13話:入団試験(実技試験編その1)
今回は入団試験の実技試験編です。
戦闘シーンの文章がやけに長くなってしまったので、中途半端なところで終わってます……。
(´;ω;`)
実技試験編は、その2〜3ぐらいで終わる予定です!
〜人間界〜
筆記試験が終了し、俺達は休憩室で実技試験の開始を待機していた。
俺に筆記試験で負けた事で落ち込んでいるフィリアを横目に、休憩室で一時間ほど待機していると、実技試験受験者の集合時刻になった事を連絡用魔水晶のアナウンスによって伝えられた。
「……集合時刻ね、行きましょうか」
ついさっきまで落ち込んでいたフィリアが、会場への移動を俺に促す。
まぁ、あれほど盛大に勝利宣言をしておいて負けたのだ。
フィリアとしても、これ以上俺に負けて恥をかかない様にしなければならないので、何時までも落ち込んでいる訳にもいかないのだろう。
「そうだな、行くか」
無駄に彼女を刺激しないように、最低限の返事を返して試験会場へと向かうのであった。
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俺達が向かった試験会場は、訓練所内部の闘技場だ。
試合用のステージの周囲には、試合を観戦できる席が数多く並んでいた。
この闘技場は試合用のステージだけで人が数百人ぐらいは同時に入れるほどに広く、普段はここで兵士達が訓練を行っているのだろう。
俺とフィリア以外にも、正確に数えた所、丁度五十名の受験者が集合している。
ここにいる受験者達の内、何人かが俺と試合をする相手になる。
どの受験者も大柄な体格をした者が多く、少なくとも全員が筆記試験に合格できる頭脳を持つ優秀な者達だ。
広場の中央には、鎧を装備した一人の兵士が剣を携えながら佇んでおり、恐らく試合判定の役割を担う者だろう。
王国の門番兵と違い、兜を被っていないため、体格と共に素顔も伺える。
大柄で筋肉質な体格をしており、短髪の黒髪で、彫りの深い顔には左眉の上から左頬にかけて刃物で切られたような傷跡があった。
見る限り相当古い傷跡の様で、幾多の戦場を生き抜いた戦士である証でもあるのだろう。
俺が周りの受験者達を観察していると、今まで沈黙を続けていた兵士の男が突然口を開いた。
「全員、注目!」
兵士の男が広場全体に響き渡る程の大声で叫んだ事により、場にいる俺を含む受験者全員がその兵士の男に注目する。
「受験者は五十名全員揃った様だな。
俺はこの実技試験の判定を務める、騎士団長のウェン=ハルバードだ!」
やはり、この国の騎士団長を務める程の戦士だったか。
大きな声で放たれた台詞の一つ一つに覇気が籠っている。
「まずは貴様らの筆記試験の合格を称えよう。
だが、安心するのは早い!
この実技試験を乗り越えた実力ある者のみが、晴れて騎士団に入団する事ができる!
実技試験開始の前に、試合のルールを説明する!」
いつの間にか周りの受験者は静まり、騎士団長の話をただ真剣に聞いていた。
騎士団への入団を間近に、一気に緊張感を覚えたのだろう。
「一つ、試合の区域の制限は無く、場外負けは無いものとする!
二つ、貴様らの所持している剣やスキル等の使用は認めるものとする!
三つ、制限時間は設けない!
四つ、戦闘の続行が不可能と見なされた場合には敗北と見なす!
五つ、試合中の棄権は不可能!ただし試合の前での棄権の申請は認めるものとする!
戦場で戦を放棄するなど、兵士失格だ!
六つ、万が一試合相手を殺害した者は即不合格とする!
以上だ!」
ざっくりとした内容だったが、主なルールとしては大体そんなものだろう。
それにしても、スキルの使用が認められているということは、認められていない場合に比べて戦略の幅がかなり広がるな。
まぁ相手がどのようなスキルを使って来た場合でも当然負ける気は一切無いが。
「それでは、実技試験を開始する!
第一試合、フィリア=ランベリー対グリル=アルマーニ!」
あぁ、既に対戦の組み合わせは決められていたのか。
それにしても、第一試合からフィリアが出場するとは偶然だな。
「あら、第一試合から私の出番?
