陽織、甘える
「たっだいまー!」
黎人と陽織が元気に帰ってくると、リビングに彩奈がいるだけだった。
「あれ?みんなは?」
陽織が聞くと
「翔太は部屋で爆睡ー。和嶺たちはどっかにいるー。湊人たちもどっかにいるー。たぶんこの4人は、イチャコラしてるー。」
と、彩奈が書類と睨めっこしたまま答えた。
「えー?ずるい!僕たちが買い物してる時に!」
と黎人が唇を尖らせると、
「お前らは、万年イチャコラしてるだろ!」
と彩奈が半分キレた。
「あ、ごめん。で、夕飯は?」
「バーベキューで良いかな?と。」
「そだねー。」
と、また書類に没頭する。
「じゃあ、僕たちはバーベキューの用意をしようか。」
と黎人と陽織は、キッチンへ行った。
陽織が、野菜を切ったり、お皿を用意する間、黎人はコテージの庭にバーベキューのセットを用意する。
すると、その様子がバルコニーから見えた和嶺と、美織が降りて来て、手伝い始めた。
そのうち、匂いで目が覚めたのか翔太が起きて来て、湊人と千織も、やって来た。
「彩奈さんも、終わらないようなら後で僕が手伝いますよ。」
と黎人が笑って皿と箸を渡した。
「そうだな。どうせ報告書出すのは帰ってからの明後日だし。」
そう言って、彩奈もみんなと一緒に夕飯にした。
その夜は、陽織と黎人以外は、3人ずつ分かれて休む。
黎人は、部屋の鍵を閉めると、しっかりと防音結界を張る。さらに陽織も防音結界を張った。
そして、やっと2人きりの時間を楽しんだ。
「やっぱり静かすぎる。」
湊人がぼそっと言う。
「何言ってんの?」
と翔太が湊人に尋ねた。
さっきまで寝ていたので、正直目が冴えている。
「昨日までは、部屋の中で歩く音とか、小声で話す声とか、聞こえたんだ。」
「湊人、隣の部屋、盗み聞きはよくないよ。」
「いや、盗み聞きじゃない!俺は聴力がすごく良いんだ!」
「だから?」
和嶺も、2人の話が気になり、起きてしまった。
「なのに、なん、にも聞こえない!」
「静かに寝てるだけじやね?」
「イヤイヤ、ベッドが軋む音や、ベッドに入った音さえ聞こえない!」
和嶺と翔太は呆れる。
「絶対!防音結界張ってる!しかも、二重の!」
‥‥‥
「もう、良いじゃん!きっと聞かれたくないことを話しているんだよ!僕は疲れたから寝る!」
と、和嶺は布団を被った。
しかし、目が冴えている翔太と、気になる湊人はなかなか眠れなかった。
そして翌朝。
陽織はいつものように、黎人の胸に抱かれて眠っていた。黎人も、陽織を抱きしめて寝ている。
陽織は黎人の肌の温もりが好きだった。黎人に愛されたあと、そのまま素肌で眠る。黎人の心臓の音を聞くと、なぜか安心できる。
「陽織?おはよう。」
陽織が目をこすりながら、黎人の胸にもう一度、頬をうずめる。黎人は、そんな陽織が可愛くて仕方ない。
「おはよう、黎人さん。」
と甘えた声で答える陽織の唇にキスを落として、もう少しこの温もりを楽しみたい、と思った時
どんどんどんどん!
と部屋の扉が叩かれた。
バスローブを羽織っただけで扉を開けると、
「黎人!助けて!神嶋が8時に来る!」
と彩奈が涙声で、部屋に入ってこようとした。
とき、ベッドの上で、裸の上にシーツをまとうだけの陽織と目が合う。
「あ、ごめん、お楽しみのところ。」
と、部屋から出ていった。
「違う違う!彩奈さん!今、起きたところです!」
気まずい!本当に気まずい!
と、思いながらも、とにかく8時までに報告書を仕上げる、と言う彩奈を手伝う。




