陽織、告白する
日本に戻って2日目。今、日本はお盆の最中。
陽織は久しぶりに黎人とデートだ。
ただ暑いので、いつもの公園はなしで、今日は映画を見て、カフェにいく。
そのあと、黎人の家に行った。
黎人のベッドの上に座り、お土産を渡して修学旅行の話をした。
そのあと、黎人に答えて陽織はベッドに横たわる。
ただ、陽織の様子がいつもと違う。
黎人は久しぶりの陽織を堪能していたが、陽織の反応がいつもと違って上の空だった。
「陽織?」
「あ、ごめんなさい。」
「え、と。嫌だった?」
陽織は答えない。と言うか、どう答えていいのかわからない。
「今日は、やめようか。」
そう言って、黎人が陽織を抱き起こした。
「何か、あった?」
陽織はしばらく黙っている。
「僕のこと、嫌に、なった?」
陽織は首を横に振った。
「違うの。わたし、黎人さんに、その、好きだから。大丈夫。」
?
何が大丈夫なのだろう?
「わたし、その、父様と、あれから、ずっと、会ってないの。会ってないって言うか、顔見てない。」
「それ、さっきも言ってたよね?」
陽織はコクンとうなづく。
「わたし、わたしね、他人の気持ち、わからないって、言われたこと、あって。」
陽織がたどたどしく話し始める。
今までに、黎人が聞いたことのない話。
「わがまま、とか、自分勝手は、よく言われてたんだけど。」
黎人は目を大きく開く。
「そんなこと、ないと、思うけど。」
「わたし、小学生の頃から、学校嫌いで、学校休んでばっかりなのに、よくカナダは行ってたの。」
「そういえば、ホストファミリーに会ったって、言ってたね。」
陽織はうなづいた。
「父様、一度も怒ったことなかったけど、いつも、好きにさせてくれてたけど、中一のとき一度だけ、どうして家に居たくないんだ?って、また、カナダに行くのか?って。聞かれたことあって。」
黎人は黙って聞いている。
「わたし、家って言うか、学校嫌で。」
そういえば、以前イジメで自殺した子の霊に共感していたことを思い出した。
「イジメに、あってた?」
「イジメって言うか、無視って言うか。わたしも、学校行ってなかったし。スケートばっかりで。」
なるほど。
「でも、その時、わたし、父様に言っちゃったの。」
『父様は、わたしのこと、可愛いとかいうし、甘やかしてくれるけど、わたしを愛してないよね!』
うわーっ、それって親としては痛い!
「父様、すごくビックリしてた。わたしは、父様にとって、愛玩動物じゃないって。」
「で?」
「父様、なにも言わずに、部屋出てって、それからわたし、すぐにカナダ行っちゃったの。あの時も、しばらく父様と会わなかった。」
「そっか。それじゃ早く、陽織がお父さんと仲直りできるように、おまじない!」
黎人がおでこにキスをする。
陽織は嬉しくなった。
やっぱりこの人を好きになって、良かった。
黎人さんが好き。
陽織の、自分から初めて黎人の唇にキスをした。
そして、小さな声で、自分から初めて
愛して、と言った。
その夜、陽織は母とカナダの話をしながら父を待ったが、父は緊急オペが入ったとかで、遅くなるので、結局会えなかった。
その翌々日の木曜日。陽織は、千織、祈梨と3人、神代家の別荘に招待された。
悠人の車は祈梨だけ。黎人の車に湊人と千織が一緒に乗った。
「うわ、このメンツ、海ぶり!」
と湊人が言う。
「確かにー!」
と黎人が笑った。
「今回は依頼絡みじゃないから、ほんっとに楽しめるよね!」
と湊人は楽しそうだ。
陽織は、今回の別荘行きをちゃんと母に話してある。嘘はついてない。母も、密かにわかってるのか、気をつけるのよ。と、色々注意してくれた。
予定は木、金、土の二泊三日。月曜日から、今季最後の夏期講習だ。
湊人は千織に、別荘の周りのスポットやお土産、美味しいお店を色々教えている。
陽織も、今までは依頼絡みばかりで、案件近くの貸し別荘やコテージは泊まったけど、神代家の別荘は、初めてだった。
群馬県との県境、いわゆる旧軽と呼ばれる別荘地は、GWや夏休みは、ものすごい人混みになる。
抜道もあまりなく、悠人と黎人は朝早めの出発を決め、東京を早朝に出発した。
千織はまだ眠いのか、湊人にもたれかかり、うとうとしている。
「陽織は応援?」
と、黎人に言われ陽織は笑った。
うん、でも甘えたい!
「黎兄、陽織といちゃつくなよー、事故るから!」
湊人が後ろからうるさい。
早めに出たおかげで、午前中に到着した。
そのまま、碓氷峠に行き、県境にある熊野皇大神社へ行く。
6人が鳥居を潜ると、神社の様子が少し変わる。
一つの神社が2県にまたがる珍しい神社で、標高も高く、町よりさらに涼しい。
本殿の前に黎人が立つと、神社を包んでいた霧が急に晴れ渡る。陽織は黎人の隣で参拝し、そのまま光に包まれるような気持ちになった。
そのあと、街に戻り別荘に向かう。
荷物を置いたら白糸の滝へ行こうと、悠人と黎人が同時に言って笑う。
別荘は3部屋あり、いずれもダブルベッドが2つずつあった。
「そ、それじゃ、わたしと陽織ちゃんが、同じ部屋で良い?」
と千織が言うと、黎人がダメ!と陽織を抱きしめた。
「えーっ、それって、わたし、湊人くんと、同じ、同じ、同じ。」
千織が涙目で陽織を見る。
うん、千織が可哀想だ。
と、陽織が千織の意見に賛成しようとしたら、
「大丈夫だよ!絶対に何もしないから!約束する!千織と一緒でいい!」
と、湊人が顔を赤くして、言い放った。
陽織は、千織の方を見るが、千織の顔色は良くない。
「そ、それに、幼稚園の頃は、一緒に風呂に入ったじゃないか!」
陽織は、湊人が可哀想な子に見えてきた。
きっと、千織を落ち着かせようと思ったのだろう。
「じゃあ、わたしと陽織ちゃん、千織ちゃんが同じ部屋で良いじゃない!」
と祈梨が言うと、男性全員がダメ!と声を揃えて言った。神代三兄弟!!!こんな時は息ピッタリ?!




