↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/276

陽織、結界内で過ごす

わたし、神城美織が陽織たち神月家の人たちと初めて会ったのは、小学校五年生の曽祖母の法事だった。

祖母は神月家から神城に嫁いだ人で、その日は祖母の母の十三回忌だった。

たくさんの大人たちの中で、陽織は誰よりも姿勢が良く、手足が長く、すごく綺麗な子だった。しかし、法事に出たくなかったのか、周囲の大人の嫌な空気を感じ取っていたのか、ずっと帰りたい、つまらない、と駄々をこねていた。

神月家の末娘、陽織は巫女の力も、見鬼の才もない。さらにわがままで、学校もまともに行かず、好きなことをしている。そう噂されている。神月家本家の法事に来ている人にも、陽織は見下されていた。


法事中も、ずっとわがままを言う陽織の様子を見て、さらに周りの大人たちはヒソヒソと悪口を叩いていた。

でも、大人の人は気づいていないかもしれない。彼女の周りはすごく清浄な空気が流れていることに。

わたしは巫女なので、なんとなくその空気がわかる。それに、彼女の近くには、可愛く清らかな白ウサギの姿もあった。わたしがそんな陽織の様子を見ていると、いつのまにか、わたしの横に青い龍が並んで立っていた。


わたしがその龍にニッコリ笑いかけると、龍はわたしの方に、すり寄るようにしてきた。

龍とわたしの様子を見た神月家の先代、祖母の兄が

「青龍の巫女。」

と言って、青龍を従えていた和嶺様を連れてきた。

これが、わたし神城美織と陽織、わたしと青龍、そして和嶺様との出会いだった。


陽織は自分の力を隠すことも、封印することもできないなら、その神様とやらに会うことがなければ良いのだ、と考えた。

そこで、陽織は自分の考えを両親に話し相談をする。

2人は眉間に皺を寄せて黙っていたが、陽織の気持ちはわかる。だからこそ、今まで周囲に何を言われようと、陽織の力を封印してきた。

わけのわからない神様なんかに大切な娘を奪われるなんて!そう思っていたから。

しばらくすると、2人はため息をついて、色々と試してみよう、と言ってくれた。


しかしそれ以前に、神様が一体誰に転生しているのかわからない。そこから、今現在、陽織が出会っていない人だろうと考える。

そこからは和嶺も入り、名簿を作成することにした。

そこで、まずは今のクラスメイトは除く。陽織の力を見ても何も言ってこないというのは、おそらく神様ではないだろう。それが家族の共通認識だ。

それでも神様が転生した、という条件に当てはまる独身男性は、山のようにいる。それに必ずしも十神家ではないかもしれない。


もっと考えると東京にはいない人なのかもしれない。それなら、それで少しは時間が稼げる。

と父が言うと、なんの時間か?というのが母と兄の意見だ。

今できる対策は、とにかく転生した神様に、陽織が会わない、ということだけなのだから。

「後は、結界かな?神様相手に効果あるのかわからないけれど。」

和嶺が渋い顔をして言ってみた。本当に言ってみただけだった。しかし、それでも、それ以外の方法が思いつかない。


「結界、結界、結界と‥。」

父はそういうと、徐にスマホを取り出して誰かに電話をしている。

しばらくすると、別邸で暮らす祖父母がやってきた。

「なるほど、結界かー。それなら、陽織を外に出さないのが一番良いのではないか?」

いきなり祖父がそう言ったので、陽織はそれは嫌だ!と膨れた。

「確かに家に閉じ込めるのは、ちょっとかわいそうだわよねー。」

祖母がいうと、うんうん、と母と陽織は大きくうなづいた。

(まるで、幽閉されるみたいじゃないか〜!)

「だいたい、高樹の封印の腕が悪いんだぞ!陽織の成長と共に弱って綻び始めるから!」

祖父は自分の息子に責任を押し付けようとしている。

「わたしは封印が専門ではない!だいたい陽織の力は尋常じゃないくらい強いんだ!」

と父が言い返す。ここで争っても、何もならない。やめて欲しいと陽織は思う。

和嶺は「まあまあ。」と2人の間に入って止めた。


「先ほど父上が、結界と言っていましたよね?」

和嶺の方にみんなが顔を向けた。

「家の中や学校内で、今のところ何も起きてない。それなら、やはり結界の効果はゼロではないと思います。そこで陽織は毎日車で通学する。車には常時俺か兄上、父上の誰かが一緒に乗って車全体に結界を張る。陽織自身にも結界を張ってもらう、というのは?」

「可能な限りの多重に結界を張っておく。で、良いですね?」

和嶺は祖父母と両親に確認するように言った。

「そのためにも昭和最強と言われていたお祖父様の力もお借りします。」

父が祖父母を呼んだのは、こういう意図もあったのか。陽織は納得する。


翌朝から、わたしの周りは結界が何重にも張り巡らされていた。2人の兄、両親、祖父母、さらに自身の周りは自分でも。

ただ陽織はまだ結界の張り方を知らないので、昨晩父から教えてもらった急ごしらえだ。


学校に着くと、学校、校舎、教室にも結界があるので、家族の結界は解かれるようにした。厳重すぎて重い。物理的に、というよりも精神的に。

「おはようございます、陽織ちゃん。」

教室の前で和嶺と別れると、美織がやってきた。

「今朝は和嶺様も、ご一緒だったのですね。」

美織は和嶺を見て、ほんの少し頬を赤らめている。

2人は10歳のあの時から、一応許婚?のような関係と扱われている。


再従兄弟では血が近すぎるのでは、という意見もあったが青龍が認めたこともあり、一応、ということになった。

陽織は2人を廊下に残して、教室の中に入った。

廊下では、和嶺に話しかけたいのに躊躇う女子たちが、2人を遠巻きにして美織を羨んでいた。


「お前、なんかすっごく厳重に登校してたな?」

教室に入ると湊人が呆れたような声で、話しかけてきた。

「おはようございます。まずはおはようではないの?」

陽織に言われ、湊人は小さな声で「おはよう」と言う。

「封印するのがダメなら、結果の中で生活することにしたのよ。ぜったに見つからないようにするのだから!」

陽織が答えると、湊人はなにから?と不思議顔だ。

「だって、お前の周りって美織よりも清浄な空気がダダ漏れているから、魔物とか、悪霊とか寄り付きにくいじゃん!」


陽織は湊人の言葉に驚いた。今まで誰からもそんなことを言われたことがない。気にしていなかったからなのか、以前は封印されていたからなのか。それとも見えなかったので、関係なかったのか。

意識すると力が強くなる。

「うわっ、お前やめろ!他の奴の使役魔物が消し飛ぶ!」

えっと顔を上げると、陽織の体がうっすら光っていた。

(なるほど。これは結界でちゃんと防げているのかな?それにしても、こいつ他の女子にはお前呼ばわりしないのに、本当に失礼な奴だなー。)

陽織は自分のことを棚に上げてそう思った。



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。