11話:少女との別れ
三週間以上もの間投稿出来なくて申し訳ありません…。
資格試験やテスト週間の関係で小説を書く時間が余り取れませんでした…○| ̄|_
次回からはなるべく一週間以内のペースで投稿し、休載があれば前書きか後書きに書くように心掛けます。
〜人間界〜
城壁前で出会った少女と別れ、現在俺は暇を潰すべく王都を巡回している。
入団試験に参加するのであれば、あの少女の名ぐらい聞いておけば良かったか……? という後悔はあったが。
まぁどちらにせよ、入団試験で参加者の名前が挙げられる事ぐらいあるだろうし、そこで判るとは思うが。
それにしてもやはり、特に目的も無く暇を潰すのであれば読書に限る。
魔界で死神に貰った本は特に面白い本が無かったからな。
という訳で今は、世界最大の冊数を誇るセインガルド図書館に訪れている。
当然ながら本を読む主な目的としては、自分の知識に無い情報を得る事だ。
だが、魔王城に存在する数百万冊……いや、正確に数えた事が無いので数千万冊かもしれない数の本を一冊残らず片っ端から読んで記憶している俺にとって、人間界に存在する理論的な知識は初歩的過ぎて役に立たない。
ならば、どのような本を読むのが最善なのか。
俺が選択した本の種類は、この世界の生物についての本だ。
様々な魔族生命体について書かれており、種族毎の特徴や格付けが記されている。
この本によると、魔界にのみ存在する魔族生命体や、人間界にのみ存在する魔族生命体がいる事を知った。
人間界には吸血鬼、淫魔族、夢魔族等の膨大な魔力を持つ上位悪魔が存在せず、長耳族、岩妖精等の亜人種と呼ばれる種族が存在する様だ。
長耳族は自然を好み、広大な森に生息する種族だ。
非常に人間に近い容姿をしているが、種族名の通り、先の尖った長い耳が特徴の種族で、寿命が数百年〜数千年と非常に長い。
更にその長い寿命の殆どで若々しい肉体を維持しており、寿命が尽きる最後の二十〜三十年で急速に老化が進む。
因みに性別問わず、殆どの長耳族は容姿の優れた個体となるらしい。
人間にとってはこれ程羨ましい種族は無いだろう。
また、魔法の扱いに長けており、基本的に体内の魔力量も人間に比べて多い。
しかし筋力は大した事は無く、人間より筋力の劣る者も普通に存在する。
扱う武器こそ原始的な武器が多く、鉄すら使用するかしないかという技術段階なのだが、膨大な魔力が多大な優位性となり、戦闘力でもかなり優れた種族だ。
岩妖精は人間と同じ様に村や町を作り、そこに生息している。
見た目は人間なのだが、基本的に人間よりも背が小さく手足が短いのが特徴だ。
しかし背の小ささとは裏腹に、逞しい肉体と非常に高度な鍛冶の技術を持ち、戦闘専門の岩妖精も存在しており、決して戦闘力の低い種族では無い。
人間との交易も盛んで、特に採掘した優れた鉱石から作られる優れた性能を持つ多種類の武器や防具が冒険者の注目を集めている様だ。
様々な出会いを求めるなら、様々な亜人種との交流も考えていきたい。
他にも牛、豚、猫、兎などの動物や非常に小さな虫についても知識に取り入れ、図書館での暇潰しを終えたのであった。
図書館にある時計を見ると、現在時刻は四時半頃だった。
そろそろミキの家に戻るのが良いだろうな。
そう考え、俺はセインガルド図書館を出てミキの家に向かうのであった。
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セインガルド図書館から歩くこと(体感時間で)二十分程でミキの家まで着いた。
玄関のドアには鍵がかかっているので、まだミキは学校から帰ってきていないのだろう。
暫くの間、待つとするか。
それから数十分して、魔法学校の制服を着たミキが帰ってきた。
少し離れた地点で俺が家の前で待機しているのに気づき、走ってこちらに向かってきた。
「すいません、お待たせしました!」
家に着いたミキが申し訳無さそうに謝る。
「いやいや、少し前まで図書館で暇潰ししてたから全然待ってないよ」
「そうですか。クロトさんって魔道書以外で何を読むのでしょうか?」
ミキが鍵を鞄から取り出して玄関の鍵を開けつつ言う。
「生物とか薬学に関する本かな。細かな雑学にも興味がある。」
「難しそうな本を読みますね…やっぱり頭のいい人の読む本は違うなぁ……」
苦笑いでミキが言う。
実際は話題に合わせて適当に答えただけだけで、薬学の本は読んでないけどな。
まぁ……薬学の本は魔界で読んだので、あながち嘘とも言えないか。
家の中に入り、昨日と同じ様にリビングに行く。
それからミキが夕食の用意をして、現在はその夕食を一緒に食べているところだ。
料理の内容は肉と野菜をバランス良く取り入れたものだ。
相変わらず美味い。
「今日、学校でテストがあったんです。
クロトさんのお陰で殆どの内容がわかりました!」
「そうか、まぁそこまで大した勉強でも無かったし礼を言われる程では無いけどな」
「流石はクロトさんですね!
