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退屈した魔王は勇者になる様です。  作者: ナミ73
2章:セインガルド騎士団入団編
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9話︰ミキという少女

戦闘に関する一切の描写がない日常回です。

主に魔法学校についての説明をしていたらやけに長ったらしくなりました……。


感想の方で問題点の指摘を頂いたので、編集にて訂正しました。

まだ修正し切れていない箇所がありましたら、同様に感想欄でご指摘頂けると幸いです。

  〜人間界〜


 「それで、前に展開した魔法式をここに用いると……」


 現在俺は、ミキという少女の家で勉強を教授していた。

 勉強を教えてからしばらく経っており、ミキのクラスで行われる次の試験の範囲は大体教えて終わったところだ。


 「あっ、確かにこの魔法式も解けますね! それにしてもクロトさん、物凄く頭が良いんですね……。国外のお方なのに、学校の先生よりもわかりやすいです!」


 「先生以上と言うには、俺はまだ知識不足だよ。それにしても、何で君は休校日に制服を着ているんだ?」


 そう、初めて会った時からその事が気になっていたのだ。

 まさか学校の制服を私服代わりに着るほど気に入っている訳ではあるまい。


 「確かに今日は休校ですが……図書室は空いているんですよ。読書が好きなので、図書室はよく利用しているんです。でも図書室を利用するには、学校の制服を着なければいけません。授業を受けるわけではありませんが、一応は校舎内ですからね。

 クロトさんに出会った時はその帰りだったんです」


 なるほど。という事は、入学すれば図書室は利用し放題って事か。それは中々嬉しいな。

 魔道書だけでなく、人間界の書物にはかなり興味がある。


 勉強中に魔法学校の詳細について聞いてみたところ、基本的には十八歳までは魔法理論を学習するらしく、魔法実技が取り入れられるのは十九歳からという話だった。


 しかし現在、ミキの年齢は十七才。つまり彼女はまだ魔法を使用できる段階では無く、魔力操作についてもあまり理解ができていない様だった。


 ミキの使っている魔道書には魔力操作の事は書いてなかったし、ならば図書室から魔力操作に纏わる本を持ってきて欲しいと頼んだのだが……。


 「すみません……図書室の本は校外への持ち出しは禁止となっていて、こっそり持ち出そうとしても校門に校則違反を禁止する結界が貼られていて不可能なんです……」


 との事だった。

 魔法学校には結界魔法の知識もあるのか。

 人間界の中でも特に魔法技術の発展している国なだけあって、意外と広範囲な魔法知識を蓄えている様だ。


 俺が魔王だった頃、やけに親しかった変わり者の死神が人間界から書物を持って来ることがあったので、その本を譲り受けて読んでいたのだが……あまり面白い本は無かったな。


 魂以外での人間への干渉はできないが、人間と直接触れ合わず……なおかつ、殆ど人間界に影響を及ぼさない範囲であれば人間界でも行動できるらしい。

 面白い本が無かったのは、その制限内で持ってこれる本がそれしか無かったからだろう。


 魔力操作に纏わる本を読むついでに、何か興味を引く本を読んでみるのも良さそうだ。


 「それにしても、これ程魔法に詳しい人は初めて見ました……。これほどの知識があれば、絶対に学校でも成績はかなりの上位に入れますよ。

 私なんて、同学年の人達の中でも成績は中の下ぐらいで……」


 中の下……か。確かにミキはこの魔道書の基本的な部分はある程度理解している様だが、少し複雑だったり応用が必要な範囲になってくると頭を悩ませることが多いようだった。


 上位の者になってくると、この範囲を殆ど理解しているのかもしれないな。

 だとすれば、実技を教えれば簡単な魔法ぐらいは扱えるかもしれない。


 ただ、中の下とは言っても、魔法学校は普通の学校よりも遥かに教育水準が高い。

 普通の学校であれば、ミキもかなり上位の成績を得られたであろう。


 とは言え……質問してきた魔法学の範囲も俺からすれば簡単な範囲なのだが。


 リミアもこの範囲の問題は簡単に解けるだろう。

 元々リミアは知能が高く、俺ほどでは無いが、あらゆる魔族生命体の中でも非常に多くの魔法を扱えるからな。

 更に体内に宿る魔力の量も莫大で、時間をかけて魔力を極めていけば俺の魔力にも匹敵しうる程だ。


 ……やはりこの世界に来てからもリミアの事をよく思い出すな。

 俺の側近としての付き合いもかなり長いので、こうした場面でもふと頭に思い浮かぶのは仕方ないのだが。


 ほんの僅かの間、思考が逸れてしまったが、すぐに頭を切り替え会話に集中する。


 「そうか? まぁ俺は元々かなり魔法に興味があったから、色々と魔法について調べていたら人一倍魔法の知識がついただけさ。少しずつ覚えていけば、誰でも必ず力は身につくからな」


