神様……らしいです
神。
彼女は確かにそう名乗った。
名乗りはした……のだが、そんなことを鵜呑みになんてできるはずもなく、俺はただその場で、か……神?、と呟くだけだった。
「様をつけなさい様を。神、なんですから」
神であることを強調しながら、様付けをしろとおっしゃっている。
しかもこれを、ドヤるでもなく、ルールに厳しい親父顔でもなく、真顔で言ってのけるのだから恐ろしい。
きっと彼女にとって俺は常識のない人間のように写ったのだろうが、神様とあったときの礼儀とか知らんし俺。
「神様でもなんでもいいですから、ちょっと助けてくれませんか? この十字に手足を縛り付けられていて、抜けられそうにないんですよ」
「残念ですがそれはできません」
「なんで!?」
「実体化できる時間は短いんですよ。絶体絶命のピンチは何とかしてあげたんですから、それくらい自分で何とかしなさい」
「無茶言わないでくださいよ!俺みたいな非力な人間がどうにかできるわけないじゃないですか!ほら、どれだけ力を込めたって……」
抜け出せないことをアピールするため、ありったけの力でロープを引き千切ろうとしてみると、なんとあっさり引きちぎれてしまった。
どうしてこんな……と思ったが、よくよく考えれば当然だ。
このロープはさっきの水攻めで水浸しになっている。きっとそのせいで脆くなったのだ。
だから簡単に引き千切れた。
別になにも特別なことなどなかったのだ。
それに気づいてすぐ、自由になった手を使い足の束縛を解く。
やっぱりそうだ。
わめいて損した気分になってきた。
「はぁ……」
徐々に半透明になっていく神様にため息をつかれたような気がするが、たぶん気のせいだろう。
「それで、半透明な神様はいったい何しにここにきたんです? まさか、あの状況から助けるためだけにきたって訳じゃないですよね?」
「当然です。私はあなたのナビゲーターとしてここへ来ました。何も知らないあなたを導くために。まずは、ここから南の方へ移動しましょう。重要なことはそこで話します」
「なるほど……南ってどっち?」
「こっちです」
神様が指を指す。
教えてもらえたはいいものの、土地勘も糞もないっていうので、だからなんだという感じではあるのだが、あえて黙っておくことにした。黙っておかないと何されるかわかったものじゃないからだ。
というわけで、俺は謎の神様?と一緒に南?へ歩き出すのだった。