私からすれば難しい内容ばかりでしたけど……」
そんな会話を交わしつつ、食事を楽しんだ。
この美味い食事も、俺が騎士団に入団して生活が安定すれば味わえなくなってしまうと考えると少し寂しいな。
食事を終えた後は風呂(シャワー)を済ませ、現在は午後十一時頃。
明日の入団試験に備えて就寝しようと、リビングに布団を敷いているところだ。
そして――その時。
「あの……」
突然、聞き慣れた少女の声が聞こえた。
布団に入り、眠りにつこうかと思っていたところで、リビングにミキが来ていたのだ。
今まで、ミキはこの時間には自室で眠りについている筈だが……?
何やら話がある様子なので、俺は上体のみを起こして体をミキの方に向ける。
「君がこんな時間に起きているのは珍しいな。
何か話でもあるのか?」
俺の問いかけに対してミキがこくり、と神妙に頷き、口を開く。
「その……明日が入団試験の日ですよね?
だからその前に言いたいことがありまして……」
あぁ、そういえば今までは魔法学校や互いの事について話していたので、入団試験に関しての話はあまりしていなかったな。
「そうだな、明日が入団試験の日だ。
俺は既に合格する気でいるが、騎士団の目に留まる様に、最善を尽くして臨むつもりだ」
「そうですね。私もクロトさんなら合格出来ると思います。
あと……私から一言だけ言いたいことが……」
ミキの方からも合格を肯定してくれているのは有難いな。
まだ戦闘においての実力は見せていないとは言え、ミキは俺の力をある程度察しているのかもしれない。
それで、ミキの方から一言……?
どうもその台詞でミキの目線が俺から外れた為、何かを遠慮して言っているのだろう。
「えぇと……今まで私が見てきたクロトさんは頭が良くて、料理も上手で、優しくて格好良くて……他の分野においても完璧な方でした。
私には出来ない事が、クロトさんには沢山出来て……憧れを抱きました。
だから私は……その……クロトさんが……」
途中までの台詞はしっかり目線を合わせて話していたが、最後の一文は先ほどと同じく目線が外れ、最後の台詞で俯いて黙ってしまった。
伝えるのを躊躇ってしまう内容なのか、非常に重要な事を伝えたいのに上手く言葉を見いだせないのか……?
何を言いたいのかはイマイチ解らないが、そこまで褒められると流石に少し照れるな。
まぁ実際は何百万年と生きている訳だし、どれも備わっていて当然の能力ばかりだとは思うが。
俺が魔王であった事を知る者からすれば、あまり大した事では無く感じるだろう。
そんな事を考えていると、先ほどの台詞から少し沈黙していたミキが目線を俺に合わせて口を開く。
「私は……クロトさんの合格を願っています。
それで……えっと……が……頑張ってきて下さいね!」
ニッ、とした笑顔でそう言い、俺が返事をする前に早足で自室に戻っていった。
しかしその笑顔は不器用で、明らかに作り笑顔である事がわかった。
その仕草から察するに、俺に伝えたい本命の内容が他にもあったのだと思う。
だが、それはミキが私的に伝えたい事であり、俺から無理に聞くべきではないだろう。
何時かミキの方から話す気になるのを待とう。
僅かに顔が赤くなっていた気がするが、それも何か関連があるのか?
