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退屈した魔王は勇者になる様です。  作者: ナミ73
2章:セインガルド騎士団入団編
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8話:魔法学校の存在

今回は戦闘シーン無しです。

おそらく入団試験まで平和的な回が続くと思いますw

  〜人間界〜


 セインガルド王国に到着し、宿屋の一室で眠りに着いた翌日。

  朝の八時頃、俺は眠りから目覚め起床する。

 

「朝か……今日は良く眠れなかったな……」


  昨日の夜は、魔界にやり残したことが気がかりとなり、なかなか寝付けなかったのだ。

  結局、睡眠に入ったのは眠りにつこうとした数時間後になってしまい、それが今日の目覚めの悪さに反映された。

 いや、目覚めのいい朝など今までであったかと言われれば……無かったな。

  そもそも魔王の頃は睡眠は必要無かったので、暇な時間に嗜みの一つとして睡眠を取った時にしか目覚めの苦痛を体験する事は無かったのだが。


  ……それにしても、魔界の者達には申し訳無かったな……。

  せめてやるべき事を先にするべきだったか。

 まぁ新たな魔王の誕生の準備ぐらいはしたのだが……もしかするとそれは寧ろ魔界の災いに成りうるのでは?


 恐らく、現在新たな魔王は俺の力の一部を継承しているだろう。

 その様な存在が、善悪の見分けも付かずに暴威を奮ったら?

 

 ……恐らくは、魔界の平和は間違いなく乱されるであろう。

 いや、しかし魔界には『魔王』なる存在がどうしても必要なのだ。

  魔界の魔族生命体達は統率者無しに放っておくと、いつ再び種族間戦争を始めるか解らないのだから。

 

  しかし一度転生してしまった以上、新たな魔王が上手く魔界を統率してくれる事を願うしか無い。

  だが逆にその魔王が邪悪なる者だったら……?

  その時は俺が責任を持ってその脅威を消し去らなければならない。……だが、どうやって?

  記憶や戦闘力が残っているからと言って、魔界に戻る手段は無い。それに、今更魔界に戻った所で、人間になった俺に新たな魔王を倒す力はあるのか?


  そんな不安が深夜まで頭を過ぎっていたのである。

 俺が現在一番望んでいることは……せめて現在の魔界の様子を知りたい。

  魔界の平和が乱れていない事を確認したい。

 だが叶わぬ望みだろう。

 今更考えてもどうしようも無い。


 それに……折角人間界に転生したのだ。

 魔界で半永久的な命を持っていた頃とは違い、人間の身体では寿命は限られており、その寿命が尽きるのは短い。

 短い人生の間、人間界での人生を満喫しよう。


 そう思考を振り切り、一抹の不安を払拭した俺は身支度を完了させて宿を離れ、昨日同様セインガルド王国の内部を歩き始めた。

 

  今日の目的は、この王国に住む魔法使いの居場所を探ること。

 騎士団入兵試験までに魔力操作の習得は間に合いそうに無いが、どうせ現在は暇なので、試験前に魔法使いの居場所だけは突き止めたかった。

 

 だが、リミアの様な『魔力感知』スキルは所持していない為、ここの住民に聞き込みを行う事にした。

 大まかな居場所だけでも把握出来れば良いのだが……。



  ......................................................



 その日の午後二時頃。

  俺は数人の住人に聞き込み、魔法使いに関わる有益な情報を聞き出せた。

 

 どうやらこの王国には『魔法学校』という学習施設があるらしい。

 『学校』という建物は魔王城にあった本で見た事があった。

 簡単に言えば大人数の人間が大型の建物内で教育者から学習を受けて知識を得るための施設だな。

 