まぁお相手さんには悪いけど、サクッと勝たせて貰うわ」
不敵な笑みでフィリアが言う。
相変わらず、相当な自身がある様だな。
他の受験者の試合中は、試合をしない受験者は試合を観戦出来るので、俺もフィリアの実力を見せて貰うことにしよう。
そうだ、試合の観戦中なら龍精眼を使う絶好の機会だ。
今まで使う機会が無かったが、少しこの魔法道具の効果を試してみるか。
俺はそう考えつつ、試合を観戦するのに絶好な観戦席へと向かった。
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フィリアとその対戦相手であるグリル=アルマーニという選手、試合の判定を務める騎士団長以外の者全員が観戦席へと移動し、間もなく試合が開始されようとしていた。
ステージ上には、フィリアと対戦相手のグリルが三十メートルの距離を空け、両者が剣を構えている。
騎士団長はステージの中央より少し離れた位置に立っている。
グリル=アルマーニという対戦相手も体格が大きく筋肉質な男だった。
防具もしっかりと身につけており、一見するとフィリアに勝ち目が無いように見える。
それでもグリルは油断なくフィリアを見つめていた。
流石に相手を見かけで判断する馬鹿ではないだろうな。
そして、今が龍精眼を使用する絶好の機会であった。
収納スキルから水晶の見た目をしている龍精眼を取り出し、その水晶越しにフィリアを見てステータスを探る。
すると、水晶から空中にフィリアのステータスが書かれたスクリーンが映し出された。
名前︰フィリア=ランベリー
性別︰女性
武器:剣×2
属性:雷
レベル:150
攻撃力:120
防御力:70
俊敏性:160
スキル
「身体強化LV2」
「跳躍LV2」
「生命感知LV1」
「資格強化」
「聴覚強化」
固有スキル
「双剣乱舞」
「纏雷剣」
ふむ……レベルや大体のステータスは俺より低いが、俊敏性等が俺よりも上だな。
身体強化スキルと併せて相手の攻撃を避ける事に特化しているのだろう。
視覚強化や聴覚強化の効果は、視力と聴力を強くする……のでは無く、幾ら目や耳を酷使しても視力と聴力が衰えないというスキルだ。
地味に思えるかもしれないが、強力な光を直視しても失明せず、爆音を耳元で聞いても難聴等にならないという、実際はかなり重宝する効果だ。
固有スキルの二つは、名前からして必殺技の様なものなのだろう。
フィリアの自身はこの必殺技から来ている事が伺える。
確かに、初見で繰り出されたら人間には不可避の技だろうな。
リミアのステータスなら直撃しても平気だろうし、竜人のグレアなら軽々と受け流せるかもしれないが。
対戦相手のステータスは……多分フィリアが勝つだろうし、仮にグリルが勝利した場合に見るとしよう。
観戦席には、筆記試験に合格しなかった者も大勢いて、その場の全員が試合の開始を今か今かと待ちわびている。
張り詰めた空気が会場を満たす中、ステージ上の騎士団長が腕を振り上げる。
「それでは、第一試合……開始!」
騎士団長が大声で叫び、振り上げた腕を今度は振り下ろし、試合の開始を告げた。
その瞬間フィリアはステータスと身体強化を併せて極限まで高めた速度で対戦相手のグリルに向かって疾走する。
グリルは普通なら有り得ない速度で向かってくるフィリアに一瞬驚いたが、すぐに平常心を取り戻して両手剣で防御の構えを取る。
「ハァッ!」
と叫びつつ二本の剣でフィリアが繰り出した斬撃を、グリルが冷静に両手剣で防御する。それでもフィリアは更に斬撃を繰り出し、グリルがまた防御する。
恐らくフィリアは固有スキルの"双剣乱舞"をまだ使っていないが、身体強化スキルの効果で、斬撃の速度はとてつもない早さとなっていた。
それを何度も繰り返し、両者の間で激しい攻防戦が行われている。
