FILE17・だだっこ
「本当に広いんだね。一日で回りきれないや」
錬が感心した口調で言っている。
「でも・・・こんなに広くて、どうやって密売してる場所見つけるの?」
「あ・・・」
頭が痛い。
錬は、何も考えていなかったらしく、はっとした表情で私を見ている。
「・・・目星をつけておく必要があるね」
錬は黙ってうなずいた。
「ここが・・・現在地だっけ?」
「そこは南館でしょ?」
私たちはたくさんあった店内の地図をさっきとはまた違うカフェで眺めている。
細かいものから大まかなものまで、様々な種類があり、私たちは蛍光ペンを使いながら道筋を描いている。
「でも、密売とかってさぁ、普通事務的な部屋でするものじゃないの?」
私がたずねると、錬は右手をひらひらと振っていた。
「ここまで大きなところでやるんだから、たくさんのものをいっぺんにやってるだよ、きっと」
「・・・」
当てにならないな。
私はそう判断し、蛍光ペンを筆箱にしまった。
「あれ?何でしまっちゃうの?」
「これじゃ、らちが明かない、行くよ」
私はそういってたくさんの地図をゴミ箱に入れた。
そして、躊躇している錬を引っ張って、カフェを出た。
「こんなところでなにすんのさぁ・・・」
錬は私が腕をひっぱて行くのが気に食わないらしく、頑張って手を振り払おうとしているが、私はさらに力を入れて離さなかった(錬の腕の骨が軋んでいたのは気にしない)。
絶対、この手を離したら、錬は迷子になる。
私はそう確信していた。
不思議な感じだ。
歳は同じで、背丈は私より少し高いのに、錬がすごく幼く感じる。
「・・・なに笑ってんの?」
私は知らない間に笑っていたらしく、錬がふくれっつらで尋ねてきた。
「ううん、なんでもない」
私はそういうと、目的地に向かって歩き続けた。
「おなか減ったー、休憩」
錬の手を引いて。