 国外……と言うか、異世界からの出身だなんて言えないだろうな。


 「アハハ…興味で魔法を理解しちゃうなんて、とんでもない頭ですよ……。入学前から既に先生を超えているんじゃないですか?」


 そう言いつつミキは苦笑いする。

 魔法学校でまともに教育を受けている筈なのに、興味本位だけで魔法を学んだ者に負けているのが相当ショックだった様だ。

 俺としては、十七才の少女に知識で負ける方が余程恥ずかしい話だが……。


 「そう言えばクロトさん、『試験の他に入学する方法がある』みたいな事言ってましたよね。

 その方法って何ですか? 入学試験以外の方法なんて私も知りませんよ?」


 ん? 優秀な兵士が魔法学校への入学を推奨される事は知らないのか?

 でも確かに、既に入学している者からすれば関係の無い話か。


 「あぁ、それはな……騎士団の入団試験で一定の水準を満たし、優秀な戦力を有していると認められた場合、魔法学校への入学を国から推奨されるんだ。

 それならほぼ入学は確定だし、こう見えて入団試験は自信があるんだ」


 「ええっ! あの騎士団に入団ですか!? 色々な国の兵団よりも遥かに兵力が高いのに……」


 まぁ、魔法ばかりを極めているイメージを付けられたら、驚くのも当然だろう。

 魔法使いは身体能力の高い者が殆どいないから、セインガルド王国騎士団に入団できる程の身体能力がある魔法使いなど、聞いたことも無いだろう。


 「クロトさん、もしかして相当お強い方ですか……? 確かに剣を持ってますけど……」


 この国の兵士の殆どが良い体格をしている為、それに比べて俺の身体が弱々しく見えるのだろう。

 確かにそれほど筋肉質な見た目でも無いし、門番で見た兵士の様に大きな体格もしていない。


 だが……俺は既に門番兵よりも体格の良い竜人兵(ハーフドラゴンナイト)達に一人で命懸けの戦闘に勝利している訳だし、体格で強さを測るのは間違いだ。


 「見た目で判断されては困るな。これでも色々な魔物を倒してきているんだぞ?」


 魔族生命体という言い方は、この世界ではあまり馴染みが無い様なので判りやすいように魔物と言っておく。


 ミキの反応(リアクション)が面白いので、少し得意気になりつつ言った。

 さて、どのような反応(リアクション)をするだろうか?


 「本当ですか!? 私は本で魔物を見ましたが、どの魔物も恐ろしい見た目でした…。

 特に竜人種(ハーフドラゴン)なんて物凄く強いって言われてるじゃないですか! クロトさんはどんな魔物と戦ったんですか?」


 「え? あぁ、そうだな……」


 恐ろしいと言った魔物の中に、竜人種(ハーフドラゴン)がいきなり取り上げられるとは思わなかったな。

 まさかその竜人種(ハーフドラゴン)の兵士達に一人で……ましてや、その竜人種(ハーフドラゴン)のリーダーに勝利したなどとは言いづらいな。


 どう誤魔化そうか……と考え、つい目線を逸らしてしまった。


 「……一番強かったのは魔狼種(ビースト)だよ。単体だったけど、何とか一人で倒せたぐらいだ」


 竜人種(ハーフドラゴン)と比べて単体の戦闘力が低い魔狼種(ビースト)を選ぶ。

 流石に十二匹相手に勝ったとは言えないのだが。


 ゴブリンも魔物の端くれだが……倒すのにも低ランクの冒険者一人相当だから、俺が強いイメージをミキに持たせるには流石に不十分過ぎる。

 俺が戦ったゴブリン達はレベルが高く、装備はボロボロだったが三体とも動きは良かったので、あのゴブリン達なら中ランク相当はありそうだったが……。

 そんな証拠はないし、ここで話しても信用はされないだろう。


 「び……魔狼種(ビースト)!? 普通の場合、中ランクの冒険者数人で単体に挑む魔族ですよ!?

 それってクロトさん、上ランクの冒険者相当の実力があるって事ですか……? 頭も物凄く良いのに、戦闘も得意だなんて、もう完璧人間じゃないですか……」


 騎士団に入団するなら当然の事だと思ったが、予想以上の反応(リアクション)だった。

 魔狼種(ビースト)って、そんなに強いか?

