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ソノヘンノ村

南へずっと歩いた場所に、ぽーんとあったなんの変哲もない普通の村。

普通っていうのは別に俺の主観でもなんでもなくて、だからって客観的視点というわけでもない。隣でふわふわ浮いている自称神様がそう言っていたのだ。

とりあえず、ここに身を潜めるということらしいのだが、ここに潜めたいというのならば潜めればいいんじゃないですかねってことでここで異世界一日目を過ごすことに決めたのでした。

ああ、ついでなんですけどね。

この村に入る直前になって、自称神様が茂みに隠れてちょっとこそこそやるわよなんていうからさ、すこーし期待して行って見たら思い出の学生服全部ひんむかれてその辺にいてもおかしくない古臭い服に無理矢理着替えさせられましたとさ。チクショーが!


「ようこそ、ソノヘンノ村へ。私は村長のムラオサと申します」


不機嫌な顔の俺に若干の戸惑いをみせつつも、余所者の俺を愛想よく迎え入れてくれた。

だからって何か返すわけでもないが、とりあえず礼節を重んじて適当に名乗ってあげることにした。


「旅人のギラゴです。本日はお世話になります」


生まれ落ちてすぐぶっ殺しに来るような世界でゴリゴリ怪しい日本ネームなんて名乗ってやれるわけないだろバーカ。

初対面で信頼できるかもわからんやつに名乗る名前なんざ偽名で十分じゃ。


なーんて思っていても、にっこり笑顔は絶やさない。礼儀っていうのは形さえあれば問題ない。中身なんて伝わらないからね。

そんなこんなで宿……の前に飯だ飯。

殺されかけて腹ペコなんでね。たくさん食って力つけないと。

……殺されかけて腹ペコってなんか変じゃね?

そんなこんなで酒場とやらに行き、テーブル席に着くと霊体の女神がようやく話し始めた。


「さて、なにから話しましょうか……なにから聞きたいですか」


「なにからって……何も知らない人間にそれ聞きますか?」


「それもそうですね。ではまず世界観的な部分から教えましょう」


そういうと神様は風景を変化させて……!?


「ちょ……何してんの!? 」


「安心してください。霊体の私と同じであなた以外には見えません。いちいち驚いたり止めようとしたって、この場で浮くのはあなただけです」


そう言われて黙るしかなかった。

この場といっても全て背景に溶け込んで見えなくなっているのだが、それでもそう言われてしまったら、流石に騒いだり止めたりなんてできるはずがないのだ。

神様は風景に映像を転写しながら、説明を始めた。


「利口ですね。では……この世界の名は基本世界006、剣と魔法が栄える、あなたの世界で言うところの異世界というやつです。これから歴史の話をしようと思いましたが、どうせ言ってもわからないので全省略します。以上質問はありますか」


「ないでーす」


今とんでもない侮辱を受けたような気がするが、あえて触れないことにした。

そんなこと気にして話を妨げる方が問題だからだ。


「それでは次に……なにから聞きたいですか」


「何も知らない人間に聞くべきじゃないと思いまーす」


「それもそうですね……では、あなたがこの世界で何をなすべきなのかを……」


「の前になんでこの世界に飛ばされたのかの説明をお願いします」


「……察しついてるんじゃないですか」


「100%とは限らないので」


「……あなたにチャンスをあげたんですよ。異世界に転生し、魔王を倒し、元の世界へ戻るチャンスをです」


てことはやっぱ俺死んじゃったのね。認めたくない……が、認めて前に進まなきゃ……ん?


「元の世界に戻れるんですか!?」


「魔王を倒せばですけどね。……あっ、この世界でなすべきことはそれです」


「生き返りたかったら人殺ししろってことね。はいはい気が向いたらね~」


「気が向いたら……?」


「現代人に人殺しの趣味はないの」


「あの……お客様。ご注文は?」


一触即発の空気を打ち壊す呼びかけと同時に、風景が元通りになる。

ウェイターさんが、こちらを見ている。


「……お金持ってる?」


神様に聞いてみる。


「……洗脳なら」


「ろくでもなーい」

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