虚影録 26話 罪の代償
なむなむ
ト「オマエ侯爵様ぁぁぁーーッ!!
オマエ様ぁぁーッ!!」
そう、処刑場の観客席の下の牢から叫ぶトナリ。
ワ「…………」
何も言わず、背を向けるワタシ。
ゼ「今までありがとうございました。
オマエ侯爵様……」
そう、諦めたように今までのお礼を言うゼエイン。
奏架と黒嶺がその場から去ると…
神職と処刑人が戻ってくる。
処刑人がその手の斧を振り上げる。
そして振り落とした。
ザジュァッ。
観客達が歓声を上げ、
更にゴミが投げられる。
オマエ侯爵の頭や体に当たる。
トナリはもう、
叫ぶのを止め。
ワタシは静かに泣き、
ゼエインには怒りが湧いていた。
そんなことも知らずに、
観客達の横暴は止まらなかった。
そして処刑が終わり、
片付けをし始めた所で、
奏架達は帰って行った。
この、気色の悪い現実から逃げるかのように……
───旅館内、会議室───
伊「奏架君はどうしました?」
黒「それは……そのだな、
処刑場が気持ち悪くて今は…
吐いてる……」
伊「…まぁあれは仕方ないですね。
それで新たに得た情報とは?」
黒「それがだな、
魔王と戦った事があるお前なら分かるかもだが、
魔王を強化する武器と道具を魔族が持っているそうだ。」
伊「つまりは今、魔王を封印から解いたら、
その道具とやらで魔王が手に負えなくなると……」
黒「話が早くて助かる。
つまりはそういうことだ、
だから魔王と戦う前に魔族側の土地に行き、
その道具と武器を破壊、もしくは封印しなければならない。」
伊「どうしましょうか……
それだと魔族を倒し終えてから、
直ぐに魔王の封印場に行くことになりそうですが…
私達も待機せずに行った方が良さそうですね…」
黒「できたら、
ノア殿と伊月は待機して欲しいが、
距離的に時間に間に合わそうにないのがなぁ。
しょうがない…今なら魔族の質も下がっているだろうから、
ノア殿と伊月も来てもらうか……
かなりの連戦になるかもしれないがすまないな。」
伊「終わったら私に……
”休み”をくださいね???」
黒「お、おう、分かった。」
一方その頃奏架は。
奏「うぇっ…ぼうぇ…」
虚『吐き過ぎだろ…
まぁあれは仕方ないだろうけど、
流石に耐性なさすぎ。』
奏『今の僕ならあんな奴ら直ぐにやれるのに…
やれずに見逃さないといけないなんてッ……』
虚『僕ならあんな事になる前に逃げるかなぁ。』
奏『僕は今意見を聞いてるんじゃなくて、
同意して欲しいんだけど……
なんであんなのがのうのうと生きてるんだよ…』
虚『強者が弱者を守るから、
弱者はそれを自分の力だと勘違いする。
その結果があれだ。
この世界には罪人に人権が無いに等しいから、
起きた現象でもあると思うがね。』
奏『その強者を倒せばあいつらも、
表にはあれを出さないのかッ!?
虚天ッ!?』
少しキレながらそう虚天に問いかける。
虚『倒したとて、
すぐには本性を圧さないだろうね。
あーいうのは目の前で同じような奴を殺さないとね。
それとその強者は力が強いとは限らないし、
権力だけの雑魚の場合もあるさ。
それにその強者が良いやつだったらどうするんだい?
君には殺せないだろう?』
奏『殺せるさ!
多くの可哀想な奴の為なら!』
虚『その思考がその強い奴の思考さ。
自分の正義を掲げ、自分の思うがままに、
その正義を振るう。
僕はそういう自称正義マンは嫌いだね。
それより自分のやりたいことをやる人の方がまだいい。』
奏『あっそ。』
そう、奏架が言い終わると吐き気も止み、
会議室へと戻って行った。
正義マンは嫌いだ。
ただ正義自体が嫌いなわけではない。




