FILE19・取引はどこで?
もし、このデパートでどこにでもいるようなカップルを見かけたというのならば、10分の1以下の確立であれ、私たちである可能性もある。
軽くメイクを入れた錬を連れて、私たちはデパート内をぐるぐると回っていた。
私はというと、そのままの格好でも十分男に見えるので、長い髪の毛を隠すだけですんだ。
性別を入れ替えておけば、やくざたちにも狙われにくい。
遠巻きに見れば、カップルに見えないこともないだろう。
私たちはその格好のまま店内を物色している。
職員しか入れない場所などの確認をしているのだ。
錬には自動販売機で購入したカフェオレを持たせて落ち着かせているが、何分持つやら・・・
職員しか入れない場所等を、細かく暗記していく。
店内の一番大きな地図だけを持ち、暗記で追いつかない分も含めて記入。
「カフェオレなくなった」
錬のつぶやきが聞こえるが、断固無視。
どこで取引が行われるのか、全くわからない。
どの場所も、確認のし忘れがあってはいけない。
私の命もかかってるんだから・・・。
「何ここ?」
帽子のつばをつかんで、まじまじと見つめる。
そこには、細い隙間があり、取っ手のような部分が飛び出ている。
誰も、気にとめることなくそばを通り過ぎていく。
私も、慎重に確認していなかったら、確実に見落としていた。
まず、普通の買い物客なら、誰も気になんてとめやしない。
それほど細い隙間に、小さな凹凸が出来ていた。
私は今時分がいる場所を地図で確認すると、赤ペンで大きく印を入れた。
ここ、怪しいな。
直感でそう感じていた。
「カルピスが飲みたい」
錬の呟き声は、断固無視に限る。




