14話︰入団試験(実技試験編その2)
長い間失踪してしまい申し訳ありません。
テスト期間や資格勉強等が連続で入り、小説の執筆を後回しにしていたら手をつける機会を逃し続けてしまいました…。
次話からは、定期的に執筆する癖をつけて一週間に1話ペースを守れるように善処しようと思います。
〜人間界〜
実技試験の受験者全員が一試合を終え、二試合目からの試合は一試合目で勝ち越した者同士の激しい戦いとなった。
攻撃系スキルによる猛攻や仕掛け先手必勝を狙う者、防御系スキルで耐久しつつ、相手の体力の消耗を伺い自分に有利な状況を作り出す者等、選手によって戦闘スタイルは様々で、第一試合よりも会場の盛り上がりもより一層激しくなった。
特に先手必勝派の選手と耐久派の選手との対戦では、前者の選手の攻撃系スキルを後者の選手の防御系スキルが受け止める際に生じる派手な衝撃や火花等によって、激闘の上に派手さも加わり、その度に会場全体に観戦者達の歓声が響いた。
そのような空気の中、選手同士の戦いを一切の盛り上がりも無く眺めている者がいた。
ーーーまぁ、俺とフィリアの事だが。
「やっぱり、どの選手も大したこと無いわね。
これならまだ私が一試合目に対戦した選手の方が余程マシだったわ。」
一試合目にフィリアと対戦した選手…グリル選手の事か。
確かに、現在行われている試合の出場者と比べるとグリル選手の方が強者だった。
まだ若き少女であるフィリアに敗れてしまったので、観戦者には大した選手では無い印象が付けられてしまったが…その実力を見極められる者からすれば警戒に値する選手だっただろう。
仮に第一試合からフィリアに当たっていなければ、今も勝ち残っていただろう。
まぁフィリア以外とは言え、俺と当たっても俺が勝っていただろうが…。
逆に言えば、二回目以降の試合でグリル選手以上に苦戦しそうな相手はいないという事だ。
どうやら、宣言通りに最終戦は俺とフィリアの対戦になりそうだ。
......................................................
それから俺とフィリアは数試合の対戦を勝ち上がり、遂に最終戦を迎えた。
俺とフィリアは試合の舞台に立ち、試合の開始を待っていた。
予想通り、ここまでにグリル選手以上の実力を持つ者はおらず、大した苦戦もせずに勝ち上がる事ができた…と言うより、ほぼ全て余裕勝ちであった。
しかし、最終戦までにフィリアと当たらなくて良かった。
最終戦がそこら辺の弱者との対戦になるなどつまらないからな。
「いよいよ貴方との対戦ね。
まさか本当に最終戦まで勝ち残って来るとは思わなかったけど…貴方の他の選手との対戦を観戦したら、意外過ぎるぐらい強くて驚いたわ。
まぁそれでも当然私が負けるつもりは無いけど。」
舞台の向かいに立っているフィリアが俺に話しかけた。
まぁ俺の試合を見て、少しは俺の実力がフィリアに伝わったのは何よりだ。
しかしそれでも勝つ気でいるフィリアも大したものだ。
……まだ殆ど本気を出していない事は気づいていないようだが。
「まぁ、そっちも最終戦まで来れたのは賞賛しよう。だが生憎、この試合も俺は本気で勝たせて貰うぞ。
だから、そっちも本気でかかって来い。」
「貴方も相当な自信ね。
でも、貴方も本気を出さなければ少なくとも私に剣は届かないわよ?
私も本気で負かせてあげるわ。」
フィリアがそう言って笑みを浮かべ、勝利宣言をする。
しかし今、本気を出していいという許可が出たよな?
……なら少しだけ本気を出しても後で責められる事は無いだろう。
「只今から、入団試験の最終戦を始める!
