虚影録 29話 生きた森
自然って良いよね
───世界樹の継ぎ木の森───
その森は生き生きとし、
生物達は活発に跳ねたり、狩りをし動き、
植物達は巨大でみずみずしく、どこを見渡してもそこには生命が溢れていた。
一見は生き生きとし、どこよりも生きているような森だが、
その自然の中にそこから不自然を感じる。
それは言葉で言い表せないような……
ほとんど、”勘”のようなものであった。
奏架はそう、
違和感を持ちながらもこの森を伊月達と進んで行く。
奏「さっき伊月さんが魔獣がひしめいてるよ~
って言ってたけどそうでもなくないですか?」
伊「この森は名前の通り、
世界樹の継ぎ木が有ってね。
そこを中心に広がっているんだけど、
ここまだ浅瀬だから、
魔獣が居たとしても温厚な奴だろうね~。」
奏「というか世界樹ってなんですか?」
伊「世界樹ってのは、
この世界を象徴する大木のことさ。
今は事情があって行けないけどね。」
奏「へぇ~」
そう、奏架達が談笑をしながら歩いていると、
森の雰囲気がほんの少しだけ変わっていく。
奏「なんか、少しだけ霧がかってきてません?」
黒「確かに、さっきより少しだけ視界が悪いな。」
さらに森の奥へと行きながら、
伊月が能力で辺りの情報を表示する。
伊「木がここまでになるほどの蒸気を出している?
前に来た時とかなり変わってる?
杉さん、一応何かが来た時に対応できるように、
勇者さんの近くに。」
杉「わかりました。」
伊「奏架君と黒嶺ギルド長は辺りの警戒を。」
奏「はい。」
黒「分かった。」
木々は生き生きと大きな呼吸をしている。
木々…と言っていいのだろうか、
まるで一つの生物のように同じタイミングで、
木は息をしていた。
動物は森の深部へ行くほどに減っていき、
代わりに魔獣が増えていった。
奏架達は最低限の体力消費で、
ドンッドンッ
と素手で殴り飛ばしていく。
どうやらこのパーティーには脳筋しかいないようだ。
奏「なんか、思ってたより弱くないすか?…」
黒「それは…まぁ、奏架が成長しているからじゃないか?」
奏「おぉ!やったー!」
伊「そんな警戒を緩めないでください。
一応この森は魔王軍四天王とやらの領域ですから、
昔は温厚でしたが今はどうか分かりませんから。」
奏「ん…?四天王?
四天王ってあれ?魔王の一個下のめちゃ強い?
あの四天王?…」
黒「ありゃ、言ってなかったか、
言い忘れていたがここは四天王最強の
バウム・フシオンの領域だぞ?」
奏「最強……最強かぁ~…
勝てるかなぁ…」
黒「ここでへばっちゃぁ、
魔王なんて無理だからな。」
伊「ここが終われば後は新参者の、
弱っちい奴だけなので安心してください。」
奏「よ…弱っちい?…」
杉「…俺達にはまだわからないよなぁ………」
そこからある程度進んで行くと…
視界がいきなり晴れ、
神々しいまるで絵画のような光の差し、
川が流れ、池があり、
その中には魚たちが住み、
辺りの広場には鳥や兎などの動物達が住んでいた。
小さな家があるが今は植物が根を伸ばし、
ボロボロであった。
そのような庭園のような場所が広がっていた。
そのような場所の中心には大きく巨大な、
今までに見たこともないような途轍もなく大きな……
樹木が立派に立っていた。
その樹木は心臓のように脈を打っていた。
そのリズムは今まで通ってきた道の木々と同じリズムだった。
───バウム・フシオンの庭園───
奏「綺麗~…
まるで絵画の中みたい。」
杉「魔力密度が減った?」
ノ「なんだか気分が悪い……」
黒「伊月…これはどういうことだ?
聞いていた情報と違うんだが。」
伊「300年でここまでとは…」
また、その巨大な樹木が波打つ。
何も仕掛けてこない…
伊「とりあえず、この樹木を回ってみましょう。
警戒は怠らないようにお願いします。」
黒「おい!伊月!
前渡された情報だと人型だと言ってたじゃないか!
これは一体全体どういうことだ!?」
伊「声を荒げないでください。
今彼女は寝ているんです。
今起きたら私達は…
壊滅させられる可能性だってあるんです。
それとその件は言ったはずです。
彼女は植物だと、前は苗の状態だったんです。
今は300年が経ってここまでなったんですよ。」
と伊月は小声で伝える。
そう情報を渡しながら伊月達が樹木を回ると…
そこには巨大な琥珀のような物が木に埋まっていた。
伊「これは…
中に本人が居そうですね。」
そう言われ、奏架達がよく見つめると、
その中には人型の植物のようなモノが見えた。
奏「苗だったならこの木自体になってるはずなのに、
なんでこの中に…?」
伊「言い方が悪かったですが、
彼女自体が苗ではなく、
彼女が苗と融合したんです。
元々この木と彼女は別の存在。
おそらくこの琥珀から外に出せば彼女は元に戻る。」
伊「一旦離れて作戦を練りましょう。
このまま戦うとおそらく全滅します。」
そう言われると奏架達は一旦その空間から抜け出して行った。
奴は四天王の中でも最強。
ここはこの俺が、
あいつがやられたら逃げるぜ




