FILE16・不審者には気をつけましょう
それから私たちはいろいろな話をした。
学校や空手、ボクシングのことを話したり、孤児院や国際国家機密工作所の話を聞いたりした。でも、家族の死の事は言う気になれなかったので、病死ということにしておいた。
「へぇ、学校ってそんなところなんだね」
「え、錬学校行ってないの?」
「孤児院にいたから、そういうの行く必要なかったんだよ」
「へぇ・・・」
そんなたわいもない話が続き、私たち二人は仕事をしに来ているという事をすっかり忘れていた。
「お前、さっきのスパイだな?」
不意に声をかけられた。
振り向くと、さっき蹴散らしたギャングの中の逃げていった2、3人の男たちがいる。
「スパイ?何の話ですか?」
錬が目を白黒させながら言った。
「黒渕めがねの奴だろうか!そんで、こっちは俺たちをバカにしてくれた小娘だな」
弱い輩に「小娘」と呼ばれたのが癪に障ったが、調子を合わせて黙っておいた。
「大体、僕らただの中学生ですよ。お宅の密売とは何の関係も・・・」
錬がそこまでいって、口をつぐんだ。
・・・思い出した。錬は嘘がすごく下手だった。
「はっはぁ、自爆だ!」
そういって、男たちが周りの客に見えないようにナイフを出す。
全く、さっきのことでちょっとは賢くなったかと思ったら、これだ。
私はため息をついて、一番近くにいた男のナイフを指ではじいた。
ピン、と、軽い音がして、ナイフの歯が折れる。
「・・・」
私は男たちをにらんだ。
「は・・・はは、こうじゃないとやりがいがないもんな、手加減も大事だな」
・・・。
いちいち戦うのが面倒になった私は、大声で叫んだ。
「きゃー!不審者だわー!」
その声に、にぎわっていたカフェスタンドは静まり返る。
「助けてー!」
もう一声言うと、店にいた人全員が、叫び声の原因の私と、そのとなりでおびえた顔の錬と、その周りに立っている男を見た。
そして次の瞬間には、カフェスタンドの店員が警察を呼び出し、男たちの捕獲にかかった。
男たちはナイフをかざそうとするが、どさくさにまぎれて全部歯を折っておいたので、役に立たない。
あっという間に取り押さえられ、一件落着した。
そして「ダイジョウブですか?」と声をかけてくる店員にお礼を言うと、錬の手をとって店を出た。
「・・・すごい技術だね」
「昔“面倒なことの対処法”って本で読んだの」
私はそういって唖然としている錬に笑って見せた。