フィリアも相当に強いのだろうが、対戦相手のグリルも決して弱くは無い。
寧ろ高速で繰り出されるフィリアの斬撃に防御が間に合う程の動体視力と技量が備わっているのだ。
そんな2人の激しい試合に、観戦席も盛り上っていた。
「す……すげぇ!」
「あの嬢ちゃん、滅茶苦茶速いぞ!?」
「嘘だろ……俺も筆記試験合格してたら対戦相手あの娘だったかもしれないな……」
「グリルって対戦相手も、あの嬢ちゃんの動きについていってるぞ!」
「俺、今回は筆記試験落ちて良かったかも……なんてな……」
歓声を叫ぶ者、驚愕する者等は様々だが、会場にいる全員が二人の実力に惹かれているのは明白だった。
フィリアも、第一試合から面倒な相手に当たったものである。
あのグリルという男は、予想以上に手練だ。
今は防戦一方だが、フィリアの攻撃を受ける度に段々と動きが良くなってきている。
そして遂にフィリアの斬撃を剣で弾き返したグリルが、笑みを浮かべつつ口を開く。
「嬢ちゃん、見た目に反して中々やるな。
だが俺も身体が慣れてきたし、今度はこっちからいかせて貰うぜ!」
今までフィリアの猛攻を受けていたグリルがそう言って防御の構えを止め、剣を振り上げた。
その瞬間、グリルが持っていた剣が赤く発光する。
魔法……では無く、あれは恐らくスキルの類だろう。
驚くべき事に、グレアの完璧な『魔装』に近い発光の仕方をしている。
恐らくアレを喰らえば、大抵の人間は怪我では済まないだろう。
相手を殺害してはならないというルール上、グリルとしてもある程度の加減はするつもりなのだろうが。
「喰らえ、必殺『反逆斬』!」
グリルが技名を叫びつつ、目に見えぬ初速で剣を振り下ろす。
その攻撃に危機を察知したフィリアは、即座に回避体制を取る。
しかし、フィリアがその場を離れるよりも早く、グリルの剣が振り下ろされ―――
ドゴォォォォォン!
という盛大な爆発音と共に、凄まじい破壊力が発生し、地面を抉った。
それと共に大量の砂煙が発生した為、試合の行方は解らないが、最後に見えたフィリアの体制からは、あの剣の回避は不可能――
ーーと、周りの受験者達にはそう見えただろう。
「何だあの威力!?」
「有り得ねぇ…グリルとかいう奴、化け物かよ!」
「やべぇぞ……こりゃ嬢ちゃん死んじまったんじゃあねえのか?」
などと、観客である受験者達がざわめいているが……。
俺だけが、あの砂煙の中で何が起きているのかを把握していた。
グリルが必殺技を放つ前まで、フィリアはまだ全力の速度を出していなかった。
そしてフィリアが全力の速度を出したのは、グリルが必殺技を放つ瞬間だ。
全力で回避を行ったフィリアの初速は常人の目には追えない速さまで達していた。
グリルの攻撃がフィリアに当たったように観客が錯覚したのは、フィリアの驚異的な速度により残像が見えたからだろう。
本物のフィリアは、グリルが剣を振り下ろした瞬間に既に回避を行っていたのだ。
やがて砂煙が晴れ、グリルはフィリアの姿が視界から消えている事を認識した。
攻撃を繰り出したグリル本人でさえ、それまでフィリアが自分の攻撃を避けた事実に気づけずにいたのだ。
「……いねぇ!? 一体何処に……?」
グリルはすぐさま周囲を見回し、フィリアの姿を探す。
しかし――前方にはフィリアの姿は見えない。
「後ろよ」
突然、グリルの耳に背後から……しかも相当な近距離からフィリアの声が聞こえた。
「何っ……!」
グリルはすぐに声のする方向を向いた。
背後には、直立不動のまま一本の剣先をグリルの首元に向けるフィリアの姿があり、それに驚いたグリルが静止する。
グリルが攻撃するよりも、明らかにフィリアの攻撃が先に当たるだろう。
この瞬間、グリルの為す術が無くなったのである。
「そこまで!