 奴らの高レベルの『高速移動』スキルは確かに少し厄介だったと言えるが……。


 「ま、まぁ魔狼種(ビースト)の中でもたまたま弱い個体だったんじゃないか? 上ランクの冒険者相当なんてとんでもない……」


 普通の魔狼種(ビースト)一体を一人で倒せるのが上ランク冒険者に相当するなら、むしろ魔狼種(ビースト)をリーダー含めて十二匹倒す程度の実力がどれほどのランクの冒険者に相当するのかが気になってくるな……。


 「いえいえ……それでも相当な実力があると思いますよ。あっ、お話をしていたらもうこんな時間になってしまいましたね……」


 あぁ。話をしている内に俺も時間の事を忘れてしまっていたな。

 部屋の壁に掛けてある時計を見ると、現在の時間が午後の六時を少し過ぎていることを示していた。


 「確かにもう外も暗くなってきたな……。今日はここの近くの宿に泊まることにするよ」


 昨日泊まった宿に今から歩いているとかなり遅くなってしまう。

 遅い時間に寝る事は人間にとって身体に悪影響だから早めの睡眠は取っておきたいのだ。

 あの宿が一番安かったのだが…まぁ今日はここから近い宿で安いところを探せばいいだろう。

 そう俺は考えていたのだが……。


 「あっ、家に泊まって頂いて結構ですよ。

 ご飯もお風呂もご用意しますので、遠慮はいりません。しばらく家族もいませんし、入団試験までは泊まって頂いても大丈夫です!」


 いや、それは大丈夫……なのか?

 確かに、その話は俺から見ればかなり嬉しい。

 暫くの宿の宿泊費や食費等も浮くし、わざわざ宿を探す手間も無くなるからな。


 しかし一寸待て。

 自分に無害だと信用出来る者を少しの間家に入れる程度なら、付き合いの短い者でもギリギリ許されるだろう。だが……今日初めて知り合った男を不用心に家に泊めさせて平気なのか?

 いや、別に俺は何も悪行を行う気はないが……幾らスキルを信用しているからって、気を許し過ぎなのでは……?


 「いやいや、そこまで世話になっても悪いし、宿を探すよ。まだ明日も暇だし、勉強なら明日にでも教えて良いから」


 「いえいえ、私の方こそお勉強を教えて頂いているのでそのお礼ですよ。

 それに、家に泊まって頂けるならまだお勉強教えて貰えますので。

 明日も学校はお休みなのでまた教えて貰いたいんです!」


 どうやら、俺の教え方が相当気に入られたらしい。

 ……まぁ、彼女の方も問題ない様だし、そこまで引き止められながら断る理由も無いだろう。

 一応は利害の一致もしている訳だからな。


 「解った。じゃあその言葉に甘える事にするよ」


 「やったぁ! では……本当はお勉強の続きを教えて頂きたかったのですが、お腹も空きましたし、夜ご飯の用意をしますね! 何かご希望のメニューはありますか? 趣味でよくお料理をするので、ある程度の種類のお料理はできますよ!

 食材も色々な種類があるので、私に可能な範囲なら何でもお作りします!」


 ミキが笑顔で俺が了解した事を喜ぶ。

 俺も良くこの短時間でよくここまで親しめたものだな……。


 ミキは自分のスキルのお陰で、俺はミキが魔法学校の制服を来ている事によってお互いに初めから疑うこと無く接する事ができたというのもあるだろうけど。


 それにしても、人間界に来てから誰かの役に立てたのはこの勉強会が初めてだな。

 ミキが俺に気を許してくれた事で、久々に誰かの約に立つ嬉しさを実感した。


 それにしても、夕食の希望か。

 正直、俺は好き嫌いも無く、腹を満たせるならば食事の内容はあまり問わないのだが……。


 というか、俺が魔族生命体だった頃は食事の必要が無い身体だったので、食事をする感覚を興味本位で体験したかった時にあらゆる料理を料理人の部下に作らせて食べた時ぐらいか。

 その時の身体は満腹感を感じない様になっていたので、味や食感等は感じるものの、満腹になった時の満足感は得られなかった。


 だが、満腹感を感じない事を逆に利用して、魔王城にある全ての食材と調味料の味や食感を全て覚えておいたのだ。


 人間の身体になって食料を食べてから初めて満腹感も感じる事ができた。

 確かに腹が満たされれば満足感があったな。


 「何でも……か。そう言われると迷ってしまうな」


 「ですよね……あっ、数日後の入団試験に参加するんですよね? だったらなるべく体力がつくように、お肉や野菜を主体に、調味料多めで作りましょうか?」


 「それは良いな。じゃあそのメニューで頼むよ」


 「わかりました! では少しお待ちくださいね!

