FILE21・自覚なし
「で、少林拳はどんな感じに引き止めるわけ?」
「とりあえず、取引場所を把握しなくちゃな」
その台詞に、私はさっきの地図をあわてて広げた。
「さっき、何か、すっごい狭い壁のところに取っ手みたいなのついてて・・・」
私はさっき見つけた壁の隙間のとっての話をして、少林拳さんの反応をうかがった。
「ふむ・・・」
少林拳さんは、何か真剣に考えると、私のほうを見た。
「そこが、もし本当に取っ手ならば、そこが怪しいな」
「ふーん・・・」
取っ手を全く見ていなかった錬がさっき買ったフーセンガムを膨らませる。
「そこまで、案内してもらおうか?」
私はうなずき、錬の腕をとって少林拳さんと歩き出した。
「・・・」
少林拳さんが取っての近くによって眼を凝らす。
そして、錬が持っていたのと同じ手帳から、なにやら小さな懐中電灯のようなものをあてていた。
「・・・指紋があるな」
どうやら、指紋を調べる為の特別な光だったようで、私は一人納得しうなずいた。
「ってことは・・・」
「あぁ、ここで行われている可能性が高いだろう」
全く目立たない小さな突起物。
そこに、わざわざ触ったりするだろうか?
店員の為の部屋ならば、こんなコーナーとコーナーの間になんてつくりはしないだろう。
つまり・・・ここで、誰かが入ることを必要としている。
取引が行われている可能性が非常に高いということだ。
「でも、いつ取引してんのかわかんないじゃん」
錬がフーセンを膨らませる。ついでに、ほっぺも膨らませる。
完全にすねている。
「ほら錬、そんなこと言ってないでよ、そこを調べるのがプロなんじゃなかったの?」
「むー」
むーって・・・あんた何歳よ・・・
そういいたくなる気持ちを抑えて、私は錬の手首を軽く握った。
「で・しょ?」
「は・・・ははははははい!」
声が裏返ってる。
そんなに痛かったのだろうか?
私はぱっと手首を離した。
「ひたたた・・・」
錬が手首を押さえている。
その光景を、少林拳さんがぽかんと見ていた。
「君、そんなに握力強いのか・・・?」
「え?」
「いや、錬も、階級一つといえど、一応は工作員だ。それなりの訓練はしている。
少々手首を握られた程度で、あそこまで行動を抑えられるなんて・・・」
「・・・?」
私にしてみれば、錬はただのよわっちぃ役立たずでしかなかったのだが、
まぁ、言われて見れば、錬も秘密工作員。それなりの訓練は受けているのだろう。
それが、ちょっと手首を握っただけで悲鳴を上げる。
私は自分の手を見た。
「だから、悠は最強なんだって」
「最強は言いすぎじゃない?」
「・・・」
少林拳さんはまた何か考え始める。
「ねぇ、おなか減った」
「早い」
「いつまでこの格好させるつもり?」
「この仕事が終わるまで永遠に」
「え〜」
「当然。さっきみたく、いつ正体ばれるかわかんないんだからね」
「は〜い」
その間、私たちはたわいもない会話をべらべらと続けていた。




