陽織、霊力過多
結局、4人は2人の寝室、もとい黎人の寝室を堪能したら満足したらしく、家を出て行った。
どっと疲れた黎人は、もう来るな!と言わんばかりに、しっかり鍵を閉めた。
陽織は2人きりになると、黎人にプレゼントをわたした。初めての依頼でもらったお給料と、お年玉を足した数万円で買えるブランドのネクタイだった。
「え、と、黎人さんには安物、かもしれない。」
陽織が恥ずかしそうに渡すが、黎人は大満足で、ギュウギュウ陽織を抱きしめられる。
「嬉しい、嬉しい!すっごく、嬉しい!今度父上の仕事を手伝う時に使おう!」
気づくと6時を回っていた。
陽織は、今日こそは門限重視!と慌てて身支度を整え始める。
黎人も服を着ると、車を玄関の前に着ける。
家に戻ると、黎人はきちんと家の中まで陽織を送り、両親に挨拶をした。
しかし、問題はその後だった。
黎人が帰ると、父が陽織の服に気付き、昨日と違う服をなぜ着ているのかを詰問して来た。
そこから、ここのところ、恒例の大喧嘩が始まる。
陽織は、父と喧嘩した後、自分の部屋に閉じ篭もる。
母は、夕飯も食べずに自室にこもってしまった陽織を心配するが、父は我関せずだ。
しかしそれは、数分も続かなかった。
陽織の部屋からどさっという大きな音がして、隣の部屋の和嶺が慌てて陽織の部屋のドアを叩く。
中から何も音がしない。
「陽織、陽織?」
和嶺は青龍を出すと、鍵穴を中から開けさせた。
陽織が高熱を出して倒れていた。
呼吸が弱く、脈は速くなったり、遅くなったりを繰り返す。血圧も、上がったり、下がったりと、通常では考えられない症状を現していた。意識もない。
急に、なぜ?
さっきまで、父と喧嘩をするくらい元気だったのに。
名医と呼ばれ、現在明王大学病院の院長を勤める父でも、陽織が倒れた原因も、高熱の原因もわからなかった。
そのまま陽織は明王大学病院に救急搬送され、血液検査やMRIなどを受ける。
しかし、全く異常は見られない。そこで、唯一の心霊内科神鬼の元に運ばれた。
原因がわからないとなれば、もう一つ考えられるのは、霊的なことしか考えられない。
神鬼は陽織を一目見て"霊力過多"であると、判断した。霊力の枯渇は良く言われているが、霊力過多はみんなにとって初めてだった。
神鬼曰く、多過ぎる霊力が体の中で暴走していると。
1番の対処法は、陽織の霊力を好む妖や悪霊の前に差し出して、霊力を貪ってもらうこと。
2つ目は、陽織に今すぐ霊力を使うような戦いをしてもらうこと。
しかし、この2つはどう考えても不可能だ。
そして3つ目は、霊力過多の原因となった者に、霊力を吸い出してもらう、という方法だった。
「霊力過多の原因。」
と言われて、全員原因となった人物に心当たりがあった。しかし、父親は、苦い顔をしている。認めたくない、と。
「でも、父上、そんなことを言ってる場合では無いと思います!」
高嶺に強く言われ、黎人を呼び出そう、とした時、和嶺の目の前に、忽然と黎人が現れた。
「あれ?黎人さん、勉強していたの?」
黎人が珍しく眼鏡をしている。
「あれ?和嶺が呼んだの?うん、できるだけ飛び級で卒業しようと思って。司法試験も早く合格したいし。あれ?でも、僕を呼んだのはハクだったような。」
「真面目だなー、やっぱり黎人さんは。なんか陽織が邪魔して、申し訳ないよ。」
2人は、なぜか世間話をしている。
「そんなことないよ。陽織が眠ったあと勉強できるし、しかも、陽織を抱いた後は、勉強が捗るんだ!」
と、微笑む黎人を見て、父親以外の全員が固まった。
「黎人さん、地雷。」
?黎人が振り向くと、背中に鬼の形相の神月父と、ベッドの上で機械に繋がれた陽織、神鬼の姿があった。
「陽織?どうして?なんで陽織が!」
黎人が近づこうとすると、父親が手を振りかぶった。
高嶺と和嶺は、その腕を両側から掴み、神鬼は
「ハイハイ、黎人さん以外は、全員病室から出てください!あとは、私に任せて!」
と、全員を追い出した。




