↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/276

陽織、もう無理!

3人は銀座に店を構えるウエディングドレス専門店、ユミ・ヒロセに入った。

事前に連絡をしていたのか、美咲が入ると、店長自ら案内をしてくれた。

「今日はまだ、こちらにお願いすると、決めたわけではないから。」

そう言って、まずは店内に飾られているドレスを見た。


飾られているのは、プレタポルタ、一点ものには違いないが、規制服にはなる。

陽織と陽香はその美しさに感動して、これも素敵、あれもいいと楽しくドレスを見ていた。しかし、

「本日は花嫁様は?」

と、店長の一言で美咲の顔が変わった。


店長は、まさかその''花嫁様"が、小柄で童顔の陽織だとは構わなかったのだろう。事実陽織はまだ高校生だし。

その途端、美咲は

「もうしわけないけど、他のお店に行くわ。」

と2人の手を引いて、店を出てしまった。


「ちょ、美咲。失礼よ。」

「失礼なのは、あの店長よ。陽織ちゃんのこと、全然目に入ってなかったのよ!」

と怒る。ありがたいが

「いや、わたしどう見ても、花嫁様には見えないと思いますので。」

と、陽織は苦笑いした。

「それは、人を外見で見下すことと同じよ。」

と、美咲に言い返される。


面目ないです。と、陽織と陽香は項垂れてしまった。

「あ、ごめんなさい。2人に嫌な思いをさせるつもりはなかったの。それじゃ、もう一つのお店に行きましょう!」

美咲はそう言うと、2人を京橋近くの小さなお店に連れて行く。


そこは、先ほどのような華やかさはないが、落ち着いた、昔ながらのオートクチュール専門店だった。

「ハルさん、お久しぶり!」

美咲がドアを開けて声をかけると、初老の女性が店の奥から出てきた。

「あら、美咲ちゃん。珍しいわね。」


美咲はハルという女性としばらく話をすると、陽織を呼んだ。

「まあ、この娘が花嫁様。もちろんよ。この娘のドレスはわたしのところで受けるわ。」

女性は鷹揚にうなづく。


結局、陽織は美咲とハルに下着にされ、上から下まで、詳細に計測される。

「ずいぶんと、細い子だねー。」

ハルが呆れる。

「前はもう少し太かったんですけど。」

それを見ていた陽香が困ったように笑う。


陽織はスケートをやめ、霊力を手に入れてから、日に日にやつれている。

以前は頑張ってダイエットしていたくらいなのに。

神鬼からは、これ以上痩せないように注意を受けたくらいだ。とにかく食べさせねば!


「いま、頑張って食べてます!もう少し太る予定です!」

陽織が拳を握って言った。


「それじゃ、まずは計測をひとまず置いといて、どんなデザインのドレスにするか決めようか。」

そう言われて、3人は素敵なドレスのデザインを見ながら、まだ先の幸せな日を願った。


お正月。今年も陽織は黎人と並んで、上座に座らされている。黎人は相変わらず堂々としているが、陽織は恥ずかしくて下を向いてしまう。


広間にはそれぞれ十神家の現当主かその代理が。続きの間には、高嶺や和嶺、千織、美織と言った若手が控えている。中には黎人の秘書、神柴綾人や神杉絵梨花もいた。


    これが、また2時間も続くの?

と、涙目になっていたが、今回は挨拶は黎人だけで、陽織はただ座っていれば良かった。

それでも、次々と知らない人が挨拶に来る。


中には美織や千織の父や伯父、大神もいて、全く知らないわけではなかった。

それでも、怖い。

父、神月高樹が黎人に挨拶に来た時、陽織は無言のまま涙目で訴えた。すると、

「黎人様。花嫁様のご気分がすぐれなようですが。」

と、さりげなく言ってくれた。


黎人はその言葉を聞いて、陽織の顔を覗き込む。

「陽織?ちょっと席を外させてもらおう。」

そう言って、周囲に中座の言葉をかけ、陽織の手を引いて、部屋の外へ出してくれた。


その後ろをさりげなく父が着いてくる。

「陽織。続きの間に高嶺たちがいるから、そちらで休みなさい。」

黎人はうなづき陽織を隣の部屋へと連れて行った。


「陽織ちゃん?」

中に入ると、陽織が美織の腕に縋ってへたり込んだ。

「顔色悪いな。水飲む?」

和嶺が陽織にグラスを渡す。

黎人は、和嶺たちに

「陽織をお願いします。」

と一言告げ、高樹と共に、広間に戻って行った。


高嶺が椅子を持ってきて陽織を触らせてくれた。

「あ、りがと、う。なんか、ちよっと、緊張、しちゃって。頭痛くなっちゃって。」

陽織は友人や兄たちに囲まれて、ホッと一息つく。


まだ始まって1時間も経っていないのに、今年はギブアップだ。

「大変だなー。花嫁も。」

「なんか、去年と違う振袖着せられてるし。」

「あ、それこの前、母上が陽織にって作ったやつ?」

湊人が言うと、神代母の勢いと本気に、周りは唖然とした。

「母は陽織ちゃんのために、すっごい勢いで色々買い揃えてるよねー。娘ができたー!って。もう16年分だから、諦めてね。」

と、悠人も笑う。


もう、学校の友人だけじゃない。

高嶺や黎人のもとクラスメイトたちも集まって、話を聞いている。


陽織はホッとしたのも束の間、また顔色が悪くなる。

「わたし、もう、無理。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。