 あっ、興味がある様でしたらその魔道書も読んでいて貰っていいですよ!」


 どうやら相手の事を考えてメニューを決めているあたり、結構料理の方は慣れている様だ。

 相手の要望に合わせて料理をつくれる知識と技量があるという事だからな。

 まだ料理が出てきている訳でも無いが、気づけば俺は既に料理の味に期待していた。



  ......................................................



 それから、ミキの使っている魔道書を読みながら待つこと数十分。

 俺からすればかなり簡単な内容だったので、この魔道書を読む事はあまり暇潰しにもならなかったが、一通り読み終わったのと同時に丁度ミキが料理を終えた様だ。


 料理が盛られた皿を乗せたトレーを持ってキッチンから戻ってきたのだ。


 ちなみに魔道書の内容を眺めていた時間は、細かく言えば三十分ほど。

 内容は全て理解して記憶している。

 これからはこの魔道書を読まなくてもミキに魔法学を教えられる。


 「お待たせしました! お口に合うか不安ですけど、気に入って頂けたら嬉しいです!」


 そう言いながら、ミキは完成した料理が盛られた皿や箸を机に並べていく。

 俺の目の前の位置に二枚の皿が置かれた。

 ミキの分もあるので、合計で四枚の皿が机に並べられた。

 ミキの皿に比べ、俺の皿には倍ほどの料理が盛られている。これは彼女の心遣いなのだろう。

 ただ……かなり量が多いので、食べ切れるかはわからないが。


 片方の皿には角切りにして、炒めて塩コショウを振りかけたジャガイモや、茹でたブロッコリーが添えられ、茶色のソースがかけられている豚肉が盛られており、もう片方の皿には細かく刻まれた炒り卵とネギなどが入った米が盛られていた。


 かなり本格的で料理の出来栄えも良く、美味そうな匂いも漂ってくる。

 食べる前から明らかに美味いであろう事が判る。


 「ありがとう。早速頂くよ」


 米が盛られた皿を手に取り、一口分を箸で口に運ぶ。

 味付けに使われていた塩や醤油の味が(ライス)や野菜と合わさり、絶妙な味わいが口の中に広がる。

 一言で言うと……物凄く美味い。

 料理店のメニューとして客に提供しても恥ずかしくない程の腕前だった。


 「どうですか……? 時々作っている料理なので、味は悪くないと思いますが……」


 俺が(ライス)を一口食べた様子を見て、ミキが少し不安げな表情で感想を求めた。


 「あぁ、すごく美味しいよ。毎日の食事がこれぐらい美味いなら幸せだな」


 率直な感想だ。お世辞でも何でも無く、本当に美味い。

 何も知らずに食べたなら、十七才の少女では無く一人前の料理人が作ったと言われても信じられそうだ。

 まぁ人間の一人前の料理人が作った料理など食べた事はないけど。


 「そ、そうですか!? そこまで褒められると恥ずかしいです……」


 ミキが少し赤面して照れる。

 多少の自身があったとは言え、ベタ褒めされれば当然の反応だろう。


 「肉料理の方も美味しそうだな。こっちも食べてみるよ」


 今度は薄く数枚に切られた豚肉を一枚、箸で取って口に運ぶ。

 ソースは玉ねぎやキノコを煮て赤ワインやソース等を加えたものだった。

 やはりこちらも美味い。


 「うん、こっちも美味いな。かなり料理の才能があるんじゃないか?」


 「有難うございます。でも才能では無く、何回も料理を重ねてきたから上達したんだと思います!」


 「そうか? 努力しても十七才でこの味はなかなか難しいと思うぞ。でも、本当に努力でここまで上達したなら、魔法も同じように上達できる筈だ」


 もちろん魔法理論を覚える事が先なのだが、実際に魔法を使うのにも料理と同じで慣れと経験が必要なのだ。

 努力でこれ程料理が上手になったのなら、魔法も努力で人一倍上達できるだろう。

 ミキは魔法理論はまだ理解していないところも多いのだろうが、実技の方はかなり才能がありそうだった。



  ......................................................



