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陽織、眉をひそめる

白糸の滝が近くなると、急に道が混んできた。

2台の車を駐車場に入れ、6人は歩く。


「へぇー、これが白糸の滝なんだー!すっごく涼しい!」

と陽織が、深呼吸する。

「なんか、清涼感あるよね!」

と祈梨も真似て深呼吸をする。


「ナイアガラに比べると、ちっこいだろー!」

と湊人が笑った。

「滝って言っても、全く別のものだよね!それぞれ良さがある!」

と湊人が言うと、まだ3人がカナダから帰ってきたばかりだと言うことを思い出す。


「どうだった?カナダ、楽しかったでしょう?」

白糸の滝から、食事をするために移動していると、祈梨が、思い出すように言ってきた。


「うん!楽しかった。北米って初めてだったから。」

と湊人が言う。

「わたしも、カナダ初めてだったので!陽織のホストファミリーにも、会えたし!」

と千織が続けた。


「へえー、陽織さん、カナダにホームステイしてたの?」

悠人が聞いてきた。黎人は誰にも話してなかったようだ。


「ホームステイって言うか、中3の夏まで、5年くらい毎年?でも、ないかな?」

「陽織はカナダが好きなんだよね。新婚旅行もカナダにしよう。」

と、黎人が話をうまく楽しいものに変えてくれた。


カナダだけじゃない。

試合や遠征を抜きにしても、一年のほとんどをヨーロッパかカナダで暮らしていた。

すると、悠人が思い出したように

「そういえば、去年高嶺さんが言ってたよね!海外でよく自炊してたって。」

と言った。そういえば、そんなこと言ってたな。


「暑いの苦手なので、夏は北欧かカナダで過ごしてました。」

と陽織が答えると、祈梨たちは、うわっ、セレブ?と思ったらしい。面倒なので、そう言うことにしよう。


一行はその後、街中のお店を散策し、夕飯の材料を買って別荘へ戻った。

さあ、今日はカレーだ!と、みんなで交代にシャワーを浴び、夕飯の材料の下拵えをしていると、突然黎人のスマホが鳴った。


電話だ。

黎人は電話に出ると、だんだん不機嫌な顔になっていく。声も冷ややかなものになり、雲行きが怪しい。


「どうかしたのか?」

悠人が聞くと

「とりあえず、夕飯にしよう!話はそれからだ。」

と答えた。


夕飯が終わると、陽織と千織が後片付けをし、最後に食洗機のスタートを押した。


6人が揃うと、黎人が話を始める。

「電話は、神嶋、さんだった。」

え?

うわっ!

えーっ!

それぞれがイヤーな顔をする。


「軽井沢にいるからダメだって言ったら、ちょうど良いって言われたー。」

黎人はため息混じりに話を始めた。


中軽井沢にある林の中で、ここ数ヶ月の間に人が何人か消えている、という。

最初は悪戯かと、警察も本気にしていなかったが、昨日新たに、5人目、しかも近くの別荘に遊びに来ていた小学生が行方不明になった。


大人なら、悪ふざけや模倣犯ということも考えられたが、流石に小学生となると、話は別だ。


「そこで、明日の朝から協力して欲しいということです。警察さんは、今も捜査は頑張ってるそうです!

みなさん、今夜はしっかりと霊気を養って、体も休めましょう!」

「霊気?英気じゃないの?」

「霊気!」


「明日の夜は花火できるかなー。」

湊人が不服そうに言った。

しかし、その後

「え?やっぱり、俺、千織と、寝るの?」

と、突如、兄たちを見る。

「いや、それは2人に任せます。」

と悠人は言って、サッサと祈梨の手を引き自分たちの部屋へ行ってしまった。

「まあ、ベッド2つあるしね!気にしない、気にしない!」

と陽織は言うが、なんか無責任だ。

「別にわたしは千織と一緒、」

と言いかけると、黎人に抱きあげられて、部屋へ連れて行かれてしまった。

「陽織ー!」

千織の悲惨な声だけが響いた。


陽織は部屋に入ると、黎人とは違うベッドの中に潜りこもうとした。

「なんで?」

と黎人が不服そうに声を出す。

「え?だってベッド2つあるし。」

と陽織が言うと、黎人は陽織のベッドに移動してきた。

「もう!明日仕事になっちゃったんだよ!」

「うん。だから、霊気を養おうと思って。」

黎人はそう答えると、陽織をギュッギュッと抱きしめる。

「く、苦しい、から!」

「だって、陽織逃げるんだもん!」

    子どもか!

「良いじゃん!サマースクールの時も、カナダの時も、ずっと我慢してたんだから!」


今日はまだ防音結界張ってない。

たぶん、声が丸聞こえだ!

しかし、全く気にせず、陽織に触れてきた。

「ちよ、黎人、さん!千織、たちに聞こえちゃう!」

「良いよ。湊人をけしかけてやる!」

「だから、ダメ、だってば!」

「えいっ!陽織を脱がしちゃうぞー!」

「ちょっと、やだ。」


そう、その会話は、本当に丸聞こえだった。

しかし、丸聞こえだったおかげで?2人は冷静になれた。

「千織、寝よっか。」

「うん、湊人くん、おやすみなさい。」


そして黎人は防音結界を張った。






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