  普通、『学校』というものは言語学や数学等を学ぶものだが……『魔法学校』は更にあらゆる分野の魔法知識を教授している様だ。


 生徒の年齢は十四〜二十一才で、教員は魔法を教授する実力の備わっている者であれば年齢を問わないのだそうだ。

 驚くべき事に、実力があれば子供でも教員になれるらしい。

 まぁ魔法の習得は決して簡単なものでは無いので、子供が教員相当の実力を身に付けられる可能性は極めて低いのだが。


 ここで問題なのは、入学の場合は魔法学専門の学習設備費などの都合上、入学費や学習費は通常の学校よりも格段に高くなる事だ。

  大体の場合、入学出来るのは貴族かそれに匹敵する程の富を持つ平民ぐらいになるらしい。


 だが……俺にも入学出来る可能性がある様だった。


  セインガルド王国は、魔法を兵力向上に利用できると考えており、頭脳・実力共に優れた騎士団の兵士には魔法学校への入学を推奨していると言う。


 ただ、魔法とは普通の教育水準では話にならない程高度なもので、今まで入学させた兵士の中でまともに魔法を覚えられた者は一人もいないらしい。

  何しろ、魔法を扱う手前の『魔装』の習得すら高難易度なのである。

 

 なら、入団試験の内の筆記試験は魔法学校の筆記試験よりもレベルが低いのでは無いか? とも思うだろうが、そういう訳でも無い様だ。

 入団試験の筆記試験でも、高度な魔法理論は当然の如く出てくる。

  今まで入団試験に受かってきた兵士達もその試験に受かっているのだ。

  では、何故魔法を覚えられる者がいないのか。


 その答えは単純で、魔法を知識として解っていても、実戦に使える様にするのは困難だからだ。

 筆記試験と違い、高度な魔法理論を用いて魔法を構築するのは並の人間が簡単に出来るものでは無い。

 単純に知識があるだけでは駄目なのだ。

 その知識を実戦に活かして扱える才能も必要で、その才能の壁を超えられる者は少ない。


 まぁ結局俺が言いたいのは、騎士団兵士として優秀な人材と認められた場合、王国からの推薦で魔法学校への入学が可能という事だ。

 国からの推薦ともなれば、試験など無しに入学が確実だろう。


 ただ、今まで何人もの優秀な頭脳を持つ兵士が魔法を習得できなかった経歴から察するに、王国は『入学を推薦する者の頭脳の水準を更に上げていく必要がある』と考えるだろう。


 ともなれば、入団試験はますます手を抜けなくなってきたな。


 魔法理論等を完璧なまでに解答できれば、頭脳の方は確実に水準を超えられるだろう。


  まぁ俺がこの国の住人だったなら普通に試験を受けて入学出来たとは思うが、生憎この国の住人では無いので試験自体受けられない。

 結局、残念ながら少なくとも今の俺は王国を介しての入学以外に方法は無いという事だな。

 

 さて、まだ昼時で時間もある。

 折角だし、その魔法学校というのを一目見てみる事にしよう。



  ......................................................


 

 それから王国内を歩くこと数時間。

  セインガルド王国内部の面積は広大で、『高速移動』スキル無しでは移動するのも一苦労だ。

 王国内で『高速移動』スキルを使うと住人に衝突する危険性があるので、無闇に使用する事は出来ないのだ。

 何しろ……このスキルには方向転換が難しいという大きな弱点があるのだ。


 結局のところ、徒歩で長い距離を移動した俺は現在、王国の南東部に位置する街の中心に建てられた『セインガルド魔法学校』に訪れていた。


  大分距離の離れた地点からも、魔法学校の一片は見ていたのだが……学校全体が見渡せる位置まで来ると、その大きさが更に明らかになった。


「ほぅ……これは大きいな……。普通の平均的な学校の大きさの数倍はあるぞ……」


 それはまるで巨大な城のような学校。

 いや……もはや『学校』と呼ぶよりは『要塞』と呼ぶ方が正しい程である。

 顔の角度を限界まで傾けて見上げなければ建物の頂点が見えないほどだった。

 

