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陽織、眠る

10人は海に着くと、立ち入り禁止のテープをくぐり、中へ入る。

一応、彩奈が警察関係に話をつけている。


その後、拓哉の紫龍、高嶺の黒龍、和嶺の青龍、湊人の銀龍が放たれる。

「探せ!」

という言葉と共に。


昨夜、ずっと陽織を看病していた黎人は、正直寝不足だった。ベッドの中で眠りについた陽織を抱きしめながら、自分も仮眠をとっていた。

しかし、四龍が放たれた瞬間、目を覚ました。


そして小龍を呼び出すと、海に向かって放つ。龍たちの主になる黎人の力があると、四龍の力はそれだけ強まる。


龍たちは、海の中から浜辺、浜の裏側の街中、あらゆるところから元凶を探す。


どれくらいの時間が経っただろう。

「見つけた!」

「見つけた!」

龍を放って、1時間以上が過ぎていた。


和嶺と、黎人が同時に海の底に蠢くものを見つける。

巫女のいない、拓哉と高嶺は、限界が近い。

脂汗を浮かべる和嶺の手を美織が、湊人の手を千織が握っていた。


見つかった霊の元凶となるものは、周囲に漂う無関係な骨や、昨日溺死させたサーファーの身体をも使い、龍に襲い掛かる。


場所は沖合にある大きな岩場の底。潮の流れの関係で、人がなかなか立ち寄りづらく、逆に遺体が底に溜まりやすい場所だった。


そのために、災害や事故などで打ち付けられた、たくさんの遺体が、海の底に集まっていた。


高嶺と拓哉は、最後の力で、紫龍と黒龍に、大量の遺体や骨を砂浜へと吹き飛ばす。

浜に打ち上げられれば、剛志の緑鬼や彩奈の狐が待っている。


大神先生も、初めて銀狼を出していた。

「初めて、見た!」

「カッケー!」

湊人たちが感嘆の声を上げた。


黎人は隣で眠る陽織を見ながら、明王大の心霊内科の医師神鬼に言われたことを思い出す。

「巫女の霊力はね、妖や幽霊が好むんです。その中でも、神様の花嫁の陽織さんは、極上だ。どんな小さな妖や悪霊でも、彼女の力に惹きつけられる、味わいたくなる。

もし、彼女に触れる霊がいたら、徹底的に叩き潰して下さい。

少しでも残っていたら、だんだんと彼女の体を内側から蝕んで行く。」

黎人がその言葉を痛切に感じるのは、さらに20年を過ぎてから。


「本来なら16歳で神様に嫁いで、ずっと守ってもらうのが一番安全なんです。でも、今の法律では18歳。しかも、ウチの院長(タイショウ)にとっては、15年も大事にしていた一人娘ですからね。頭ではわかっていても、おいそれと、赤の他人に奪われたくないんですよ。

しかも、陽織さんは元アスリートだ。体力や運動神経にかなり自信があります。多少の無理をしても、大丈夫!と、自分を過大評価しています。

逃げるより、立ち向かっちゃうんですよね。根本が負けず嫌いだから。」

神鬼は、陽織をよく見ている。

第三者だからこそ、というのもある。


ああ、本当だ、と、今回のことを思い出して、頭を抱えたくなった。

あの時、子どもを助けるために、自分と体の位置を入れ替えた陽織。

あんなことは、他の巫女では簡単にできない。


その時、青龍と銀龍の気配が変わるのを感じた。


砂浜に打ち上げられた有象無象の骨や遺体は、陸上部隊によって、跡形もなく消え去っていく。


海の中は、青龍と銀龍が、元凶となる地縛霊との激闘を繰り広げていた。


捜索からずっと2体の龍を操る和嶺と、湊人にも限界が来ていた。

和嶺が崩れ落ちそうになった時、美織は咄嗟に和嶺の唇に自分の霊力を吹き込んだ。


目を見開く和嶺に、美織がうなづく。

和嶺は、美織の肩を抱くと、再度青龍に力を込めた。


それを見た千織も、真似て湊人に初めて自分からキスをした。


その途端、青龍と銀龍が重なり合って、一つの竜巻のように、地縛霊へと突き進んだ。


大きな爆音とともに、岩が砕け、白銀の光が沖に立ち上がる。


「終わった?」

「やった!」



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