もしかすると、俺に着替えを見られた事をまだ気にしているのかもしれないな……。
そう考えて自己反省しつつ、俺は布団に横たわり眠りについた。
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そして、翌日の朝。
「……ロト……さ……」
布団に入って眠っていた俺の耳に、少女の……いや、ミキの声が聞こえる。
その声で意識が目覚めた俺の耳に、先程よりも鮮明にミキの声が聞こえる。
「クロトさん、朝ですよ。起きて下さい」
目を開けると、俺の体を揺さぶりながら俺を目覚めさせようとするミキの姿が見えた。
「あぁ…もう朝か……おはよう」
俺はそうミキに返事をして、体を起こす。
時計を見ると、現在の時刻が午前七時頃である事を示していた。
「おはようございます。今朝食の用意をしていますので少しお待ち下さいね」
ミキが笑顔で言い、台所に向かって歩いていった。
昨日の夜の出来事で、少し気まずくなるかもしれないと思ったが、ミキの方は普段と同じ様に接してくれている。
俺の方からも変に気を使わず、普段通りに接するのが良いだろう。
布団を畳み、リビングの椅子に腰掛けて少し待つとミキが料理を終えてリビングに食事を運んで来た。
「お待たせしました!」
ミキがそう言いつつ、机に食器を並べてゆく。
今日は入団試験という事で野菜は勿論、肉料理も入っており、朝食ながら多めの料理になっているようだ。
しかし相変わらず、並べられた料理の見た目はどれも美味そうだ。
……いや、最早食べなくても美味い事は判る。
今までミキの料理はどれも美味かったからな。
それ故に、ミキの手料理を食べられる機会も、これが最後になるだろうと考えると、少し寂しい気持ちにもなる。
昨日までの様に食事をしているところで、ミキが会話を始める。
「クロトさん、ついに今日が入団試験の試験日ですね」
「あぁ。遂にこの日が来たかと思うよ。
気を引き締めて望まなければな」
まぁ実際は気を引き締めるどころか、一切の緊張もしていないのだが。
「それで……試験に合格して、騎士団に入団したら……クロトさんは本格的にセインガルド王国の国民として生活するんですか?」
「そうだな、この国の住民として生きていくよ。
騎士団は王城の内部に基地があるし、騎士団は基地の部屋に住むことも出来る。
騎士団に入団したら、騎士団の基地に住むつもりだ」
「そうですか……でもクロトさんがお家からいなくなってしまうのは少し寂しいですね……」
少し……という割には、かなり悲しそうな顔でミキが言う。
寂しい、という感情があるという事は少なくとも俺に好感を持って貰えた様だ。
「寂しい……か。
でも俺は何時までもこの家に…何よりも君に余り世話になる訳にはいかない。
だけど王国からいなくなる訳ではないし、機会があれば今度は魔法学校で会えるだろう。
俺としても、お世話になった君とはまだ話したい事は多いからな」
数日の間とは言え、非常に世話になった少女だ。
世話になってお別れ……では無く、また会える機会がある以上は、この恩を返すのが当然だろう。
仮に試験に不合格になれば、この王国には居られ無いだろうけどな。
とは言え、今のところ試験に落ちる気もないし、王国を出ていくつもりも無い。
まぁ仮にそうなったとしても、何らかの形でミキに恩を返すつもりでいるのだが……。
「お世話だなんて、とんでもありませんよ!
私こそお勉強教えて頂いたり、お料理作って頂いたり……凄く嬉しかったです!」
勉強を教えるのも、料理を作るのも俺からすれば些細な仕事のような程度のつもりだったのだが、そこまで感謝されるとは思ってなかったな。
俺達はそんな会話を交わしつつ、食事を終えた。
それから俺はリビングで身支度を済ませ、少し時間は早いが、入団試験に向かおうとして、玄関の扉の前にいる。
騎士団に入団すれば、住居に困らなくなる。
この家にこれ以上世話になる事も無いであろう。
俺はこの家を出て行く前に何か礼を言っておかなければ……と考え、
「今まで世話になった、有難う。
必ず……何時かまた会おう。」
そう笑顔で言った。
伝えたい感謝や礼はまだあるのだが、それはまた次に会えた時に伝えよう。
そう考えて玄関の扉に手を伸ばした時。
「わ、私の方こそ有難うございました!
