陽織、助っ人に怯える
ベッドの中の陽織は、熱が高いものの落ち着いて来ている。
夕飯をとりながら、和嶺は彩奈と黎人がいない今、5人の中の最年長として、明日の話を始めた。
「まだ、肝心の元凶がわかっていない。今日のところは大人しくなったかもしれない。しかし元凶を断たなければ、また同じことがくり返される。」
「彩奈さんからの連絡で、しばらくあの浜辺は立ち入り禁止になるようです。」
美織が付け加えた。
「一般人の犠牲者も出ましたからね。」
千織は、青い顔をして俯く。今でも沖合で、もがきながら、海中に引き摺り込まれた人の姿が、忘れられない。
結果、沖合で海に引き摺り込まれた、サーフィンをしていた人が、数名犠牲になった。
浜辺の近くにいた人は、なんとか助け出すことはできた。しかし、あの時、あの海にいた人全員を、助けられなかったというのは、今回の失態だ。
「神嶋さんは、仕方ないというかもしれませんが、犠牲者を出さないということは、一番大切なことですよね。」
湊人が和嶺に向かって問いかける。
「僕も、一般の人がいる現場は初めてなので、詳しいことはわからない。黎人さんも、初めてだと思う。彩奈さんならわかるかもしれないけれど。」
その時スマホを見ていた翔太がみんなに画面を向けて言った。
「ネットニュースでは、突然の大津波、となってる。サーフィンをしていた人の犠牲者は2人。一応災害事故で、処理している。」
「そこで、明日は一般の人が入らない中で、徹底的に調査をしようと思っている。黎人さん、彩奈さん抜きで、手伝って、下さい。」
最後は和嶺が、頭を下げた。
「イヤイヤ和嶺先輩が、頭下げることじゃないっす。これは、神嶋たちの読みが甘かったんだから!」
翔太が拳を握って力説する。
「いや、明日は僕も行くよ。」
と入り口から黎人の声がした。
「黎兄は、陽織のそばにいてくれ!」
と湊人が反論する。
その時、黎人の背中から、彩奈がひょっこりと顔を出した。
「喜べ!明日は強力な助っ人が来る!」
だれ?と、期待と不安の顔が入り混じった瞬間だった。
翌朝、美織と千織は、陽織が以前くれたレシピを元に朝食を作っていた。
起きられるようになった陽織には、黎人が美織特性のお粥を持って行っている。
陽織がベッドの上で体を起こし、黎人にお粥を食べさせてもらっていると、ドタバタとした足音がし、部屋の扉がバーン!と開いた。
「たか、兄様。と、せ?大神先生???」
「陽織!溺れたと聞いたけれど。」
そう言って、高嶺が陽織に駆け寄り、脈と熱を測り出す。
「まだ、脈は弱いし、微熱はあるみたいだね。今日終わったら、僕の車で帰ろう。良いね?黎人くん。」
高嶺は、陽織ではなく、黎人に向かって圧をかけて話す。黎人はそれを軽くスルーして、
「先生、お忙しいのでは?」
と、大神の方を向く。
「教え子たちの危機と聞いて、学校を代表して、助けに来た!」
大神先生は、どこか偉そうだ。
「あの、とりあえず陽織は食事中ですので、出て行ってもらえますか?」
黎人が負けずに睨み言い返すと、2人はすごすごと出て行った。
2人の他にも、幽霊屋敷の時に同行した神林剛志と神城拓哉が来た。
「拓哉兄様まで、いらしたのですか?」
従妹の美織は、少し不服そう。
「こちらの依頼は、意外と簡単に終わったんだ。で、みんなで打ち上げ、なんて話してたら彩奈から、SOSが入ってね。」
「陽織ちゃんが溺れたって聞いたら、高嶺が顔色変えて。そのまま現場から直行しました!」
「やー、高嶺が捕まるギリギリで高速ブッ飛ばすから、怖い怖い!」
2人は怖いと言いながら、ワハハと笑っている。
「大神先生は?」
「ん?神嶋さんがちょうど学校に来てた時に、連絡入って。誰か学校から1人応援だせ!って言われて、生徒の危機を救うのも、教師の役割だからね!」
と、なぜか楽しそう。
神嶋ーッ!
湊人と翔太の顔がすごく怖い。
そして
「どう?なかなかの助っ人でしよ?」
と、彩奈がドヤ顔で言った。
6人と助っ人4人がワイワイと騒いでいると、陽織の食器を下げに黎人が来た。
「あのー、皆さん、陽織が怯えていますので、お静かに。」
今世最強の術者、神様の圧力は半端なかった。




