19話:古代竜と悪魔
またも前回の投稿から一週間遅れてしまい申し訳ありません…m(_ _)m
今回はリミア視点のお話で、ストーリー進行回なので戦闘シーンはありません。
古代竜の長々とした話が続くので、面白い回では無いと思います……。
〜人間界(リミアside)〜
魔王様の死後、人間として転生した魔王様の後を追い、死神の助力を得て人間界へと転移した私は、「魔力感知」で魔王様の居場所を探しつつ、高速飛行による移動を行っている。
探す…とは言え、現在の魔王様は人間界最大級の王国こと「セインガルド王国」に入国している事は分かっていた。
しかし、死神が私を転移させた場所は何故かセインガルド王国内では無く、何処かも判らない草原の真っ只中だ。
考えてもみれば、人間界の地理に全く以て詳しくない私がこの草原から一つの王国を普通に探すというのは非常に困難な事であり…セインガルド王国へと辿り着くには、魔王様の魔力を感知し、その方角へと飛行する事が最善手だった。
「はぁ…何だか魔王様にも死神さんにも、苦労を掛けられている様な気がしますね……」
空を高速で飛行しつつ、ため息と共に独り言で2人に対する文句を言う。
しかし、あの時に私が魔王様を止めることが出来ていれば今頃は普段通りの日常を過ごしていただろう。
私自身にも非がある以上は、2人に対する文句を面と向かって直接言う事は出来ない。
「…いや、それよりも今は魔王様を探さなければいけませんね」
魔王様の魔力は強大で、私の「魔力感知」なら魔界の端から端までの距離でも簡単にその魔力を感知出来る。
現に今、普通の人間では有り得ない程の魔力を遥か遠くに感じている。
あれは恐らく魔王様のものだろう…と考えながら私は飛行を続けていた。
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飛行すること約1時間で、「魔力感知」で感知した強大な魔力の元へと辿り着いた。
しかし…
「…どう見ても、これは王国どころか、森の奥深くにある洞窟ですよね…?」
私が降り立った地は、王国はおろか村ですらない…
それどころか、人間の気配すらしない広大な森の奥深くに存在する洞窟だった。
「でも、魔王様だっていつまでも王国に鳴りを潜めているとは限りませんし、もしかすると何かの用があってこの洞窟に入っているのかも知れませんね…。」
入るべきか否か、私は洞窟の入り口の前で少しの間頭を悩ませる。
「…どの道、ここ以外に魔王様の居場所の当てはありませんし、入ってみましょう。
恐らく、大体の魔族生命体には襲われても対処出来ると思いますし…」
洞窟の中に入る事を決めた私は、灯りのない暗い洞窟の中へと足を踏み入れた。
入り口付近の洞窟内は長く細い下り坂の一本道となっており、天井も人間が普通に立って頭スレスレで歩けるぐらいに低かった。
「こんな所に、本当に魔王様がおられるのでしょうか…?」
若干心配になりながらも、私はその歩みを止めることはしない。
どの道、今は「魔力感知」に反応するこの強大な魔力のみが、魔王様の居場所の唯一の手掛かりだから。
坂を下るほどに光が弱くなっていき、次第に辺りが何も見えない程に真っ暗になってしまった。
「暗いですね…魔法で少し明かりを確保しましょう」
私は炎属性の魔法である「小火球」を、胸の前で開いた左手の上に生成して辺りを照らす。
すると、この下り坂をあと数メートル下った先にこの細い道の出口となる穴があり、その穴の向こうには広い部屋の様な空間が見えた。
「あの空間は何でしょうか…?
はっ!もしかして、訳あってセインガルド王国からこの洞窟に移り住んでいるとか…?」
私は全く根拠の無い予想に期待して、一刻も早く魔王様に会いたい衝動に駆られ、穴の向こうに見える空間へと走り出した。
「魔王様!只今リミアが参りまし…」
しかし、威勢よくその部屋に入って叫ぶ私の目に映りこんだ人物は、魔王様では無かった。
いや…正確には人間ですらなく、だだっ広い空間の中に居たのは、ただ静かに佇んで睨むように私を見ている、緑色の鱗を持つ巨大な一匹の竜だった。
何故この様な所に竜が…?