その、また機会があれば…絶対にまた会いましょう!」
ミキが何故か顔を赤らめつつ、少し緊張した口調で言った。
その様子も気になったが、何より別れというものは、お互い良い気分で迎えるものだろうし、ここはあまり追求しない方が良いだろうな。
「あぁ、じゃあ…元気でな。」
そう言って玄関の扉を開き、ミキの家を後にし、入団試験へと歩みを進めた。
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ミキの家を離れて数十分。
俺は現在、入団試験を受けるべくセインガルド王宮前に来ていた。
だが……。
ざわざわざわざわ………
外壁門の前に、非常に多くの人間が烏合の衆を作り、雑談を交わしていた。
恐らくこの全員が今日の入団試験の受験者なのだろう。
一人一人の雑談はそこまで大きい声ではないのだが、何しろ見た目だけで数百人もの受験者が受付の順番を待っているのだ。
それ程の数の人間が雑談を交わせば、一人一人が小声だとしても相当な騒音になる。
それにしても、本当に人数が多い。
受付の締切予定時刻が午前九時まで……なのだが、推奨集合時刻が午前七時半前と異様に早かったのは、この受験者の人数が原因なのか。
現在の時刻は午前八時頃でまだ受付終了までに時間はあるのだが、予想以上に人数が多い。
この人数……俺の順番までに一体どれ程の時間がかかるだろうか?
今でも列の最後尾は、外壁門が遠目に見える程の人数が並んでいる。
面倒だが、ここで列に並ばなければ更に人数が増えるだろう。
そう考えつつ、列の最後尾に並ぼうとした時、
「あっ、貴方は昨日のお兄さんじゃない。
このタイミングは偶然ね。」
と言う少女の声が聞こえた。
俺はその声でちょうど列の一番最後に、昨日の城壁前で出会った少女が並んでいた事に気づく。
「君は昨日の……そういえば名前を聞いていなかったな」
会話をする際に、相手の名前を知っていた方が話が円滑に進むだろう。
色々質問したい事はあるが、先ずは名前が先だな。
「あぁ、そうね。
私の名前はフィリア=ランベリーよ。
貴方は?」
「俺はクロト=ルミナだ。国外から訪れた旅人だよ」
「クロト=ルミナ……へぇ、珍しい名前ね」
まぁ、ほぼ適当に考えた名前だから当然だろう。
とはいえ、サタンという実名も珍しいだろうが。
「まぁ、それはいいわ。
それより貴方、旅人って事は入団試験は初めてなのね?」
「ああ、俺は初めてだが……この受験者達の中には何回も受験している者も多い様だな」
毎年これ程の受験人数の中、合格できるのは十数〜数十人程度。
前回までの試験でその少数の内に入れなかった者達が、またこの試験に挑んでいるのだろう。
「私も初めてだけど……試験の内容については大体把握してるわ」
「俺も多少は把握しているが……筆記試験と実技試験があり、筆記試験では高度な魔法理論なんかが出るという事ぐらいだな」
今考えると、もう少し内容を把握しておけば良かったかもしれないな。
まぁ余程の事がない限り、ある程度難しい試験でも受かるだろうと思っていたのであまり調べようとしなかっただけだが。
「大雑把に言うとそうね。
筆記試験では高水準な問題が数多く出るわ。力馬鹿なだけの受験者はまずここで落ちるわね。
実技試験は受験者同士で一体一の試合よ。
もしかしたら貴方と戦う事になるかもしれないわね。
一戦目で貴方に当たるか、仮にも貴方が私との試合まで勝ち進めたらの話だけど。
そもそも筆記試験通らなかったら無理な話ね」
実技試験とは受験者同士の対戦か。
1体1での戦闘……自分で言うのもなんだが、完全に俺向けだろう。
「対人戦は俺の得意分野だ。
君の方こそ、途中で負けたりするなよ?」
「フッ、そんなの心配される筋合いは無いわ」
心配してる訳では無いのだが……。
まぁ出会った時からこの態度なのだ。
相当に自身はあるのだろう。
「そうか、なら君との対戦が楽しみだな。
昨日言った通り、俺の期待に応えてくれよ?」
恐らく応えられないだろうけどな。
リミアのような魔族生命体よりも強い人間はいないだろう。
「勿論よ。私こそ、貴方との試合が楽しみね」
そう言ってフィリアが見栄を張るが、あまり期待はしないでおこう。
俺はフィリアに実力を見せるだけでいいだろうな。
それからしばらくの間、俺達はそのような会話を交わしつつ、受付を済ませたのであった。
今回で入団試験の筆記試験までは書くつもりでしたが、それまでの話が長引いてしまったので、次話からが入団試験本番の話となります。
でもまだ入団試験の細かい内容をあまり考えてません……。