両者、開始位置に着け!!」
騎士団長の支持で、俺とフィリアは移動し、数十メートルの距離を置いた。
フィリアは二本の剣を抜き、試合開始の合図と共に直ぐに動ける様に構えている。
俺も片方の剣を構え、直ぐに動ける体制を取る。
会場は、俺達の試合を待ちわびている観戦者の声で騒がしい。
「それでは、最終戦……開始!!」
騎士団長の大きな合図で、最終戦が始まる。
「まずはこっちから攻めさせて貰うわ!」
その合図と同時に、フィリアが「身体強化」で距離を詰めてくる。
そのままの勢いでフィリアが攻撃を仕掛けてくるが、俺はそれに反応して剣でフィリアの攻撃を防御した。
その瞬間、金属同士がぶつかり合う音と共に俺の腕に大きな力が加わるのを感じた。
フィリアの体格からは想像できない程の力で、寧ろ他の屈強な体格の受験者の一振りを受け止めた様な感覚だった。
「身体強化」によってフィリアの筋力が一時的に増大しているのだろう。
フィリアの移動速度に加えてこの力…どうやら俺が想像していたよりもフィリアの実力は確かなものだ。
それでも当然、俺が勝てない相手だという訳では決して無いのだが。
「やっぱり、ただ正面から切りかかるだけじゃ当たらないわね。
ならいつも通り手数で攻めに行くわ!」
攻撃を受け止められたフィリアが、更なる猛攻を仕掛ける。
2本の剣によって繰り出されるフィリアの攻撃は、素人には目にも止まらぬ絶速と言える圧倒的手数の猛攻に見えるだろう。
剣同士がぶつかる事による火花と金属音が先程よりも大きくなっている。
これに対応出来ていたグリル選手は、やはり余程の実力を持つ選手だったと改めて感じる。
俺もその速度に対応し防御を続けているが、フィリアの攻撃の手は止まらない。
「この手数でも対応するなんて、中々やるわね。」
俺に攻撃を仕掛けつつ、フィリアが話しかける。
「フッ、確かにかなりの速度だが…俺に当てるにはまだ遅いな。」
「へぇ…随分と余裕そうね、だったら全力を出してやるわ。
必殺『双剣乱舞』!!」
余裕を見せる俺に、フィリアが先程よりも更に早い攻撃を繰り出す。
攻撃の感覚が徐々に短くなり、やがて刹那の間に数発の斬撃が襲いかかる様な早さにまで達した。
これが龍精眼で見たスキル「双剣乱舞」か。
俺はフィリアが今までこのスキルを使用しなかったのは、騎士団長を含む審査員が最も注目するであろうこの最終戦で披露する為のフィリアの拘りなのだろうと思った。
何しろ、あれ程苦戦したグリル選手相手に使用せず、わざわざ「身体強化」のみで戦い抜いたからな。
俺がそう考えている間にも、フィリアは攻撃の手を止めること無く、俺に一太刀でも喰らわせようと攻撃を重ねている。
まぁ幾ら高速で無数の攻撃を繰り出した所で、俺に人間一人の刃が当たる事は無い。
少なくとも、魔狼族12匹の爪が1つも当たらなかっただけの自身はあるからだ。
幾らフィリアの攻撃が驚異的な速度とは言え、「高速移動」と「意思疎通」による絶速の連携攻撃の手数には劣るのだから。
まぁ、もしフィリアが12人に分身して今と同じ攻撃の密度で俺を攻撃したのなら一太刀は当たるかもしれないが。
しかし攻撃の手数はともかく、一つ一つの攻撃の重さは魔狼族の攻撃よりも格段に大きい。
それを連続で防御しているので、今は1本の剣を両手で持っているとは言え流石にそろそろ腕が疲れてきた。
二刀流に切り替えれば、わざわざ1本の剣を大きく動かしてまでフィリアの2本の剣を防御する必要も無くなるのだが…俺にも一人の人間相手に簡単に二刀流に頼ろうとするのを避けたいプライドがある。
それに、これだけの速度で剣を振り回しているフィリアもそろそろ体力の限界だろう。
スキル使用による身体への負担が減っているとは言え、体力が無限になる事は無いからな。
そう考えながらフィリアの攻撃を防御をしていると、案の定、段々とフィリアの攻撃の間隔が長くなっているのを感じた。
