陽織、色々考える!
陽織の言葉に、大神先生だけでなく、周りにいた先生や生徒も呆然とする。
それはそうだ。生まれた時から、この世界を当たり前として生きていた人間にはわからない。極々普通とは、どういうことか!陽織も充分に普通ではないが。
それでも色々限界を感じていた陽織にとって、このクラスの勉強は、重荷だった。
「ちょっと、それってわたしたちがのほほんと、毎日過ごしているみたいじゃない!」
女子出席番号1番の犬神鈴奈が叫んだ。
「わたしだって、たいした力ない上に、勉強もくらいつていくの必死なんだけど!」
鈴奈の言葉にうなづく生徒が何人かいた。
「だよなー。俺なんてやっと使役した魔犬、さっき消されそうになったし。」
陽織は、ごめんなさいと、心の中で謝る。でも、あいつは以前湊人と一緒に、陽織を無能呼ばわりしていた奴だ。謝ったものの(心の中で)、ハタと気づき逆に睨み返した。
「無能って言ってたくせに。」
陽織がそう呟くと、湊人をはじめ散々馬鹿にしていたクラスメイトが、顔を見合わせる。
大神先生は、そんな雰囲気をどうにかしたい、と思ったのか、また手を叩いた。
「ほらほら、まだ授業中です。各先生の指示に従って練習しましょう。」
陽織の周りに集まりそうになっていたクラスメイトが、散っていくと湊人と美織だけが残った。
「陽織ちゃん、大丈夫そうだから、わたしも戻るね。」
美織はそう言って、パタパタとじぶんの班に戻って行った。湊人は気まずそうに
「馬鹿にして、悪かった。」
と小声で言う。
「うーん。それにしても力を封印ですかー。陽織さんの力はわたしでは無理ですね!」
大神先生、ちょっと悩んで、そのあと笑って、人差し指を上に向けて言い放った。その嘘くさい顔を、陽織は信じられなかったが。
(絶対嘘だ。)
(ぜってー、嘘だ!)
どうやら湊人も同じように思っているのか、信用していないぞと言いたげな目をしていた。
「本当にそう思っているの?見えなくなると、白桃くんも見えなくなるよ?せっかくきみにもらった名前、気に入っているのに。」
大神先生の言葉に、陽織は腕の中にいる白桃を見た。本当に?と陽織が聞くと、白桃はニッコリ笑ってうなづく。そんなことを言われたら迷う。でもやっぱり、神様の、っていうのだけは嫌だ。
その気持ちだけ譲れない。
その日の夜、陽織は家族にこの二週間に思ったことを相談した。
今まではお金のこと以外で、誰かに相談するなんてなかった。相談しても、仕方ないと思っていた。でも今は。家に帰ったら、まずは2人の兄に相談しよう。
俺は神代湊人。一応銀龍を従える、結果色々強い高校一年生だ。俺には大学一年になる、双子の兄がいる。1人は悠人、明王大学経済学部一年で白龍を従えている。もう1人は黎人、同じく法学部一年で可愛い小龍を従えている。と兄弟3人龍を従える、十神家では有名な3兄弟になる。
兄2人は誰が見てもカッコよくて、頭良くて、優しくて、家族自慢の兄たちだ。
そんな兄たちのようになりたい、と日々努力を重ねた結果、俺は同学年では、誰もいない龍を従えることができた。もちろん、勉強もがんばって、とにかく色々頑張っている。
同学年には、女だけど俺にとっては一番のライバルで、絶対負けられない神城美織がいる。でも俺はオールマイティに色んな力が使えるが、美織は巫女の力しかないから、勝った!と、内心思ってた。
しかし、ここに来て能無しだと思ってた奴、もう1人が現れた。俺の尊敬する先輩、神月和嶺先輩の妹だ。
ウチの兄たちは高嶺先輩や和嶺先輩と仲が良い。そのためか、あまり妹のことを悪く言うことはなかった。
中学の時、明王大学の附属中だったが、妹はいなかった。噂では力のない、何もできない奴ということだった。クラスメイトの親や、十神家の大人が集まると、神月家の親はかわいそう、娘が能無しで惨めだ、という話だけは耳にしていた。
あんな、尊敬する先輩たちの妹のくせに!
ずっとそう思っていた。
でも違った。本当はすごい奴だった。なんで今まで隠してたんだ?そう思ったら、また腹が立ってきた。その上、先生に力を失くして欲しいなんて、馬鹿なことを言っている。確かに、勉強もあまりできないみたいだから、馬鹿なのかもしれなが。
その日家に帰って、兄たちにその話をしたい!と思っていたが、兄たちは仕事が入ってしまい、数日は家を留守にするということだった。




