FILE11・名を名乗れ
私は無言でうなずいた。
「よし、じゃあ、頑張ろうね」
気楽そうな椎名錬って人の声を聞くと、ものすごくいらいらする。
「僕のことは錬って呼んでくれていいからね〜、あ、君の名前聞いてなかったなぁ」
イライラが募る。
「僕ら、これから一緒に機密作業行うんだから、お互いの名前知らないのはまずいかな?」
私は近づいてきた椎名錬って人を反射的に殴った。
「わぎゃー!」
椎名錬って人は奇声を上げて後ろに倒れこんだ。
あ・・・。
私は自分の目から殺気を消した。
本当に思わずだったのだが、つい反射的に・・・。
「・・・」
椎名錬って人はウルウルとした目でこっちをみる。
・・・ホントにこいつ秘密工作員か?
私は目の前にいる弱っちい生き物を見下ろしていった。
「ごめんごめん、そんなに痛かったわけ?」
私の言葉に椎名錬って人がものすごい勢いでうなずいている。
・・・信じられない。
私は秘密工作員というのだから、特殊な訓練を帯びた最強の少年だと思っていた。
前々から弱いと思っていたが、病み上がりのせいで力が出ないのだと思っていた。
何なんだ、こいつは・・・
私ははぁ、とため息をついた。
こいつとチームを組むということは、ひとりで戦うより数倍難しい。
弱い奴を守りながら敵に向かうというのは、実に大変なことなのだ。
私はもう一度ため息をついた。
「で、君はなんて名前なの?」
痛みも治まったらしい椎名錬って人が立ち上がり際に聞いてきた。
「飛来悠」
私はそれだけ言うともう一度ため息をついた。
「そっか、悠、ね。あのさぁ、悠、そんなにため息ばっかりついてると幸せが逃げるんだよ?」
勝手に人の名前を呼び捨てにして椎名錬って人は言った。
・・・私の幸せは、お前に出会ったときから尽きてるんだよ。
そう思いながらも、私の脳裏に浮かんできたのは家族の姿だった。
はぁ・・・
口から自然と漏れていたのはやはりため息だった。




