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陽織、結婚しない

2月末に学年末試験、3月に入ってすぐ卒業式。

もうすぐ、陽織たちは高3になる。


そして3日は、陽織17歳の誕生日だ。

一年前、陽織は黎人からプロポーズされた。

そして一年後、陽織は黎人と結婚の約束をしている。


3日の夜には帰ると言って、陽織は2日に黎人と出かけた。

朝一番で、お祝いの言葉を言いたいという、黎人の希望だった。


梅の花が咲く公園を2人で歩き、陽織は黎人にもらったイヤリングとネックレス、指輪をしていた。

今日、2人はただのデートではなく、美咲母からのミッションを受けていた。


京橋のハルのお店に行くこと。

日本橋の百貨店に寄り、2人でお茶をしてからハルの店に向かう。

2人ではブラブラ歩くと、あっという間だった。


「こんにちはー。」

陽織が声をかけて店に入ると、ハルがニコニコしながら、奥から出てきた。

「待ってたよー。いよいよだねー。」

ハルがニコニコしながら陽織たちを出迎えた。

「もしかしたら、そっちが花婿かい?ようやく美咲の息子の顔が拝めるね!」

どうやらハルと黎人は初対面らしい。


今日は、先日見せてもらったスケッチから、いよいよドレスのデザインを決める。

そのために、黎人と2人で来た。

「美咲からね、ドレスを3枚作るよう注文されているんだけど、どれにしようかね。」

ハルがニコニコ言うのを聞いて、陽織はえ?と固まった。

3枚?なぜ3枚?

黎人の方を向いても、黎人は、そうなの?と首を傾げるだけ。


黎人は、当日がこんな流れになるだろう、と言うのは両親から、聞いてはいた。でも、なぜ3枚?

もしかしたら予備かもしれない、と黎人が言うので、陽織はなるほど、と深く考えなかった。


しかし、それは甘かった。


夜、黎人の家で、昨年同様陽織のバースデーパーティー(プレ)をやっている時、その話しが出た。

「え?だって、披露宴が違うのに、同じドレスじゃ変でしょ?」

「披露宴が違う?」

「そうよ、3回やるんだもの。」

「3回?」

「そう、3回!」

陽織が、黎人の方に向くと

「3回で済んだんだー。」

と喜んでいる。

なぜ?


「まずは朝一番で、神前結婚式。これは親族ね。衣装は白無垢。」

「はい。」

「そのあとすぐ、午前中に十神家の披露宴。この時に白無垢から打ち掛けにする。」

「はい?」

「午後イチで、2人の友だちや親しい人。この時に白のウエディングドレス。途中で、カラードレス。」

「あ、はい。」

「夕方から黎人の会社関係。また白を着て、途中からカラードレス。」

「はい???」


「どうする?友人と、会社関係と、白も2着用意する?」

「そうですね。片方はイプニングドレスの方が。」

黎人が答えると、了解、と美咲が答えた。

「カラードレスは?」

「んー、友人の方は可愛い感じで。会社関係は、ただ可愛いだけじゃなく、ちょっと大人っぽさも欲しいです。」  

黎人が答える。


   え?誰のドレス?誰が大人っぽい?


「あの、黎人さん?」

「ん?」

「披露宴、て、3回、やるもの、なの?ですか?」

陽織は顔が真っ青だ。

「うーん、十神家は絶対だし、会社関係も陽織をちゃんと紹介しないといけないし。省けるとしたら友人なんだけど。それは嫌でしょう?」

陽織の両目には涙が出ている。


「い、や。いやですー!友人だけじゃだめなんですか?会社関係なんて、誰も知らないのに!」

「だめよ!社長夫人になるのよ!ちゃんとわかってる!?会社の人とか、取引先とか、結婚した後も、黎人の代わりにパーティーに出ることもあるんだから、顔つなぎしなくちゃ、ダメに決まってるでしょ!」

「じゃ、じゃあ、十神家の、どうせお正月に、顔見せするじゃないですか!」

「ダメに決まってるでしよ!あなたは神様の花嫁なのよ!」

うっうっうっく、えっ、ウエーん。

やだー、披露宴やだー!結婚、しないー!

と、とうとう陽織が泣き出してしまった。


美咲が陽織を叱ろうとしているので、黎人は慌てて陽織を抱き上げると

「ぼ、僕がちゃんと、話します、から。」

と、離れの2人の家に連れて行った。


陽織は泣いている。明日には17歳になるのに。

ふうえーん。ウエッうっ。やだー。結婚、しないー。


「陽織?本当に結婚、止める?」

黎人の声が怖い。いつもと違う。

陽織はビクッとした。

「確かに、3回は多いよね。」

「でも、陽織の友だちで、十神家と関係ない人が、一緒の披露宴楽しめるかな?」


「会社関係は、本当にごめん。でも何かあった時、陽織が僕の会社の人を知っていたら、便利なんだよ?」

   会社の人?

「うん。この人が、僕のお嫁さんです、ってみんなが知っていれば、何かあった時、陽織は堂々と会社に入って来られる。かも、しれない。」

   何か?

「うーん、例えば陽織が僕の忘れ物を届けに来てくれる、とか。僕にお弁当を届けてくれるーとか。」

陽織は、ちょっと笑った。


「それに、僕は1人でも多くの人に自慢したいんだ。陽織のことを。この人が、僕の世界一可愛い奥さんです!って。」

そう言って、黎人が陽織の頭を自分の胸に抱き寄せた。

「わかっ、た。」

陽織が返事をする。黎人は

「楽しみだなー。陽織の花嫁姿!可愛いだろうなー。」

とニコニコしている。


「まだ、一年後、だよ?」

「もう、一年だよ。覚えてる!去年僕がここで、陽織に指輪ん渡した時のこと。」

陽織は小さくうなづく。

「黎人さん?わたしのこと、その、えと。」

「愛してるよ!世界中の誰よりも!」

陽織は黎人の首にしがみつくとにキスをした。

「結婚、やめ、ない。」

「当然だよー!」

陽織は黎人にギュッとしがみついた。


陽織は黎人の身体の中で、とろけるような心地がする。黎人が陽織の身体の中に入ると、幸せいっぱいになる。

「好き。黎人さん、大好き。」

互いの唇と、胸と、身体全部が重なって。

「陽織、絶対、離さない。」


朝、まだ日が登る前に、2人は目を覚ました。

寒い朝でも、互いの温もりに守られて温かい。

「陽織、17歳。おめでとう。」

黎人が、そう言って抱きしめる。

これがしたくて、陽織を泊めた。


「まだ、ちょっと早いね。少しだけ、良い?」

黎人に聞かれ、小さくうなづく。

「やった。17歳の陽織、もらい!」

クスッと黎人が笑って陽織の唇を奪うと、陽織の身体の中に入って行く。陽織は黎人を受け入れ、身体の中から溶けそうになる。

互いに愛を囁き、一つになっていく。


次の一年。来年の誕生日。

2人は法律的にも一緒になれる。

それまで。


3日。2人は朝美咲たちのところに、披露宴3回の準備をすることを、告げに行く。

3回となると、ドレスだけじゃない。

返礼品やお料理なども、これから決めなければいけない。

そして、今朝、黎人は陽織に本当の婚約指輪を渡した。陽織が出す氷のように煌めく、ダイヤモンドの指輪を。


次の誕生日は結婚指輪になる。



















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