23「反乱!」
「こ、これは……!」
女王セラが驚くも、すかさず持っていた杖を振るい、太い光のビームを放ってランドが変身したナイトメア・ドラグーンを押し倒す。後ろに立っていたほかのナイトメア・ドラグーンもまた、将棋倒しになってしまった。
「じょ、女王様……強い!」
洋介は、セラの強さに驚く。いきなり現れた黒竜に驚いても、すかさずビームを発射できるその胆力の強さにも驚いた。さすが女王様……と感嘆していた。
「甘く見られたものね、そんなオモチャで私とやりあおうなんて。それは魔王軍が人間を魔物に変えるために作った代物。こんなの、私は三十年前にいくらでも戦ってきていたわ!」
「く、くそ……!」
倒れたランドが起き上がるも、女王はすかさず飛び上がる。
「そして、対処法も知らないわけではない!」
指先からレーザーを発射し、額に貼りついている仮面を射貫いて割る。すると、割れると同時に体がギチギチと音を立てて元の人間に戻ってしまった。
「な、なんと……!」
「そんな代物で私に歯向かおうなどと、笑止千万! 私は三十年前、勇者一行の一員として魔王軍と戦った者! この程度で私は殺せない!」
おお~っと会場からどよめきが起こる。これではまるで、女王の強さをアピールする会場であった。だが、それで終わる奴らではない。
「フフフ……仮面はまだある……それに、来たのは我々だけではない!」
外でドガアンと爆発音がする。外を見てみると、王城の外でもナイトメア・ドラグーンが暴れている姿が見える。
「……どうやら、本格的に私に反乱を起こしたようね」
「そうだ、革命だよこれは……! あの頃の輝いた王国を取り戻す我々の革命だよ!」
「輝いた王国?」
再びナイトメア・ドラグーンへと変貌したランドが言った言葉に、怒りを抱いた表情をするセラ。輝いた王国? あの頃の、悪事が平気でまかり通っていたあの国が? そう思いながら、杖を握る手が強くなる。
「二度とこのタイクーン王国を、あの時の荒れ果てた国に戻させはしない! 騎士団に連絡し、外の怪物どもをなんとかして!」
女王セラが護衛の騎士たちにそう告げる。その時、壁に立っていた鎧が持っていた剣が放られ、反乱軍の一人……いや、一匹に刺さる。投げたのは……竜人族の女性ユナン。
「なんだあ? 戦か? 戦ならタイクーン王国きっての戦闘民族、竜人族の出番だろ! あー、でも自前の武器がねーや」
血気に逸るユナンの声。それだけではない。竜人族だけではなく、式典に参加した亜人たちや貴族たちも悪徳貴族たちに声を上げ始める。
「お前たちのような悪徳貴族なんかに、女王様の苦労や国を思う心がわかるはずがない!」
「今すぐ消えろ!」
「皆様……ありがたいですが、戦える方以外は今すぐ避難をお願いします!」
女王セラの号令により、騎士団たちよって連れられ会場を出る貴族たち。亜人たちは交戦体制を取ろうとするが……。
「戦える皆様方は、武器庫から武器を取り外の奴らと戦ってください!」
それを聞いて、竜人族は歓喜に湧く。そして、魚人族、虫人族、鳥人族達も戦いの体制を取り始める。それをさせまいと、黒竜に変身した悪徳貴族たちは入り口をふさごうとするが……。
「させませんよ!」
光の輪でナイトメア・ドラグーンたちを縛り、動きを封じる。それを受けて、亜人たちは入り口からどんどん出ていき、武器庫へと走っていく。それを見て、あっけに取られていた洋介も動き始める。
「俺も、行くしかないだろう! えーと、必要なのはペガスス……」
洋介のスライムがぐぷぐぷと音を立てて体を包む。そして、変身した姿は銀色の毛並みを持ち、金色の装飾や鎧を身に着けた、白い羽のペガサス……になろうとしたのだが、変身した姿は黒スーツにボーラーハット、そしてライフルのスタロトだった。
「スタロト!? なんで? ペガスス・スターになろうとしたのに!?」
だが、変身した以上はやるしかない。窓から外へ飛び降り、袖から射出した鎖を使って降りて、ライフルで仮面を狙撃する。スタロトの狙撃力により、仮面は割られ仮面を被り黒竜となっていた奴らはみるみるうちに人間に戻る。
「ヘッ、弱点をわざわざむき出しにする馬鹿がいるかよ」
その言葉はスタロトのものか洋介のものか。そして、それに続くかのように武器を取った亜人たちが戦いに出る。空から矢の大群が降り、仮面を割る。上空にいたのは、弓矢を持つイグルとクーホ。
「鳥人族の伝統的な戦術を、とくとご覧にいれようではないか!」
「親父、鳥人族の弓術は今でも錆びついていないか!? いないだろう!?」
鳥人族の二人が上空から弓矢で応戦すると同時に、地上からはチシャとエルホが自前の水操術『鉄砲水』で仮面を狙う。そして『波乗り』によって黒竜の外皮を駆け上がり、仮面に槍を突き立て割る。
「腕を、上げているようだなチシャ!」
「親父も、衰えてはいないようだな!」
虫人族スティングも負けてはいない。壁に爪を突き立て、壁に貼りついている。そこから、懐から取り出した針を仮面に向けて投げつける。敵に気づかれず、死角からの一撃を叩きこむ。そして、気付かれる前に壁から飛び降り羽ばたいた後、草むらに隠れる。そして、懐から取り出した瓶に入っていた液体を何本かの針につける。そして、地面を走り次々と黒竜の足へと刺していく。すると、黒竜が……。
「な、なんだ……? 足が、動かぬ……!」
「……! チャンス!」
動けなくなったところに、チシャの鉄砲水やイグルの弓矢が直撃する。
「影に紛れる。最小限の動き。これ敵を倒す最大の戦略」
そして、亜人たちの中で一番派手な動きを見せているのは……竜人族のユナン。
「でやああっ! 戦だ戦だぁっ!」
大きなモーニングスターを振り回すユナン。足に直撃すれば黒竜が倒れ、倒れた黒竜の仮面に拳を浴びせて叩き割る。そして、時には黒竜の外皮を駆け上がり直接ブッ叩く。まるで水を得た魚のように、戦場を駆け巡っていた。
「全く闘争本能が滾るねえ! こんな戦、ずーっとなかったもんだからな!」
亜人たちの特異的な戦い方で、反乱軍は徐々に鎮圧されていく。そして、スタロトもまた自前のライフルでどんどん狙撃していくが……突如左腕がぐぷりと音を立てて変化し始める。
「な、なんだァテメエ! 今は俺の時間だろうが!」
(何を言っているんだ、こんな楽しそうな宴に私も参加させろ!)