フィリア自身も、だいぶ息が上がっているようであった。
やがて体力が持たなくなったフィリアが攻撃を止め、俺から少しの距離を離した。
「ハァ…ハァ…『双剣乱舞』でも本体にかすりもしないなんて…流石に驚いたわ。」
それはまぁ、必殺技を初見の相手に繰り出して全て防御されれば驚きもするだろうな。
俺も、相手が俺で無ければ先程の攻撃はグリル選手にも当たっていたと思う。
「まぁ、確かに中々早い攻撃だった。
相当な手練相手にも当たる攻撃だっただろう。
ただ、相手が俺だったのが悪かったな。」
俺はそう言いつつ不敵に笑い、先程の様な余裕を見せる。
「そのようね…まさか全て防御されるとは思わなかったわ。
でも、私の必殺技は今の『双剣乱舞』だけじゃ無いわよ。」
フィリアがそう言うと、フィリアの2本の剣からバチッという音を発し、段々と強く電気を帯びていった。
数秒すると、電気が最大まで溜まったのかフィリアの剣がバチバチという大きな音と共に雷を帯びていた。
「これがもう一つの必殺技『纏雷剣』よ。
さぁ、これが避けられるかしら?
ハァッ!!」
フィリアが雷を纏う剣を振る。
それと同時に、フィリアの剣から俺に向けて小さな雷が飛来する。
そフィリアがこの距離で剣を振るのを疑問に思った俺は、フィリアの初動を見て「空破斬」の初動に似ている事に気付き、フィリアが剣を振る瞬間に飛来物を警戒して反射的に「高速移動」でその場を大きく離れた。
その結果、フィリアの飛ばした雷をギリギリの所で躱す事に成功した。
そして、先程のフィリアの攻撃を避けつつも雷の動きを観察すると、フィリアの飛ばした雷が俺の剣に向かって僅かに軌道を逸らしている事を確認できた。
つまり俺の持っている剣が、避雷針の役目をしていた訳だ。
俺は次のフィリアの攻撃でまた剣に雷が寄せられない様に、剣を鞘に納めた。
どちらにせよ、雷を纏った剣を金属の剣で防御すれば当然感電するだろう。
龍精眼でスキル名を見た時は、剣に雷の力を宿すスキルだとは思ったが、その雷を飛ばす事が出来る程に使い勝手が良いのは少し予想外だった。
「この攻撃も躱すなんて、化け物並の反射神経でもしてるのかしら?
幾ら『高速移動』でもこの速度の攻撃を躱すなんて、事前に予測でもしてなければ不可能なハズなのに…。
でも、雷がその剣に寄せられるのに気づいて剣を納めたのでしょうけれど…まさか剣を使わずに戦う気?」
「そうだ。その雷を使われている限り、剣を持っていても不利益なだけだろう?」
「そうだけど…剣無しでこの雷を掻い潜って私に攻撃を当てる気でいるなんて不可能よ。」
フィリアは「双剣乱舞」以上に自信のある必殺技を、剣も無しに立ち向かおうとする俺にもはや論外だと考えているようだ。
まぁ、そりゃあ普通はそう考えるのが妥当だろうが…知らない者には幾ら俺が口で言ったとしても無駄だろう。
…俺の戦闘分野が剣術だけではない事を知らない者には。
そんなフィリアに、俺は一言だけ
「やってみなくてはわからないだろう?」
とだけ言っておく。
「へぇ…言うじゃない。
やれるものならやってみなさいよ!!」
そう言ってフィリアが可笑しいと言わんばかりに笑顔で剣を連続で振り、次々に雷を俺に飛ばす。
…しかし俺がフィリアの初動だけで雷の軌道を見切り、「高速移動」で避けつつフィリアとの距離を詰める。
「えっ……!?」
眼前まで迫った俺を見て、フィリアが驚愕の表情を見せる。
自慢の必殺技を容易に躱された事のショックも大きいのだろう。
「本当は剣術で勝負をつけたかったんだがな…。」
俺はフィリアにそう言い残し、呆然とするフィリアの首元に手刀を当てた。
必要最低限の力で気絶のツボを押した事により、フィリアがその場で倒れ込む。
その様子を終始見ていた騎士団長が、フィリアの戦闘不能を確認して試合結果を宣言する。
「フィリア=ランベリー、戦闘不能!!
