第13話 店に来たのか
その頃、魚取扱い店ではアンドレの祖父が、突然開いたドアに驚いていた。
「おや、どうしたんだい。今日は一日休むんじゃなかったんかい」
アンドレは背負っていた荷物をカウンターに下ろすと、着ている白いシャツの腕をまくる。
「そのつもりだったけど、用はもう済んだから早めに戻ったんだ。おじいちゃん、今日はありがとう。あとは俺がやるからもういいよ」
「そうかい。こういう商売じゃ、なかなか休みが取れないだろう?今日くらい、一日ゆっくり休んでもいいんだよ。わたしも久しぶりに魚達に会えて嬉しいしの、気にせんで今日は休んでいいよ」
「ありがとう。ただ俺もやりたいことがあって……あー…そういえば、今日は来客とかって…あった?」
アンドレは後頭部をかきながら、その場で落ち着きなく歩き回る。
祖父は、キョトンとした顔でアンドレを見上げる。
「ああ…ふあっはっは、なるほどのう〜…昨日のお嬢さんのことなら、開店早々に来おったよ」
「来た?イリビアが?何の用事で来たんだ?」
「ほう、あのお嬢さんはイリビアさんと言うのか。彼女は水草を、水の中に入れられる植物を探しに来ていたよ。つくったビオトープに入れられる植物はないかとね」
「それで?その後は?」
「わたしが、幾つかおすすめしたものを購入していったよ」
「他には何か困ったことがあるとか…言ってなかった?」
「特には言って無かったがのう」
「そうか…」
アンドレは祖父に背を向けて、カウンターに置いた荷物の荷解きを始める。
「…そういえば、イリビア嬢はアンドレに会って何か話したそうにしておったな。ここに来たときにも、アンドレはいるか聞いてきたしの」
祖父の言葉に、綺麗な形のアンドレの目が少し嬉しそうに見開かれる。
「あー…それなら…まあ、また店に来たときにでも話してみるよ。あっ、そういえば相談したいことがあってさ、今度入手予定の外国魚のことでさ——」