人間とは掛け離れた見た目で体長100メートル程はあるだろうその巨大な体格を誇る生物を前に、私は唖然としていた。
そして、顔面蒼白のまま固まっていた私にその竜が話しかけてきた。
「…我に何用だ?小娘一人がこのような場所に来るなど珍しいな。」
竜に話しかけられたことで、私ははっと我に返る。
そうだ…魔王様は人間に転生なさったのだ。
転生体でこのような強大な魔力を持っている筈がない。
ただ強大な魔力を探した所で、それが魔王様のものである訳が無いじゃないか。
「嗚呼…私は何という愚か者なのでしょう」
「…おい小娘、聞いておるのか?」
話を完全無視して頭を抱え自らを戒めている私に、少々怒った様子で竜が話しかける。
「…あ、はい、何でしょうか……?」
私は落胆しながらも笑顔を作り返答する。
しかし今の表情は恐らく、笑顔というよりも苦笑いに近いだろう。
「ふん、勝手に訪問して私の話を無視とはいい度胸ではないか。
小娘一人で我の元に来るとは、只事では無いだろう?
貴様は何の用で此処に来た?」
「え〜っと、えへへ、道に迷っちゃって、間違えて此処に来ちゃいました!
お邪魔みたいなので、私はこれで失礼させて頂きます!」
てへっ、というジェスチャー付きで返答し、この部屋に入ってきた細い道へと戻ろうとする。
「おい待て小娘!
勝手に我が領域に入り込んでおいて易々と帰す訳がなかろう!」
しかし竜の怒号に引き止められる。
放っておくと更に面倒事になりそうなので、これ以上無視するのは止めることにした。
「す、すみませ〜ん。
私は何をすれば許して頂けるのでしょうか…?」
「そうだな…貴様には少しの間、我の話し相手になって貰おう。
ここ数百年間、この洞窟内には森の魔物共しか訪れなかったからな。
話し相手になるのはエルフの民ぐらいのものだったな。
我は今、久々に人間との会話を楽しみたいのだ。」
やれやれ、といった呆れた雰囲気で竜が言う。
私の謝り方が適当っぽいのは気にしていない様だ。
(それにしても、竜さんと会話…ですか。
あまり時間をかける訳にはいきませんし、極力手短に済ませるとしましょう)
「良いですよ。
でも、私は別の用事がありますので出来るだけ手短にお願いしますね…?」
笑顔で竜に返答する。
「案外話の分かる小娘だな。
初めて出会う者の大抵は、我の姿に驚いて会話にもならぬのだが…」
まともに会話の成立する生物に出会えた事が嬉しいのか、竜はご機嫌な様子で語り始めた。
「そうだな…まずは我の事から話そう。
我はエルフの間で古代竜と呼ばれる、この世界に存在している中でも最古の竜だ。
さて、貴様も疑問に思った事であろうが…我が何故この洞窟でなりを潜めておるのかについて話してやろう」
あれ…?その話の内容的に長話になりそうじゃないですかね…?
と、私は直感的に察知した。
魔王様が時々なされる長話の切り出し方と似ていたからだ。
「思い起こすこと、あれは数百年前の話…我が古代竜と呼ばれる前の話だな。
因みに我の年齢は約10万年だ。
まぁ寿命の短い人間には想像もつかまい。」
人間界では私より年下の生物が「古代」なんて呼ばれるんですか…。
私の実年齢を、人間界の全種族が知ったら私を何と呼ぶのでしょうか…?
……考えると恐ろしいですね、実年齢は絶対に言わないようにしましょう。
それにしても…やっぱりこれは長話ですね…。
長年生きていらっしゃる方の昔話は非常に長い、と相場が決まっていますからね…。
しかし、今更になって踵を返せる雰囲気でも無さそうなので、私はしぶしぶ竜の長話を、相槌を打ちながら聞くことにした。
「我は長きに渡り、破壊と蹂躙を繰り返す厄災として世界にはばかっていた…。
我は生まれながらにして他の種族には無い強大な力を持っていた。
その頃は、他の者の追随を許さぬ程に己の力を信じておったよ。
しかしある日、その自信がただの過信であったと思い知らされる出来事が起こったのだ」
竜は遠い目で昔の記憶を思い出しながら語っている。
自らが持つ強大な力を過信し、その力を間違った使い道で使ってしまう……。
人間界の生物も魔族生命体も、その運命だけは変わらないのでしょうか。
「ある日、我の元に『勇者』を名乗る一人の人間が現れたのだ。
その者は軍はおろか、誰一人として仲間を連れておらず、たった一人で我に立ち向かった。
愚かだ、と我は思ったよ。
今まで自らの力を誇示する為に、たった一体で我に挑んで散った者の数は数え切れんかったからな。
しかし…我は敗北した。
たった一人の人間に、我は敗れたのだ」
人間が竜を倒した…!?