スタロトの左腕が、バフォーメの腕になる。そしてそこから体が変化していく。まるでバフォーメがスタロトを浸食するかのようにぐにゃぐにゃと歪んだ後、ついにはバフォーメへと変化した。
「フゥ~フッフッフ! やはり動けると言うのは最高だな! さて、やるか……黒雷波!」
バフォーメの手から放たれた黒い雷。それが次々と黒竜へと直撃し、肌を焼き焦がしていく。その肉の焼ける音と匂いを感じて、バフォーメは恍惚に浸る。
「やはり素晴らしい! 特に強大な生き物から感じる匂いはまさに別格! たまらんな!」
だが、そのうっとりした気分に浸る間もなく、腕がぐちゅぐちゅと音を立てて変化していく。それを見てバフォーメは焦る。
「お、おい! まだ少ししか出ていないんだぞ! もう少し、もう少しだけ……!」
(悪いが、私だって戦いたいのだよ)
バフォーメの肉体が黒いスライムに戻ると、今度はシェイドとなってしまう。シェイドもまた戦い始めるが……中の洋介は驚いていた。
(な、なんだよコレ……! わからない、何が起こっているんだ!?)
自分がなろうとしていたキャラとは全然違うキャラに変身しただけではなく、次々と自分の意志に反して勝手にキャラに変化し始める。なぜこんな状況になっているのか? 訳が分からない。自分はどうなり始めているのか? わからない。
(スタロト、バフォーメ、シェイド……! お前たち一体何なんだ!?)
戦うシェイドの中で、洋介はもはや勝手に動くガワにされるがままだった。
一方、式典の会場にて反乱を指揮する悪徳貴族たちを一人で相手にしている女王セラ。数は多く力も強いが、女王にとっては弱点がむき出しかつ戦術も何もあったモノではないため、仮面を割ればすぐに変身は解けるため、ランドは割られるたびに仮面を被り変身する。そんな状況が続いていた。
「諦めなさい、お前たちごときに私は倒せない。こんなオモチャを振り回しているようでは、反乱と言うのも甘いわ」
「ぐぐう……くそう……」
何度目かのナイトメア・ドラグーンへの変身。だが、女王セラの敵ではない。そして、外をチラリと横目で見れば、騎士団たちや亜人たちの戦いぶりによってだいぶ外の黒竜たちも減りつつあった。この戦い、勝利の時は近いと考えていた。
「もう諦めなさい。もはやこの戦いにあなたたちの勝ち目はないわ」
だが、その様子を隠れてみていた人物がいた。
「お母さん、やっぱりすごいね……」
「流石勇者一行の一人だよ」
「ってか、大丈夫なのかよエレナ。足……」
「ま、まだ痛い……」
瓦礫の影に隠れていたのは、女王の子供であるカインとエレナだった。エレナは逃げ出そうとしていたのだが、瓦礫に躓き足をくじいてしまっていた。故に動くことができなくなり、カインと共に瓦礫の後ろに隠れていた。
だが、それを見逃ない人物がいた。ランドが瓦礫の後ろにいた二人を見て、にぃとドラゴンの顔をゆがめる。
「フフフ……オレの勝ちだなセラ!」
「何を言って――」
その言葉と同時に口から炎を吐く。そして、その方向にいたのは、カインとエレナ。それを見たセラは、思わず体が動いていた。爆炎が上がり、煙が晴れた先にいたのは……倒れていたセラだった。
「お、お母さ……」
言葉に詰まるエレナとカイン。それを見て、馬鹿笑いするランドは、セラの長い髪を乱暴につかむ。そして、高く掲げて外で戦っている人間たちに見せる。
「ハハハ! 女王セラは我々がこの手に収めた! コイツを殺せばもはやタイクーン王国は我々のものになるということだ!」
「まさか、あの女王様が!?」
タイクーン王国の支柱となる、女王セラがまさかの敗北。その事実を受け入れられない外の騎士団や亜人たち。だが、その時をじっくりと『中』から感じていた者がいた。
(次は、我か……!)




