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陽織、力を封印する!

入学から2度目の土曜日。この1週間でクラスメイトの半分以上は何かしらを使役しているようになった。


授業の前に、陽織は白桃の姿がないことに気づいた。

キョキョロ見回すと、なんと大神先生と話し?ている。しかも笑いながら。

(わたしだって話したことなんてないのに。このヤロー!主人を差し置いて!)

始業のチャイムが鳴ると、大神先生はわたしの手元に白桃を返してくれた。

色々と言いたいことはあるが、今は我慢だ。

パンパンと大神先生が手を叩いた。

「今日はみなさんが、自分の力の種類と強さをきちんと理解して、コントロールする、ということをお話しします。」

そう言って、わたしたちは教室から専用の体育館のようなところへ案内された。


「この部屋は結界が貼ってあり、わたしが招き入れたモノだけが入室できます。」

いつのまにか、大神先生の隣には、他の先生が数名立っている。

「これから、能力の種類によって暫定的に班を分けます。まず火の力を持つ人は。」

大神先生の指示でそれぞれが分けられる中、陽織と神代湊人だけは大神先生の担当になった。

湊人は当然面白くない顔をしている。逆に、違う班になってしまった湊人の友人、神道聖矢はこちらを羨ましそうにチラチラ見ていた。


「神月さんは、こういったことは初めてと聞いています。まずは何ができるか、から始めましょう。」

「神代くんはオールマイティに何でもできます。だからここで、それぞれの力をうまく応用することを学びましょう。」

大神先生は、それぞれに向いて説明をしてくれた。


「それでは神月さん、えっと生徒会長も同じ苗字なので、陽織さんと呼びます。神代くんも、湊人くんで良いですね?」

大神先生が、ニコニコとフレンドリーな笑顔で2人に言った。正直、2人はドン引きしている。

「では、先に陽織さん。この部屋はわたしたちの結界があり、さらに学校自体にも強烈な結界があります。思う存分、自分の力を解放して下さい。」

思う存分、と言われても陽織は何をしたら良いかすらわからない。 


疑問符を大量に浮かべる陽織の様子を察したのか、大神先生が手をポンと打って続けた。

「たとえば、この部屋の誰かを守りたい、とか、誰かが放った術を弾き飛ばしたい、とか思ってみて下さい。」

陽織はその時、美織が火の術者の炎を受けて、軽く火傷した、という様子が目に入った。別に美織を絶対に守りたい、とか考えたことはないけれど。


誕生日の日、父に言われて氷を大量に生産したことを思い出しながら、(火傷、怪我治す、治す、治す)と祈ってみる。


気がついた時、陽織は部屋の隅にあるソファーの上で横になっていた。

???

「あ、陽織ちゃん、気がついた?」

目を開けると美織が顔を覗き込んでいた。

「あれ?えっと。わたし。」

「陽織ちゃん、すごかったんだよ!なんか陽織ちゃんから白い光が大量に溢れた、と思ったら部屋の中にいたみんな、ちょっとした怪我、全員治っちゃって。藤原先生なんて、肩こりと腰痛が改善したって喜んではしゃいじゃうし。アハハ。使役したばかりの魔物がいた子なんて、危うく魔物消えそうになって、大慌てだったんだよ。」

美織は笑いながら、あの後の様子を話してくれた。

「もう、湊人くんなんて一番近くにいたから、銀龍様を急に大きくされたって怒ってたんだから!」

美織はクスクス笑いながら話す。


その後、美織が手を振ると大神先生もこちらに近づいてきた。

「目が覚めましたか?陽織さんが氷の力を使ったことは伺っていましたが。なるほど、陽織さんもオールマイティのようですね。」

「良いなー。何でもできる。わたしなんて癒しの力しかないのにー。」

美織がちょっと膨れると

「いやいや、美織さんの癒しの力は、先程の陽織さんの力に匹敵する強さですから。」

と宥めるが、それは慰めになっているのだろうか?


「あの、わたし何でもできるんですか?」

陽織が聞くと、大神先生は目を丸くして顎に手を当てた。

「そうですねー。今のところは、予想の範囲ですが。」

「それじゃ、自分の力を封印できますか?」

陽織の質問に、美織も大神先生も、さらに驚いて目を見開いた。

「えっと、陽織さんは、力封印したいの、ですか?」

大神先生の質問に

「はい。わたしSクラスじゃなくて、普通のクラスが良いんです。」

陽織の言葉に2人は困惑する。

「だって、だって、その、勉強、ぜんっぜん、ついていけないんです!」

陽織は、この2週間で一番悩んでいたことを、大声でぶちまけた。


それはそうだ。今までスケート三昧で小学生の頃からロクに学校に行っていない。海外遠征に必要な語学、地理、他国の政治経済、スケートの時に使う物理や数学、身体を作るための食に関する生物や化学。

それ以外は全て興味の範囲外だった。それでもスポーツ推薦に必要な成績には充分。

本が好きだったので、現代国語はともかく、古文なんて基礎の基礎さえ、ちんぷんかんぷん。俳句や短歌なんてゴシチゴって何?

術者なら常識の日本史も、〇〇時代っていつ?くらいのもの。百人一首なんて触ったこともなかった。


他の一般クラスならともかく、能力だけでなく学力も超一流のSクラスは、はっきり言って重い。

加えて花嫁なんて、無理無理無理!

陽織は二週間にして、もはや限界を感じていた。


「力がなくなれば一般クラスに移れるって聞いてます。お願い!力を封印する方法教えて下さい。もしくは、先生、わたしの力を封印して!」











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