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陽織、トップに躍り出る

中間試験、陽織は一番に躍り出た!

でも素直に喜べなかった。

なぜなら、湊人がベスト5にもいない。


夜、黎人から電話があった。

陽織分が足りない!とか

早く結婚したい!とか

夜中だけ会いに来て欲しい!とか


本当に忙しいようで、会社からだった。


翌朝、廊下で美織と羽織が複雑そうな顔をして話をしていた。

「おはよう?」

と陽織が声をかけると、千織が大神に呼び出されたらしい。中間試験のことで。


「千織がね、かなり成績落としたらしいの。」

「赤点こそないけど、文系の中でも30番以内に入ってないみたい。」

Sクラスは20名。

術者という条件もあるが、成績も文理合わせて30位以内は必須条件だ。


「湊人くんも、今回Sの理系で最下位だったんでしょう?」

Sクラスの理系は全部で8名。

その中で、最下位ということは、学年理系でも10位ギリギリということだ。いずれ、湊人も呼び出されるだろう。

「うん、翔太が複雑な顔してた。」

「翔太?」

「理系男子でトップになったみたい。」

「?良いんじゃない?」


それだけではなかった。

Sクラスの中で、湊人と千織が別れた?という噂が広がっているらしい。

それはそうだ。

あれだけ2人の様子があからさまに変なのだから。


「でも、使役獣の術者と巫女が別れるってできるの?」

2人が幼馴染だっただけに、周りから疑問の言葉が出ている。


10月末の土曜日、陽織はやっと黎人と会えた。

2ヶ月ぶりだ!

学校に車で迎えに来ると、速攻で黎人の家に連れて行かれた。

修学旅行の後なんてもんじゃない。


しかも、黎人はいつもよりなんか積極的だ。いつもだけど、いつも以上に。


「ちょ、黎人さん!わたし、まだ、その。」

陽織が制服を着ているときから、離さない。

「制服だけでも!」

(制服が皺皺になる!)

「制服なら、クローゼットに替えがあるから、大丈夫だよ?」

   あれは、そのためのものか!


夕方、陽織がいつものように帰ろうとすると、

「今日は母が陽織のお母さんに言ってあるから、泊まっていけるよ!」

と嬉しそうに言われた。

え?


本邸に行き夕飯の準備をする。今日、美咲は陽織の母、陽香たちと観劇とご飯らしい。ある程度は通いの家政婦さんがやってくれているので、陽織はほぼ配膳だけだが。


それもあり、陽織は今日お泊まりを許されたのか、と納得した。

湊人がいたが、夕飯を食べるとサッサと自分の部屋へ行ってしまった。

みんなの食事が終わると、後片付けをして、お風呂に入って、そしてまた。


「黎人さん、いくら久しぶりでも、その。」

「んー、ごめん。ほんとに陽織分足りなくて、死ぬかと思った。」

いやいや、神様は死なないでしょ。


そう言いながら、黎人とまたベッドの中で楽しんだ。


「ん?」

夜中、陽織が目を覚ますと、デスクスタンドの灯りをつけ、机の前で黎人が勉強をしていた。陽織は眼鏡をかけた黎人を初めて見る。


陽織は、黎人自身が勉強をしている姿を初めて見て、こんな忙しい時に、と呑気に寝ていた自分が恥ずかしくなる。


しばらく陽織が見ていると、その視線に気づいたのか、黎人が陽織の方にやって来て、ベッドに腰掛ける。

「ごめん、明るかった?」

陽織は首を横に振る。

「ごめんなさい。本当に忙しかったのに。」

陽織が言うと、

「え?いや、違うよ。ほんっと陽織分が足りなくて、もう、勉強にも仕事にも集中できなくて!で、母上に頼んだんだから!」

(陽織分って。)

陽織は思わず笑ってしまった。


すると、急に真面目な顔になった。

「陽織に会えなくても、僕は陽織しかいないからね!陽織が一番大切で、絶対に誰にも渡さない!ずっと離さないからね!」

どうしたんだろう、急に。

と陽織は不思議顔になる。


その時、湊人のことを思い出した。

「あの、湊人、何かあった?」

陽織が湊人の名前を出した途端、部屋の空気が変わる。冷気というか、殺気というか、今まで黎人が出したことのない気配だった。


「どうして。」

黎人の声が掠れたように聞こえる。

「あ、え、と。試験がすごく、悪かった、から?」

と陽織が口にした途端、少し気配が和らいだ。

(何かあったのかな?あんなに仲のいい兄弟なのに。湊人が試験悪かったのも、それが原因?)