 かつての住処であった『魔王城』も、魔界のあらゆる建造物の中でもかなりの大きさを誇っていたが、この『魔法学校』もそれに引けを取らぬ大きさであった。


 話には聞いたが、どうやらこの学校には全校でおよそ数千人の生徒と数百人の教員が在学しているらしく、それに伴った大きさとなっている様だ。

  それだけでも、普通の学校との格の違いを充分に表しているのだ。


  そして、学校の本棟と思われる建物から伸びた廊下が他のいくつかの別棟と連結しており、複雑な構造を成していた。

  おそらく、授業の内容毎に棟を移動するのだろう。


 ますますこの学校に興味が湧いてきた。

  早くこの学校に入学して魔法を習得したいものである。


 校舎内を見ると生徒の姿が見られる……と思ったのだが、残念ながら今日は休校の日だった様で、校内に人気が無い。

  校門は閉まってはいないので、教員達が校内で仕事をしているのかもしれないが……。


 校内の様子は、実際に入学した時の楽しみになるだろう。

  入学出来ればの話だが……。


 さて、ここまでの移動に大分時間を費やしてしまった。

  宿に戻るまでに夜になってしまいそうだし、今日はここで引き返すとするか。

 そう考え、校舎から目を離そうとした時だった。


「あの……この学校の関係者の方でしょうか?」


  突然、何者かに背後から声を掛けられた。

 少し驚き声の聞こえた方に振り返ると、十七才程の少女が立っていた。

 白い艶やかな肌を持ち、黒色の髪に紫色の瞳が特徴的である。

 髪や瞳の色から、暗いイメージがあったが、綺麗な容姿をしていた。

 

「いや、関係者では無いさ。だけどいずれ入学するつもりでいる。

 今日はその学校の下見に来たんだ」

 

 本当の事ではあったが、部外者が学校の内部を真剣に眺めている様は少々怪しかったかもな……。

  一応、剣だって持ってるしな。


  「そうだったんですか。真剣に校舎内を眺めていたので……つい気になってしまって」

 

 くすっ、と少し笑って少女が納得する。

  怪しまれずに住んだのは幸いだった。


「入学って事は、お兄さんは貴族の出身ですか?」


 入学者と聞いて親近感が湧いたのか、少女はまた質問をしてきた。


「いや、貴族の出では無いし、まだここの国民でもない。

  でも入学できる方法はあるから、いずれは生徒としてこの学校に通うつもりだよ」

 

  まだ入学は確定では無いのだが、少女の親近感を失わせない様に、あたかも入学が確定したかの様に言ってしまったな。

 まぁ入団試験で結果を出せばほぼ確定か。


「えっ? 珍しい……別の国から来たんですか?」

 

 入学者の殆どはセインガルド王国の国民なので、国外者の入学はかなり珍しい様だ。


「あぁ。ただ、国というより町だな。

 セインガルド王国と比べるまでもない小さくて知名度の低い町だよ」

 

「へぇ……町や村の人で魔法のお勉強が出来る人なんて初めて見ました!

 私なんて、ここの国民なのに魔法理論は全然わからなくて……」

 

 しょんぼりとした表情で彼女が俯く。


 確かに、魔法理論は多少の勉強で理解できるものでは無い。

 セインガルド王国には魔道書なんかが売られているそうだが、物凄く高価らしい。

 少なくとも、俺の今の所持金では全く届かない金額だ。

 余程の金持ちでないと、まず手にできない貴重品だろう。

 

「まぁ、気持ちは解るさ。魔法を扱うのは中々難しいからな。

 でも俺は魔法理論は得意だ」


 そりゃ数千の魔法の知識は持ってるし、学校の魔法理論など簡単過ぎるぐらいだ。

 

「本当ですか!? お兄さん頭良いんですね!

 もしよろしければ私に魔法理論を教えて頂けませんか!?」


 ……え? いや、確かに人に教えるだけの知識はあるのだが……それ以前に、見ず知らずの男にそんなに不用心に親しくして良いのだろうか?

 どうやら暗いイメージの見た目によらず、割と積極的な性格の様だった。


「おいおい。俺と君はたった今知り合ったばかりだろう? だったら学校の教員にでも教われば……」

 

「先生じゃダメなんです! 魔法学校の先生はクセの強い人が多くて……」


 俺の台詞を遮り、少女は言った。


「それに、私は魔法はまだサッパリですけど、固有スキルを持っているんです!

