陽織、女子会第二弾!
「と、言うわけなのー!」
翌朝、学校へ行き、陽織は友人たちから誕生日プレゼントを貰い、前の日の話をしていた。
「陽織ちゃん‥。」
美織が呆れた声を出す。
付き合い始めてもうすぐ一年。
美織はいまだに陽織のことがよくわからない。
「で、どうする?春休みの女子会第二弾!うちでいい?」
羽織が話を進めてくる。
春休みは短い。
ほとんどが春季講習で、休みがないに等しい。
その中で、一年生最後の女子会を開こう、と言うことになった。
Sクラスはクラス替えがないが、来年はほとんど選択授業で、会えない日もある。
羽織と陽織は、志望学部も学科も同じなので、このままなら大学へ進学しても一緒にいられる。
2人とも、明王大の農学部管理栄養士学科志望だ。
しかし、美織は国文学科、千織は外語学科と分かれてしまう。同じ文学部でも選択が異なる。
そこで、一年生最後の女子会だ。
3月末、春休みに入ってすぐ、4人は羽織の家に集まった。
湯島にある羽織の家は、陽織の家からは近い。しかし、美織や路線が異なる千織の家から徒歩で行くのは無理だった。
そこで、羽織の家に集合となった。
羽織の家は古くから続く老舗旅館。ホテルが主流の今は、外国人観光客に人気の宿となっている。
旅館の入り口ではなく、家族、従業員入り口というところから入り、羽織の部屋へ通された。
羽織の部屋も、今どき珍しく和室、畳敷きの部屋だった。以前は葉鳥と同じ部屋を使っていたが、流石に小学校高学年になった時、別の部屋になったと言う。
全室洋間の陽織や、マンションの千織には珍しい和室。2人は思わず、キョロキョロしてしまう。
「ねえ、あの天井にあるのは何?」
「これって夜はどうするの?」
と、次々と聞いてしまう。
「ウチは旅館もあるから、天井に空調がついてるの。夜は雨戸を閉めるよ。」
羽織は、2人の好奇心いっぱいの目に笑いながらも、一つ一つ答えてくれる。
「同じ和風でも、美織ちゃんの家と違うんだねー。」
と陽織が言えば、
「ウチは和洋折衷だから。」
と答えられた。
「今日も、ここにお布団敷くの?」
と千織がワクワクしながら聞くと、羽織があははと笑って、そうそう、と答えていた。
4人がワイワイやっていると、羽織の母が入ってきた。
「ごめんなさいねー。ウチはいつも忙しくて。」
お茶を出す羽織の母に、それぞれが持ってきたお土産を渡す。
「あらー、これ花園饅頭!あ、こっちは岡埜の栗饅頭!まあ、うさぎ屋のどら焼きも!嬉しいわー。また、太っちゃう!」
羽織の母は、太ると言いながらも嬉しそうに3つの箱を重ねて、いそいそと部屋を出て行った。
「ごめんねー、ウチの親慌ただしくて。」
羽織が言うが、逆に忙しいのにお邪魔して良いのか、少し気になってしまった。
「大丈夫、大丈夫!年中忙しいから、逆に好きにしていても、あまり怒られないし。」
羽織は、カラッと笑いながら言った。
羽織の明るさは、母譲りのようだ。
その時、ガラッと羽織の部屋が開いて
「そうそう、今日4人キャンセル出たから、夕飯、それ食べてもらって良いかしら?」
と羽織母が、声をかけてきた。
「もう、お母さんいつも言ってるじゃない!ちゃんとノックしてって!」
羽織が怒るが、陽織たち3人はお客様の夕飯をいただいて良いのか、少し気になった。
「大丈夫、大丈夫!その代わりお風呂は、ちょっと遅くなるけど、良いかな?」
「大丈夫!昨日なんて、父様たちからずーっとお説教で、お風呂入ったの、今日になってからだから!」
陽織が親指を立てて言うと
「え?また?誕生日の時も言ってなかった?」
と、美織が心配した。
「このところ、すっごくうるさいの。スケートやってた時は、どんなに遅くなっても、ゼンッゼン怒らなかったのに!」
と陽織が膨れた。
さすが旅館の夕飯は、格別だった!
前菜もデザートも、その一つ一つが繊細で、趣向を凝らしていて!
4人は、蕩けるような顔で、夕飯を堪能した。
そのあと、羽織の部屋へ行きまたもや、恋バナの時間になる。
「え?じゃあ羽織ちゃん、翔太と付き合うの?」
「え?あ、いや、付き合うって言うか、なんと言うか。」
新しい恋バナの登場に、みんな興味津々だ。
「で、でもわからないよ?だって幼馴染だし、今更って感じだし。お互い、フリーって寂しいよねーとかが、きっかけだったから。」
羽織が赤くなりながら話している。
しかし、美織も千織も知っている。
自由恋愛って良いなー、と。
「で、なんで陽織は、お説教されたの?」
傍観者を決めていたら、急に羽織が矛先を陽織に向けてきた。
「いや、その、世界史の小テストが。」
???
昨日は、春季講習前半最終日。2年から必修の世界史が始まり、最初の小テストがあった。
日本史ほどではないが、世界史の初めの方。なんとか文明、と言うところは、苦手だった。
陽織曰く、それを覚えてもお腹は膨れない!
それを黎人に電話で愚痴っていたら、テストの前の日、勉強を見てもらえることになった。
黎人は高校生の頃、世界史ではずっと全国模試で一番、共通試験も満点だった。
そこで、両親を説得し、勉強を見てもらうことになったのが一昨日。
学校からそのまま黎人の家に行き、早めの夕飯を2人でとり、7時から勉強が始まった。
そこから陽織には予想外のことが始まった。
勉強を教える黎人は”鬼"だった。
とにかく覚えて答えられるまで、徹底的に何度も質問される。
トイレ以外の休憩はない。
気づいたら、12時近くなっていた。そしてその時陽織は、意識を手放した。
気づいたら、浴衣の寝巻きを着せられ、黎人のベッドに寝ていた。隣には黎人が眠っている。
そして気づいたのは、朝6時!
しかも、お風呂にも入ったらしいが、覚えていない。
「あー、陽織寝付きいいもんねー。」
「サマースクールの時、みんなでイタズラしても目覚まさなかったよね!」
「そうそう、ほっぺひっぱたり、デコピンしたり。」
と、千織と羽織が笑う。
「ところで、お風呂とか着替えって?」
「黎人さんのお母さんが、やってくれたみたい。」
「うわっ、手のかかる嫁!」
「だから、昨日湊人くんと一緒に登校したのね?」
と千織に言われ、少し気まずい。
「湊人くんが、朝から怒っていたから。馬鹿兄がって。」
千織がクスクス笑う。
「で、昨日家に帰ったら、ママと父様に怒られたんだよ!わたし、ずっと勉強してただけなのに!理不尽だと思わない?」
あ、たぶんお風呂の中で寝てたけど。
着替えも、してもらったみたいだけど。
いや、他所様に迷惑かけているだろう。
と、3人は突っ込みたくなった。