 それから現在。

 二人共食事を終えて、ミキが食器を片付けたところだ。


 「そういえば……君は何の属性を持っているんだ?」


 魔法を扱う上で特に考慮しなくてはならないのが『属性』という要素だ。

 自分の属性と一致した属性の魔法が一番極めやすいので、大抵の場合は自分の属性と一致した魔法を優先的に覚える事が多い。

 逆に、自分の属性と反対の性質を持つ属性は一番扱いづらい。自分の属性と逆の属性の魔法を覚えられる者はまずいないだろう。

 ミキに魔法を教える上では、彼女が何属性かを知っておく必要がある。


 「私は風属性ですよ。ちなみに魔法学校は生徒の持っている属性毎に、それぞれの棟に分けて授業を受けるんです」


 風属性か。水属性の次ぐらいに人数が多い属性だな。

 そして……なるほど、棟がいくつかに別れていたのは属性分けの為か。

 授業内容もそれぞれの棟の生徒の属性に合わせて変わっているのだろう。


 「あっ、クロトさんのは何属性ですか!? 私、とても興味あります!」


 ミキが期待の眼差しを向けて言った。

 多分、自分と同じ属性なら親近感が湧くという理由で問いかけてるのだろうが……。

 残念ながら俺は風属性では無い。

 人口の非常に少ない闇属性だ。


 「俺は闇属性だよ。あまり同じ属性を持つ人がいないんだ」


 「ええっ、闇属性!? 意外です!」


 闇属性の者は一般的に暗い性格のイメージや狡猾な性格のイメージが強い様なので、俺のようにごく普通に他人に接する者が闇属性持ちなのは意外性が強いのだろう。


 だが、そういった闇属性の者へのイメージは全て他の属性持ちの者につけられているだけなので、実際はそういう性格とは限らないのだが……。


 「闇属性の方はあまり優しいイメージは無かったのですが……クロトさんを見る限り、そのイメージは偏見だったようですね」


 やはりミキにもそういった偏見があったらしい。

 誤った見解が解けて良かった。あまり確信の持てないイメージは持つべきでは無いからな。


 「では、そろそろ私はお風呂の用意をしてきますね」


 一瞬だけチラリと時計を見たミキが言った。


 「いや、俺はシャワーを使うよ。流石に同じ湯に入るのは少し抵抗があるだろう? それに、俺は流れる水の方が好きだからな」


 流れる水が好き……というのは嘘だが、これまでの流れから察するに、こういった口実をつけた方が断れそうだからな。


 「えっ? いえいえ、別に抵抗なんてありませんよ? でもクロトさんがシャワー好きなら使って頂いても構いませんよ。

 あっ、タオル等は風呂場に用意してありますので!」


 「あぁ、ありがとう。じゃあ先に浴びてくるよ」


 ……俺を家に招いた時から思ったが、この少女はこういった事を気にしなさ過ぎでは無いか……?

 まぁ、それほど純粋だという事なのだろう。

 良い所でもあるが、同時に悪い所でもある。

 長い年月を生きてきた俺と違って、ミキはまだ十七才。


 悪い心を持つ者がいる事は知っているが、それに対する危機感が充分に備わっていないのだと思う。平和の中で生きてきた者だから仕方のない部分はあるが。

 お節介ではあるけれど、大人になるまでにあらゆる知識や人生経験を身に付けて上手く生きていける様になって欲しいものである。


 そんな事を考えつつ、俺はリビングから風呂場へと向かうのであった。



  ......................................................



 それから俺はシャワーを浴び、ミキに魔法理論を教えている内に時間が経過し、就寝時になった。

 今日はお互い、そろそろ眠りにつくことになった。


 現在、ミキは自分の部屋で、俺はリビングに借りた敷布団を敷いて寝ようとしているところだ。


 人間界に来てまだ三日間という時間だが、人間としての生活に大分慣れてきたと思う。


 様々な魔族生命体や人間との関わりが、俺をこの世界に馴染ませたのだろう。


 これからも多くの人間と……出来れば魔族生命体とも関わりを持ち、人間界での生活を充実させていきたい。


 そして……この人間界であらゆる事を体験し、魔界では味わえない楽しさを知りたい。


 この三日間だけで、様々な楽しい体験が出来た。

 人間の寿命は短いが、寿命が尽きるまでに人生を充実させるのは案外難しくも無いだろう。

 これから騎士団への入団や、魔法学校への入学をする事も楽しみの一つだ。

 何しろ、騎士団の兵士も魔法学校の生徒も、人数が多いので、非常に多数の人間との関わりが予測できるからな。


 そうして暫くの間、これから起こるであろう楽しい出来事を考えつつ、眠りにつくのであった。


 しかし――この先、既に魔界に誕生した魔王により齎された厄災が人間界にも影響する事を、この時の俺は知る由も無かったのである。

途中から飯テロっぽいですね。

……え? 現在リミアは何をしているのかって?

何をしているんでしょうね……(すっとぼけ)

残念ながら、まだしばらくリミアの登場はありません。

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