「湊人の成績は自分の責任!陽織は一番だったんでしよう?偉い偉い!また時間ができたら、勉強見てあげるからね!」 

そう言って、黎人は陽織を抱きしめる。

地獄の家庭教師を思い出し、けっこうです!と言いたかった、が、言える雰囲気ではなかった。


「わたしも黎人さんが一番好き!黎人さんにギュッとしてもらえると、すごく幸せになるの。大好き!」

陽織がそう言うと、さっきまでとは全く違う、いつもの優しい甘い黎人になっていた。

黎人は陽織の唇にチュッとすると、おやすみ、と言って陽織をベッドの中に閉じ込めた。


本当に、閉じ込めるように。


翌朝、陽織が朝食を作っていると湊人がキッチンにやって来た。

「おはよう。」

陽織が声をかけると、

「おはよう。」

と返事をして食卓に着く。

まだ、美咲も起きていなかった。


「陽織が朝食作るのか?」

と聞いて来たので、

「うん、お母様、昨日遅かったみたいだから。」

と陽織が卵焼きを作りながら答える。

「ネェ、湊人。勉強大丈夫?」

余計なお世話と思われそうだったが、陽織が聞く。

湊人は何も答えず、頭をかいていた。そして

「期末は、頑張るよ。」

と答えてきた。なんか、本当の弟みたいで可愛い!


そのあと黎人もやって来て

「おはよう、陽織いつのまにかいないんだもん。」

とちょっと拗ねる。

「おはようございます。だって昨夜遅くまで、勉強していたから。まだ、休んでいて良いですよ?」

「ん、陽織がいないと寂しいからいい。」

と言って、陽織の後ろから抱きしめてお腹の前で、腕を組んで抱えてる。

「ちよ、黎人さん。動きずらいです。」

やめて、と陽織が笑うと、そんな陽織の頬にキスをする。陽織がお返し!と背伸びをして、顎にキスをしていた。なんで顎?と笑う黎人。


湊人は、いつもと違って、2人の姿をただぼーっと見ていた。いつもなら、何かと文句を言って突っ込んでくるのに。


湊人はこの時、どうしていつも自分の前で、兄が陽織といちゃつくのか、やっと気づいた。

(ああ、見せつけられていたんだ。)

そのあと、蓮也と悠人が起きて来て、珍しく美咲が最後に起きて来た。


「ごめんなさい。昨夜陽香たちとご飯してたら、遅くなっちゃって。」

と、楽しそうだ。

そして、陽織の朝ご飯を食べながら、突然美咲がとんでもないことを言って来た。

「ねえ、陽織ちゃん。湊人の勉強見てあげてくれない?」

「はい!?」

「はあ?!」

陽織と湊人が同時に叫ぶ。


「母上、陽織だって同じ学年ですから、自分のことで忙しいんです!」

咄嗟に反対したのは黎人だった。

「あ、その勉強なら、ウチの兄たちはどうでしょう?2人とも医学部なので、薬学部志望の湊人くんの勉強なら、ピッタリです!」

陽織も、言った。

「今回は、ほんっと俺が慢心してただけだから!期末は頑張るから!」

と、湊人も言う。


美咲も、どうやら湊人の成績のことで大神に呼び出されたらしい。

   母親って大変なんだな。

と、陽織は思ってしまった。


朝ご飯の片付けは美咲がやる、と言うので、黎人と2人で家に戻って洗濯と掃除をする。

昨夜黎人に、また霊力過多になったら困る、と言ったら霊力を使って家事をしよう、と言うことになった。


洗濯は残念なことに電気だが。

黎人が霊力を使ったお風呂の洗い方や、ベッドの汚れ落としなどを見せる。

まるで魔法のようだが、よくみると、陽香のように精霊のようなものがやっていた。


要は、霊力を使って精霊のようなものを呼び出して、家事をやってもらうらしい。

陽織も真似して水の精霊を呼び出して、拭き掃除を手伝ってもらった。その間黎人には勉強してもらう。


家の中がピカピカになって、洗濯物も終わった。精霊にやらせているのに、結構疲れる。


「どう?霊力を少しは使った?」

終わった頃に、黎人がお茶を入れてくれた。

「はい。慣れないせいか、精霊使ってるのに、以外と力使うんですね!」

と陽織が言うと、

「僕もキリの良いところまで終わったから。陽織の霊力供給!と、陽織分の補給!」

と、楽しそうに言う。


「え?せっかく頑張ってお洗濯して、ベッド綺麗にしたのに‥。」

と言うと、

「だってそのために、頑張ったんだから!」

と言い返されてしまった。

「だって、また年末まで忙しくなるから、陽織と会えないかもしれないのに、それでもダメ?陽織は、寂しくない?」

と言われてしまうと、たしかに寂しい。

「供給過多になったら、またお掃除すれば良いよ!」

と、勉強地獄から、今度はお掃除地獄にする気か?


またしばらく会えない、と言う言葉を聞いて、陽織は時間が許す限り、黎人には甘えてしまった。






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