陽織、起きない!
疲れていた。
みんな本当に、今日はなんて日なんだ!
と思って、神嶋に車の鍵を渡す。
車は全部で8人乗り。
運転を神嶋に任せて、悠人は和嶺の隣に、祈梨は陽織の隣に座った。誰も助手席には座らない。
「とりあえず、昼食ですね。」
そういった神嶋に運転を任せ、ファミレスを目指す。
陽織はずっと眠ったままだ。
ファミレスに着くと、美織が
「陽織ちゃん、陽織ちゃん起きて!陽織ちゃん!」
と身体を揺らす。
「やっぱり起きないですね。このままにしますか?」
という神嶋に、
「ダメ!」
「ダメだ!」
と、黎人と和嶺の声が重なった。
「でも、すっかり寝てますよ?」
だからダメなんだ!と、和嶺と黎人は言う。
「このまま陽織ちゃん、寝ちゃうとたぶん明日の朝まで起きないんです!」
美織が困った顔で言い放った。
「2食抜きはちょっと。」
と、祈梨も心配した。
夏、陽織はこの一年で体重が4キロ落ちたと言っていた。それから、色々と工夫はしているけど、さらに落ちたと聞いている。
はじめは筋肉がおちた!と言っていたが、それだけじゃないのは、彼女を抱くとわかる。
医師の神鬼からも、それは心配されている。
膨大な霊力を使うと、普通はお腹が空くので、みんな必ずしっかり食べる。
しかし、陽織は寝てしまう。そして食べない。
依頼があると、必ずそれが繰り返される。
食べない陽織の霊力は、黎人によって戻すことはできる。元々のキャパも大きい上に、15年間封印されていたため、それを圧縮し続けていた。解放された陽織の力は神気が半分くらいでも、今までの花嫁とは桁違いに大きい。
だから、さらに他の人よりも力を使える。
しかし、それは食事で補っていかなければ、どんどん自分の身体を削って行ってしまう。
これ以上削っていけば、違う意味で危ない、と神鬼に言われた。
「とにかく、陽織ちゃんに何か食べさせる!」
と美織が無理矢理引っ張って、陽織を車から降ろす。
寝ぼけ眼のままでも、なんとか店内に入れることには成功した。
7人は角の席に座ると、神嶋を向かい側に、悠人、祈梨、和嶺、美織、陽織、黎人の並びで座った。
「もしかして、わたし嫌われてます?」
神嶋の両隣は空席だ。
「腹減ったー!」
和嶺の言葉で、みんなそれぞれ好きなメニューを注文した。
「あ、陽織、カニクリームコロッケあるぞ!」
と和嶺が言う。
陽織は、美織に寄りかかって、また寝てる。
「陽織ちゃん、エビドリアもあるよ?」
と美織。
すると、和嶺がニヤリと笑って
「陽織はエビよりカニが好きなんだ!しかも、桃の次に好きなものがカニクリームコロッケと、カニグラタン!」
と言う。
黎人も美織も知らなかった。15年の差は大きい!悔しい!と、黎人は思った。
そこで、陽織にはカニグラタン、黎人がカニクリームコロッケの単品とステーキセットを注文した。
品物が届くと、美織はグラタンをスプーンに取り、フーフーと冷まして陽織の口元に運ぶ。
「ほら、陽織ちゃん、アーンして!」
陽織は眠い目を擦りながら、口を小さく開けた。
そこに、美織がここぞとばかりに、グラタンを突っ込んだ!
ほとんど噛まずに、陽織が飲み込んでる!
「まるで、育児か介護、ですねー。」
と神嶋が言うので、美織が睨みつける。誰のせいなんだ!
「だいたい、今日のは6人じゃ無理ですよ!」
黎人が冷ややかに言い返した。
それは全員の総意だ。
陽織がコロッケ1/2個と、グラタンを1/4食べたところで、残りを黎人と和嶺が食べて、ファミレスを出る。
そこで、神嶋は警官が用意したパトカーに乗り換えて去って行った。一行は力を半分くらい回復した和嶺の運転で、帰宅することに。
まずは悠人と祈梨を彼女の家の前で降ろし、運転を黎人が替わる。
そのあと、美織を家の前で下ろす時、和嶺も降ろした。
「ちゃんと、巫女のフォローお願いします!」
と言ってドアを閉める。
「え?ちよ、ちょっと、陽織は?」
「陽織は、ウチに連れて帰りますから、ご心配なく!」
「いや、ご心配するって!」
と言う会話の間に、和嶺は妹を拉致られた。
駐車場に車を停めて、黎人は後ろの座席で眠る陽織を抱き上げて、自分の家に向かう。
陽織は起きそうもない。もしかしたら、明日の朝まで目覚めないかも。
また、いつのまにか寝ていた!
陽織は自分がいつのまにか、服を脱いで眠っていた。
しかも、隣では黎人がよく寝ている。
彼は一応、パジャマを着ている。
記憶がナイ!
いや、なんかグラタンかコロッケを
食べた夢を見たような。
暗い中時計を探すと、まだ夜中の3時半だった。
確か競技場に行って、
ハクを呼び出して
えと、え〜っと、それから?
カニ?
う、ん。
陽織の気配に気づいた黎人が目を覚ます。
「ご、ごめん、なさい。まだ、夜中。寝ていて。」
と、小さな声で囁いた。
しかし、そのまま黎人に抱き枕にされ、眠れない。
(どうしよう。わたし、いつから寝てたんだろう。)
しばらくすると、黎人が目を覚まし、陽織が起きたことに気づいた。
「あー、陽織、目、覚めた?」
黎人がぎゅーっと抱きつく。
「う、ん。あ、いたっ!」
黎人のパジャマのボタンが陽織の肌に押し付けられた。
その声で、黎人もしっかり目を覚ました。
「ごめん!ちょっと待って。」
黎人が何かゴソゴソしている。




