・・ちょっとぐらい我慢しろ」

少林拳さんは錬を見てまた歩き始めた。

さっきから、デパミチの中をぐるぐると回っている。

一階へ降りて、また5階へ。その繰り返し。

私は全く平気なのだが、錬がふらふらとお菓子のコーナーに行こうとする。

そんな錬の口の中に私は十円ガムを押し込んだ。

満足げにかみ始める錬。

本当に、餓鬼だ。

「・・・」

少林拳さんが、ちらりと私のほうを見る。

そして、不意に立ち止まった。

「思ったとおりか」

「・・・?」

私と錬は少林拳さんの言葉に顔を見合わせた。

「君は、握力に加えて体力も相当なものだな」

私の頭には、まだ「?」がたくさん浮かんでいる。

「君は気づいていないかもしれないが、今相当な距離を歩いている。訓練の受けていない人間ならもうくたばっている」

そうか、だから、錬がいつもに増してふらふらなのか。

私の頭の「?」が一つ減った。

「それに、あの小さな取っ手を見つける観察力、変な奴らからの回避の方法、変装能力もある」

ちらりととなりを見ると、錬は黙って少林拳さんの話を聞いている。

「今回、重要な作戦は必然的に錬がすべきだと思っていたが、こうも実力の差を見せ付けられるとな・・・今回の作戦の重役を、飛来君に任せよう」

少林拳さんが苦笑混じりにそういった。

「え」

私と錬は同時に叫ぶ。

と同時に、別の客の視線がいっぺんに私たちに向いた。

いそいそと場所を移動しながら、私たちは少林拳さんの周りに群がる。

「どういうことですか?!」

「悠は体験工作員だよ?!」

私たちは口々に言う。

「体力も、対処能力も、錬より飛来君のほうが格段に上だ。本部の訓練を受ければ、階級5は確実だろう。そんな金の卵と階級一。どっちに重役を任せると思う?」

私はほめられてうれしかったのだが、少林拳さんの氷のような言葉は錬に容赦なく突き刺さっていく。

「・・・はい」

錬は苦しそうにうなずいた。

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