勝者、クロト=ルミナ!!」
今までの試合でも充分過ぎる声の大きさだったが、更に一段と大きい声で宣言した事により、会場が今までで一番に盛り上がった。
「ウォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
試合の会場全体に観戦者の歓声が響く。
歓声の中には「何という戦いだ!」だの、「スゲェ!!」という感想もあったのだろうが、歓声の大半を占める試合に圧倒された観戦者の叫び声に全て消えた。
紛れもせず、俺とフィリアを除く会場内の全ての観戦者に予測できなかった試合となったのだ。
「ん…ハッ!?私気絶してたの…?
この歓声…そう…試合が終わったのね。」
ようやく目を覚ましたフィリアが、観戦者の歓声で状況を把握した様だ。
「…あ〜あ、負けちゃったか。
全力を出したのになぁ。」
気絶する前の記憶も思い出し、自らの敗北を悟った。
残念そうにため息をつくフィリアに、俺は少しでも気を休めようと声を掛ける。
「すまない…なんと言えば良いのかわからないが、君の実力も確かだった。
俺が思っていた以上に苦戦を強いられたよ。」
「ありがと。でも気を使わなくて大丈夫よ。
勝負の途中で貴方に勝てない事は察していたわ。」
試合ではあれ程虚勢を張っていたフィリアが、俺に勝てないと分かっていたという想定外な事を言った事に俺は驚いた。
「えっ?」
つい口から疑問が漏れてしまう。
「だって貴方、私が『双剣乱舞』を使って息を切らしているのに、スキル補助の無い筈の貴方の方が息切れを起こしてないじゃない。
相当な実力が無ければまず有り得ないわ。」
まぁそれはフィリアの考えがごもっともだろう。
「それだけじゃないわ。貴方と剣を交える度に、何故か攻撃を浴びせて攻めているはずの私が追い詰められている様な気がしたのよ。
…これは流石に戦闘に関する私の勘だから明確な根拠は無いけれど…。」
…フィリアの言っていることは正しい。
それが本当に戦闘の勘なら、フィリアの戦闘の才能は人間としては素晴らしいものだ。
「あと、一つ思ったんだけど…」
そう言って何かを考えついたかの様に、フィリアが俺に意外な質問をする。
「…もしかして貴方、全力の半分も出してないんじゃないの?」
明確に俺の心理を突く様なその質問に俺はドキッと内心で驚く。
フィリアの戦闘の勘がそこまで鋭いとは思わなかった。
だが俺はそれを否定しなかったらフィリアがショックを受けるだろうと思い、何とか否定しようとする。
「フィリアの攻撃が凄過ぎて、全力で攻撃する暇が無かったんだ。
相手に全力で攻めさせないのも、また実力だろう?」
…多分上手く返したと思う。
「…そうかしら?まぁそれを聞いて安心したわ。
でも結局貴方の方が上手だったみたいね。
それは否定しないわ。」
何とか上手く返せたようだ。
俺はフィリアに悟られないように内心のみでホッと安心した。
こうして騎士団試験の実技試験が終了し、遂に騎士団試験の合格者が発表されるのであった。
話が長引きそうだったので、対フィリア戦までの話は飛ばしました。
騎士団に入団出来るのは、上位10名と全ての試合の中で優れた実力を持つ選手10名程を予定しています。
つまり当然ながらクロトとフィリアの入団は決定です。
その他の入団者の中で重要キャラを登場させて行こうと考えています。
急いで執筆して書き上げたので、誤字や全話までの矛盾点等があるかもしれません。




