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陽織、対策を練る!

入学式から2日。今日は学校のオリエンテーションなるものがある。自己紹介をしたり、クラスの係や委員を決めたり、学内のオンラインに入るためのアクセス方法を教えてもらったりする。

(へえー、こんなことやるんだ。)

陽織は普通の学校生活をしたかったわけじゃない。というか、普通の学校がどんなものか知らない。このクラスだって普通ではないが、今まではもっと普通ではなかった。と思う。

中学の入学式は、海外の大会に行っていた。運動会や体育祭も知らない。いつも大会や遠征とぶつかった。夏休みは、ほとんど合宿だった。クラスの中で、たぶん空気のような存在だったと思う。


「次、神月さん。」

担任の先生に言われ、前の席の楠木舞香を真似る。

「神月陽織です。区立第七中学から来ました。よろしくお願いいたします。」

当たり障りのない言葉、スケートを取り上げられたら趣味なんてない。特技もない。面白い話題なんて何も知らない。


校内見学の後は部活紹介だが、このクラスの子たちは普通の部活動はできないので、毎週土曜日に行われる授業についての説明があった。

初めが使役するモノについて、と知るとクラスメイトの目の色が変わる。

式神や従者、精霊をすでに持っていない者はもちろん、持っている生徒も興味深々に聞いている。

が、陽織には何を言われているのかさえ、さっぱりわからない。

陽織は、あの日父から白桃をもらったが、すでに陽織の血で契約されていた。

わたし、血なんてあげたっけ?

陽織はずっと不思議に思っていたが、興味がなかったので、白桃をペットのように、可愛いがった。

しかし昨日の湊人の話では、白桃はかなり上の存在らしい。どうして自分と契約したのか?やっぱり、父が言っていた神様の花嫁、というのが関係あるのだろうか?


Sクラスは、毎週土曜日に神様から受け継いだ能力についての授業がある。

最初の授業は、オリエンテーションの時にもあった使役するモノについてだった。

「みなさんの世代は、神龍様が転生されているので、龍を使役している人が多く出ています。」

授業担当の大神先生は湊人の後ろにいる、人くらいのサイズの銀龍を見ながら話を始める。

「代表的な人では、生徒会長の神月和嶺くんが、青龍を従えているのを、みなさんも入学式でご覧になっていますよね。」

言われてみれば、和兄さまが龍之介を後ろに従えていた。龍之介は正直大きい。よくホールの壇上にいるなと思った。

陽織はそんな呑気なことを考えているが、周りは皆憧憬の目で、和嶺の姿を思い出している。

(兄さまのカリスマ性、こんなに高かったんだ。)

「そして、神龍様が転生されているということは、みなさんの世代のどこかに、神龍の花嫁、つまり神様の花嫁もいる、ということです。」

先生の言葉に、陽織はビクッとして目を逸らす。


(そうか、神様って白髪と長い髭のおじいちゃんではないんだ。は、いかんいかん。絶対嫌!だって花嫁なんかになったら、やっぱり死んじゃうかもしれないじゃない!)

と、陽織は断固否定するが、他の女子は気持ちうっとり顔だ。

「神龍様の転生なんて、絶対イケメンですよねー。」

「当然ですわ!しかも永遠の若さと命を受けることができるそうですわよ!」

はあ?何言ってんのこの人たち。


「先生!神龍様の花嫁ってもう決まっているのですか?」

「神龍様って、どんな方なのですか?」

女子の興味は半端ない。

「とにかく300年以上ぶりだからね。資料によれば、神龍様は生まれた時から、本人は知っているということだ。花嫁についての話はあまり触れられていないが、神龍様と出会うことで、すぐにわかるそうだ。」

出会うとわかる。

陽織は出会わなければわからない、ということを知った。

(出会わないことが大切なんだ!)

そう思ったが、つい声に出てしまった。

「出会わないことが一番!だね。」


わたし、神月陽織は花嫁とかいうモノから逃れることをずっと考えていた。スケートができなくなったことで生きがい、と呼ばれるようなモノを失ってしまった。しかし、生まれて15年もの間能無しと呼ばれていたわたしが、急に力を持ってしまった。それはきっと、十神家の娘として喜ばしいことなのかもしれない。

そこで、なぜ両親がわたしの力をずっと封じていたのかを考えた。そして、わかる範囲で調べてみた。さらに、あの時母が悲しそうな顔をしていた理由。

おそらく神様の花嫁になってしまった人は。

きっと人ではいられなくなる?

神の世界のようなモノにいってしまう?

人の世の理から外れてしまう?


いずれにしても、プロスポーツ選挙や天才音楽家はもちろん、術者、陰陽師とか、そう言ったモノですらない、規模の違う"普通"ではなくなるのだろう。

だから、両親は周囲に何を揶揄されても"神月陽織"という存在を、この世界とは無縁にしておきたかったんだ。わたしが、全く違う世界で有名になったとしても、神の世界(こちら)に見つからないように。


とりあえず陽織は、現状のままで対策方法を考えることにした。
















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