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陽織、白桃と眠る

霊力を神気に変えることができる。

それを黎人から聞いたのは、3月だった。

まだ神気が少ない陽織にはできないけど、神気が強まれば白兎様を媒介に陽織が望むような神気が使える、と。


神気が強まっていることに気づいたのは、5月。陽織が霊力過多で倒れたとき、白桃が黎人を連れて来た。


そして今、陽織は小龍を助けたい、巻き込まれた小さな霊を助けたい、と白桃を取り込んだ。


小さな霊だけじゃない。

二体の龍と闘う白骨死体や悪霊と化している遺体も救いたい。


彼らは被害者だ。自分から望んでここに入ったモノもいたかもしれない。でも勝手に命を奪われて良いいわれはない!

陽織は、6つの霊を縛るモノに向かって光を放った。

地面の中から石のようなものが浮き出て、それが粉々に割れる。


すると、霊たちが何かから解放されたように、弱りおとなしくなって行く。


宙に舞った陽織が、放てるだけの神気を使った。

しかし、まだ未完成な神気はもう少しで尽きそう。


「ハク。」

陽織は呟くと、意識を手放した。

陽織の体が落ちる!

和嶺は目の端でそれを捉えたが動けなかった。

悠人は、反対側で白龍を操っている。

黎人は神嶋の近くにいる。


陽織の身体は龍が闘うグランドの真上に落ちて行く。

「陽織ちゃん!」

美織は、腕を伸ばすがもちろん届くはずはない!

流石に、役人も、警官も顔色を変えた!

「ハク!」

黎人が叫ぶ。


陽織の身体が地面に打ち付けられる!と、美織が目を閉じた時、ハクに呼ばれた黎人が、真下まで移動し陽織の身体を受け止めた。


和嶺は、一度その瞬間を見たことがあったので、ホッと胸を撫で下ろすだけだったが、さすがに役人と警官は、口を開けてその瞬間を呆然と見ていた。


「陽織、お疲れ様。」

黎人の腕の中に、意識のない陽織と白桃が眠る。

そのまま黎人は小龍に守られながら走ってグランドの外に出ると、神嶋に陽織を預けた。

「必要以上に触らないでくださいね!」

と釘を刺して。


そのあとは龍が、おとなしく弱った霊たちをさらに限界ギリギリまで追い詰めた。

それを見た黎人が珍しく祝詞を唱える。


最後は、6つの霊が光となって、消えて行く姿だった。


「陽織ちゃん、陽織ちゃん!」

美織が、神嶋のところにかけてくる。

祈梨たちも、悠人の白龍が運んで来る。

和嶺も。

黎人は一瞬呆然としていたが、すぐに陽織の方へと向きを変えて走って来た。


あまりにも、非現実的な光景に役人は地面に座り込んだままだった。

黎人が神嶋から陽織を返してもらうと、抱きしめて霊力を吹きこんだ。


久しぶりに感じる脱力感。

白い靄の中。

なんだろう?

誰かが手を引っ張る。

「陽織、大丈夫?」

顔を除く黎人と目が合った。

うん。と陽織が小さく笑った。


「神嶋さん、今日はずっとそこにいたのだから、報告書お願いします!」

悠人が叫ぶ。

「それから、こっちの消耗半端ないんで、この後のことも、よろしく!」

と。


神嶋はいつもの通り、軽く

「はいはーい!」

と返事をし、手を挙げた。

そして

「あー、えと上田巡査?グランドの後処理、お願いしますね。応援、呼んだ方がいいですよ。」

と、警官に声をかけた。さらに

「グランド、しばらく使えませんねー。たぶん、下からご遺体が発見されると、思いますよ。」

と役人にも告げる。

「ご、遺体‥。」








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