陽織、雑居ビルを調べる
今回の依頼は、都内にある雑居ビルのオーナーから。
オーナーは高須と言う男性で、同じ駅の周辺に5つのビルを持つ。
5つのビルは築年数こそ違うものの、ほぼ駅からの距離は同じくらいで、ほとんどが常に借主がいる。
しかし、その中の一棟だけが、なぜかすぐに出ていってしまう。
築年数8年で、さほど古くない。
5階建てでエレベーター付き、それぞれの階にトイレや給湯室もあった。
最後の借主に、聞いたところ、全ての階のテナントから幽霊が出る、という。
もし、祓うことが可能なら、祓って欲しい、と言うのが今回の依頼だった。
しかし、ここで高嶺が首を傾げたのが、なぜ神嶋が?という点だ。
まあ、それは後々聞けばいいか、とまずは問題のビルがある場所に行く。
場所は都内でも有数の繁華街。
昼間とあり、人混みがすごい。
ぼーっとしていると、人にぶつかってしまう。
「夜、陽織を連れてくるわけにはいかないなー。」
と高嶺が呟いた。
確かに、ちょっと入った路地にはまだ開いていない風俗店が立ち並んでいた。
「でも昼間は出て来ない、っていうのもあるから。」
と黎人が難しそうな顔になった。
「祈梨だって、夜は連れて来れないだろう。というか、この辺りに夜高校生が歩いてたら、まずい。和嶺くんだって、ダメだ。」
と悠人が重ねて言う。
それを聞いた和嶺が
「それじゃ、早いうちに頑張りますか!」
と拳を握って答えた。
まずは成人男性3人で、周囲の聞き込みを行うことになった。
和嶺、祈梨、陽織の3人は高嶺から預かった鍵で、雑居ビルへ入ってみる。
繁華街だが、表通りには映画館や、ドラッグストア、コンビニが並ぶ。
昼間なので、普通に子ども連れの親、高校生の集団もいた。
ビルの一階は、元々ファストフードの店が入っていたらしい。
中には、ファストフード店特有の、レジカウンターや、座席がまだ残っている。
世界中にある有名店なので、陽織でもこのお店の名前は知っていた。
「同業者がお店を出したいって言ったら、すぐに出せるくらい揃っているわね。」
祈梨が言った。
確かに、レジカウンターの中にある調理器具はまだ廃棄されず、手付かずのものもあり、それに新しいものばかりた。
店を開けて早々に閉店したってことか?
和嶺がネットで口コミを調べると、さほど悪い評価ではなかった。
ただ、いくつかに
『お店はきれいなのに、カサカサと虫がいるような音がする。気持ち悪い。』
『この店に入ったら、他の客の周りに変なモヤみたいなものが見える。出たら見えなくなった。』
『炎が見えたので、火事だ、と騒いだら他の人に変な目で見られた。』
といったものがあった。
「口コミだけ見ると、この店は怪し薬でも売ってるみたいだね。」
「知らない人が見たら、妄想って思われる内容だよ。」
「でも、だんだんお客が減ったのは事実ですから。」
それじゃ、と3人は2階に上がることにした。
2階は美容院だった。
美容院も、口コミの中で、」鏡に幽霊が映っていた」「時々、お客様に使っていると、突然ドライヤーの電源が切れる。」と言う美容師側のものもある。
3階は法律事務所、4階、5階は空いていた。
法律事務所は、ここに入ってから、ずっと負け続けている、と言う内容のものだった。
確かに、こちらの弁護士は優秀な人だったようで、大手法律事務所の弁護士として将来を約束されていた。
ところが、独立しここに事務所を構えてから、全く勝てなくなり、ここを去った。
今は順調に仕事をしているらしい。
「でもこれだけじゃ、霊障とは言えないね。」
「まあ、そこは高嶺兄様たちが、聞き込みしてくれているでしょ。」