 貴方が悪い方じゃあ無い事はとっくにスキルが判定してくれてます!」


  固有スキルか。普通のスキルと違って、誰でも覚えられる可能性が無く、その固有スキルを所持している者のみが扱える個人専用のスキルだ。


 俺が魔王だった頃にも固有スキルは色々と持ってたな……五十個ほど。

 人間となった今は当然使えないのだが。

 話から察するに、この少女の固有スキルには相手の善悪を判断する効果があるのだろう。


「そんなスキルがあるのか……まぁ君が問題ないなら教えてもいいけど。

  どうせ俺はこれから暇だからな」


 俺はやれやれ、と言った仕草で了承する。

 すると少女は大変喜んだ様子で歓喜の声を上げた。


「本当ですか!? やったぁ!

  では、私の家まで来てください!

  暫くは両親は家にいないので大丈夫ですよ!」


  家!? いやいや、幾らスキルが善人と判断したからっていきなり家に連れて行くか……?

 家の関係者どうこうの問題じゃあないと思うのだが……。


  ……まぁ、わざわさ両親の不在を教える所を見る限り、彼女の固有スキルの善悪判断能力は相当なものなのだろう。

  ここまで期待されておいて断る理由も無いし、言葉に甘えて付いて行く事にしよう。


「わかった。少しの間お邪魔するよ」


「いえいえ、お邪魔なんてとんでもない!

 お勉強教えてくれるなら有難いです!

 あっ、自己紹介がまだでしたね……私はミキ=バイオレットと言います!」

 

  少女は嬉しそうに自己紹介をする。

  まぁこれからお互い少しの付き合いになるのだ。自己紹介はしておくべきだろう。


「俺はクロト=ルミナだ。少しの間よろしくな」


  互いに軽く自己紹介を済ませた後、俺はミキという少女に同行し、彼女の家を目指すのであった。



  ......................................................

 


 それから歩くこと数十分。


「着きましたよ! ここが私のお家です!」


 どうやら少女の家は魔法学校からそう遠くない位置にあるようだ。

 だが……。


「これが……君の家か? 物凄く大きいな……」


 そう……彼女が指差しで示した家は、一軒家としてはかなり大きい建物だった。

 当然、魔法学校や魔王城程では無いものの、少なくともセインガルド王国内で見たどの宿よりも大きかった。


「そうですよ? さ、遠慮なく入って頂いて結構ですよ!」


 さも当然の様にミキは言うが……これがセインガルド王国の貴族にとっては普通の事なのだろうか?

 この国の貴族達の豪奢な生活ぶりは俺の想像を遥かに超えているのかもしれないな……。


  そして、少女の案内で家に入り、リビングと思われる部屋の一室に入っている。


 机と椅子を用意して貰い、俺は用意された椅子に腰掛けた。

 

  更にミキは魔道書や筆記用具を持ってきて、勉強の準備をする。


 その作業は中々早く、まるで接客業に手馴れた従業員の様だった。

 その様は……リミアの働きぶりに少し似ていた。

 こちらの世界に来てからも、何故か良くリミアの事を思い出す。

 やはり俺はまだ後悔しているのか……あるいは別の感情を持っているのか?


 そんな事を考えている内に、ミキは準備を済ませた様だ。

 

「えへへ。じゃあ早速教えて頂けますか?

 学校でもあまり成績は良くないので、物覚えは悪いかも知れませんが……」


 照れくさそうに少女は言う。

 それにしても……学校で魔法を教わるより先に、魔法を教える側になるとは思わなかったな。


 というか、もしこの少女に学校よりもわかり易く教えられたなら、俺は寧ろ教員より実力がある事になるよな……?

 まぁ短い生の中で魔法の知識を豊富に取り入れた人間よりも、数千の魔法の知識がある俺の方が実力があるとは自分でも思うけど。


「大丈夫さ。一つ一つよく理解していけば解けない問題は無いからな」

 

 こうして、ミキという少女との勉強会(?)が始まるのであった。

やっとクロトの魔法の知識が役立つ回が書けた…。

17才の女性を少女と言っていいのかどうなのかは微妙なラインですが……まぁ少女という事で見て頂けると有難いですw

入団試験までの暇は多分勉強会で埋めると思います!






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