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陽織、神様と出会う?

危ないやつだなー。俺の銀まで消し飛ばされるところだった。

湊人は帰宅しながら、今朝のことを思い出していた。家の門の前まで来ると、後ろから湊人を呼ぶ声がした。双子の一人、黎人だった。

「何か悩みでもあるの?」


2人の兄は親の会社の助けになるために、大学は法学部と経済学部で学んでいる。どちらも優しくて強い、自慢の兄。湊人は、はっきり言ってブラコンかもしれない、というくらい兄が好きだった。


湊人は門から玄関までの間、黎人に今朝のことを話していた。黎人は穏やかな顔で湊人の話を聞いた後、最後に

「もしかして、湊人はその子のこと気になっているのかな?」

と一言。

「ちっ、違うよ。第一あいつは銀の巫女じゃないし。黎兄さんもわかるよね?自分の龍の巫女なら。それに、あんな強い力、普通の巫女じゃない。」

湊人の声は、最後の言葉になっていくに連れて、真面目で緊張したものになっていた。


はじめは微笑ましいモノでも見るような目で見ていた黎人も、湊人の後半の言葉が気になり、真剣な顔に変わっていた。

(湊人から見ても強い力。)


「そうだ、湊人。高校生になったから、5月にある神明神社の神事、今年はお祖父様の代わりに手伝わないか?」

神明神社は駅の北側にある、由緒正しき神社だ。母の実家なので、直接湊人たちが継ぐという話はない。

毎年5月に開かれるお祭りでは、祖父が神事を行い、兄たちは神職の1人として、御朱印を書いたりお守りを販売する手伝いをしている。


神明神社は商売繁盛の神様なのに、兄たちが手伝うと、女性の礼拝者が増えるらしい。そこで、お祭りやお正月など、礼拝者が多い時は、2人の兄も、祖父の神社を手伝っていた。女性たちの目的は、間違っていると思うが。まあ、どこにでもある、健康や家内安全、恋愛成就のお守りも扱っている。


湊人は制服を着替えると、兄の部屋へ行き神事の手伝いについて色々と話しをした。

神明神社のお祭りは、高校で最初の中間試験の翌週だから、誘えば友だちも来てくれるかもしれない。そんな話をしていると、悠人も帰宅し、3人でお祭りの手伝いの話で盛り上がった。

悠人が従える白龍の巫女は、現在高校3年の九条祈梨だ。一昨年、彼女が明王の高校に入学した時にわかった。祈梨は悠人と出会ってからは、神明神社の神事なども手伝っていて、今回も巫女として手伝いをする。


まだ将来的なことはわからないが、悠人たちは割と上手く行っているようだ。

一方黎人の小龍には、まだ巫女が見つかっていない。湊人は幼馴染の千織が、巫女になる。

和嶺のように、子どもの時に巫女と出会う人は少ないという。だから、黎人も別に焦る気持ちはないが、それでも羨ましいな、と思うらしい。


GW中、陽織は両親に連れられて京都の神月の家に行くことになった。兄2人はアルバイトと受験勉強でお留守番だ。留守中の家事はマリーさんとリリーさん、2人の精霊が面倒を見るようだ。

他の家は使用人がいるところもあるが、わけのわからない人を家に入れる危険性を考え、両親はいつもこの2人に任せていたらしい。

スケート三昧で家族旅行すらしたことがなかった陽織は、全く知らなかった。

というか、スケート以外で遠出をすること事態が初めてだった。


新幹線の駅を出ると、神月の総本家の車が迎えに来ていた。すごい車だ。黒塗りの外車。しかも運転手付き。

京都の街は東京と違い、高層の建物がほぼない。そのため、周囲の景色もよく見えた。大通りの先には京都の街を見下ろす山が鎮座し、ドームの観客席のように囲っている。すり鉢状の地形が夏は暑く、冬は寒い京都の街を作っていると思うと、陽織は一番住みたくないなー、とぼんやり思った。


大通りの両側には、聞きなれない京都独特の通り名が書かれた標識か見え、外国の街に来たみたいだ。街のあちらこちらに、大小様々な神社やお寺の姿が見える。小学生の時も中学生の時も、修学旅行に行ったことがない陽織には、新鮮な風景だ。

実家の近くにも、湯島という神社はあるが、これほど大きくはない。


しばらく走ると、右手に大学が見え、その先を右に曲がった。大きなお屋敷の門が見え、車はその中に入っていく。門を入ると緑の木々に美しい花。よくスケートを滑っている時、コーチからテクニックはあるが、情緒が足りないと言われたことがあった。

確かに、こういった風景を見て、美しいとか清々しいとか、感じたことはあまりなかったかもしれない。


やがて車は大きな玄関の前で止まり、運転手の人がドアを開けてくれた。

(すごい、お嬢様みたいだ。)

車を降りると、大勢の使用人が陽織たち家族を出迎えた。宿泊用の荷物を父から受け取る使用人。部屋へ案内する使用人。そしてお茶を淹れる使用人。

(たぶん人間、だよね?)

両親と一緒にかしこまっていると、パタパタと足音がして、着物姿の男性が入ってきた。

「高樹くん、久しぶりだなー。陽香(はるか)さんも!」

男性は両親の前にどかっと座り、ニコニコと挨拶をする。その男性が、大元の神月家の当主だという。

当主様は同じ神月でもかなり遠縁で、でもどこか父に似ていた。


総本家の当主は父と同世代で、神月隆弥と言った。総本家には、当主夫妻の他に前当主夫妻、陽織より2つ上、和嶺と同じ歳の娘が一人いる。

一人娘なので、いずれは婿養子を迎えることになる、ということだ。

当主と両親が話し合いをする間、陽織は神月の庭を見てこようと思い外に出た。


神月総本家の庭は、ちょっとした庭園になっていて、多くの種類のバラが咲き乱れるバラ園がある。他にも蓮が浮く池があったり、散歩するだけでも楽しい。

陽織がたくさんの花に囲まれて、クルクル回っていると、いつのまにか後ろに、一人の青年が立っていた。


陽織は、びっくりして転びそうになったが、青年が腕を掴んで引き起こしてくれた。

「大丈夫?」

陽織は、青年を見つめる。青年の服装は見たこともない和風の格好だ。

(お雛様の五人囃子みたい。)

陽織はそう思った。すると青年はふっと笑い

「そうだね。わたしは1,000年以上前の人間だから。」

陽織は青年の言葉に目を丸くする。

「神様‥ですか?」











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