第一試合勝者、フィリア=ランベリー!」
勝負ありと判断した騎士団長が、大声で第一試合の勝敗を告げた。
「「「ウオオオオォォォォォォォ!」」」
第一試合の勝者が決定し、観客席は歓声に包まれた。
誰もが予想しなかったであろう激戦であった。
最初の勝利宣言通り、第一試合はフィリアの勝利だな。
……まぁ『サクッと』勝利はしてないが、グリルという男は予想以上に強かったので、あまり突っ込むのはやめておこう。
寧ろあれほどの相手に必殺技を使用せずに勝利した点を評価するべきだろう。
とにかく、このままフィリアが勝ち上がり続ければ、いずれ俺と試合する時が来るだろう。
その時は、せいぜい彼女のプライドをへし折ってしまわないようにしなければならないな。
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それから第二試合〜第二十四試合まで続き、第二十五試合でようやく俺の出番が来た。
フィリアの第一試合があまりに激戦だったため、第二試合からは目立った試合は無く、観客の盛り上がりがあまり無かった。
まぁ……本来の目的は見世物では無いので、つまらない試合もあって当然なのだが。
別に、俺の出場する第二十五試合で盛り上がりが無かったとしても何ら問題は無いのだ。
という訳で、対戦相手には悪いが出来るだけ速攻で試合を終わらせようと思う。
そう考える俺に、第十試合から俺の隣で試合を観戦していたフィリアが話しかける。
何故に第十試合からかと言うと、第一試合で観客達の注目の的となり、第九試合まで観客達から散々な質問攻めに合っていたのが原因らしい。
「ようやく貴方の番ね。
一回目の対戦から負けていたらお話にならないわよ?」
相変わらずの不敵な笑みだ。
彼女も第一試合では割と苦戦していただろうに……。
「そうだな、まぁせいぜい本気で戦うさ」
あまり突っ込むのも面倒なので、俺は適当に返事を返してステージに向かった。
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ステージ上では、俺と試合の相手であるニック=レイシスという男が第一試合同様三十メートルの距離を空けて剣を構えている。
俺はフィリア同様、剣を二本携えているが、現在構えているのは片方の剣だけだ。
試合相手のニック=レイシスは、他の受験者同様に大柄で筋肉質な男だ。
両手剣を構えつつ、俺を威圧するように睨みつけている。
普通の人間であれば、その威圧の前に尻込むであろう。
俺からすれば、特に凄みは感じないのだが。
緊張した空気が会場を満たす中、騎士団長が試合開始の合図をすべく腕を振り上げる。
「第二十五試合、開始!」
その大声と共に腕を振り下ろし、試合の開始を告げる。
「喰らえ、『空破斬』!」
対戦相手のニックがそう叫び、両手剣で空を切った。
周りの者は何をしているのか解らないと思うが、あれはは恐らく斬撃を離れた場所に飛ばす効果のスキルだろう。
何故俺に解るのかと言うと、魔王だった頃に俺も似たような効果のスキルを使用していたからだ。
……名前がわかり易いという理由も大きいが。
スキルの効果が解らない相手にはかなり有効なのだろうが、スキルの効果を見破った(と言うよりは知ってた)俺はニックの剣の軌道を見て、飛来してくる斬撃を読み、難無く躱す。
「なっ……! 馬鹿な、このスキルを初見で見抜いただと!?」
今の一撃を確実に喰らうと思っていたのか、ニックは相当に驚いた様子だった。
その隙を見て俺は"高速移動"を発動し、一気にニックとの距離を詰める。
「くっ……速い!」
慌ててニックが防御の構えを取る。
大抵の攻撃に対しては防御が間に合う構えの速さだっただろうが…俺にとっては遅すぎた。
ニックが完全に防御の構えをとる前に、俺の放った斬撃が、まだしっかりと握られていないニックの剣を捉えていた。
そして――横一文字に煌めく閃光、一閃。
その斬撃に捉えられ、ニックの握っていた剣が、その手を離れて空高く宙へと舞った。
剣は数メートル先まで回転しつつ吹き飛び、地面に突き刺さる。
「そこまで!
ニック=レイシス戦闘続行不可能!
勝者、クロト=ルミナ!」
余りに早い決着に、会場全体に静寂が訪れた。
勝敗が決まるのに一分も掛からなかったのだ。
殆どの観客が、未だ状況を呑み込めていないのだろう。
しかし、少しの静寂の末にようやく観客全員が状況を把握し、
「「「オオオオオオオォォォォォォォ!」」」
と、第一試合よりも盛大な歓声に会場が包まれた。
俺はそこまで会場を盛り上げるつもりは無かったのだが、圧倒的過ぎる試合に観客達が魅了された様だ。
これで全ての実技試験受験者が一回目の試合を終了し、二回目の試合からは更に白熱した戦いになるのであった。
フィリアのステータスやスキルは割と適当に考えています。
俊敏性に極振りして、回避を優先するスタイルが基本戦法です。
『生命感知』は人間に限らず動物にも効果のあるスキルで、視力に頼らずとも360度の生命体を感知できます。
隠密スキル等を使用している相手でも感知できる、生物の生死を確認できる……等の便利な効果が沢山ありますが、感知できる範囲が狭いという弱点もあります。