一匹の竜ですら、如何なる大軍を以てしても討伐は不可能とされると言うのに…。
私は古代竜の言う、『勇者』という存在に惹かれていた。
もしもその話が本当の事なのであれば、間違いなく『勇者』という者はこの人間界において最強の存在という事になるのだから。
更に人間となった魔王様が、もしも「勇者」という存在になれたのなら……古代竜の話に出てきた「勇者」よりも遥かに強い力を持っている筈。
その時は、魔界に生まれた邪悪な存在…新たなる魔王を倒す事も出来るかもしれない。
しかし、その「勇者」というのはどういった人がなれるのだろう?
もしも筋骨隆々の大柄な男性で、刃を通さぬ鋼の肉体と、逆境にも挫けぬ鋼の意思を持つ屈強な戦士だったら…残念ながら今の魔王様の人物像とはかなり掛け離れていると言える。
「その『勇者』…というのは、どのような外見の方なのでしょうか?」
恐る恐る聞いてみた。
願わくば、今の魔王様と人物像の似た人であって欲しい。
「勇者の姿…か。
我がそれを忘れる筈は無い。
奴は…人間の中ではかなりの美貌を誇る細身の黒髪黒眼の女で、身長もさほど高くない上にあまり筋肉もついておらんかった。
例えるなら、丁度お前ほどの体格だったな。
そんな人間に、私は生まれて初めて敗北したのだ」
え?細身の女性…?
予想外どころの話じゃ無いのですが!?
細身とは言え、私は悪魔なので人並み外れた力を持っていますが、人間の女性で私と同じ体格の方がそれ程強いだなんて…。
「そ、それは意外ですね…。
でも何故、女性の人間にそれ程の力があるのでしょうか?」
「奴は動きが素早く、剣の腕も超一流だった。
我の爪や咆哮を悉く躱して懐に潜り込み、我に致命傷を与えたのだ。
如何なる刃も通さぬ竜の鱗を切られるなど、初めての事だったな。
しかし、戦った舞台は自然の魔力が大量に漂っている大森林の中…。
我はその魔力を集め、自然治癒力を高めて何とか一命を取り留めたのだ」
竜は感慨深い様子で話していたが、正直言って後半の話はあまり私の耳に入って来なかった。
何故なら、話の前半部分が私にとって重要な話であったからだ。
素早い動きで相手を翻弄し、一流の剣筋であらゆる物を切り裂く。
魔王様の戦い方と全く以て同じであった。
つまり…今の魔王様には「勇者」になれる可能性がある。
否、この世で最も竜の語る勇者に近い存在が魔王様なのかもしれない。
竜の話は、今の私にとっての希望の光となった。
この竜に巡り会えたのは偶然か、それとも運命だろうか。
どちらにせよ、この竜に巡り会えた奇跡には感謝しなければ。
「…その『勇者』さんについて、もっと詳しくお話を伺っても宜しいでしょうか?」
「この様な昔話に興味を持つとは中々に珍しい趣向の持ち主だな。
良かろう…どの道、まだこの話には続きがあるからな」
そうして竜は嬉々とした様子で勇者についての昔話を続けた。
そして私は、長々と話される竜の昔話を、いつの間にか時間も忘れて興味津々に聞いていたのだった。
しかし私は後々に激しく後悔する事になるのであった。
何故なら…竜の話が終わって時間の事を思い出したその時、既に数日の時が流れていたからである。
前回の死神の台詞に続き、古代竜の台詞からも主人公クロトの勇者化フラグがようやく経ちましたね…。
タイトル回収まではまだ少し長引きそうです。
次回で番外編を書いてからクロト視点のお話を書こうと思っています。
では番外編は誰視点になるのか…?
少し予想外の人物だと思います(笑)




