陽織、お正月を迎える
新年2日目、都内の有名ホテルの一室に、紋付姿の男性や着物を着た女性が集まっている。
周囲の人は結婚式?と言うような感じで見ているが、それにしては年配の人が多い。
その上座に陽織は黎人と並んで座らされ、とにかく落ち着かない。
なんで、こんなところに座らされてるの?
と、さっきから、下を向き冷や汗を垂らしている。
そのうち、会場の扉が閉められ、今年の司会を受ける大神先生が、挨拶をする。
「皆様、新年、あけましておめでとうございます。」
シーンとする中、多くの人の視線が陽織に集まり、とにかくドキドキが止まらない。
すごく目立つんですけど。
「まず、新年の祝賀会を始める前に、我々が探しておりました、今世の神様と花嫁様が見つかりましたことをご報告いたします。」
会を進める、現会長の天神大和が2人を紹介する。」
黎人は慣れたもので、堂々と挨拶をしている。
陽織は始終俯いて、言葉もカミカミだ。
もう嫌だー!
周囲の蔑むような視線が痛い。
そのまま退場できるのかと思ったのに、結局ずっとその場から動けない。
父の視線が痛い。
2時間、緊張の中、振袖で座らされ、陽織は限界を迎えそうだ。
閉式の挨拶で、ホッと息を吐くと、目の前に父がいた。父は黎人を一瞥し陽織の腕を引くと
「帰るぞ。」
と一言つげ、黎人に何も言わずに陽織を引っ張った。
今日のこのことを、父は知らされていなかったらしい。
陽織は、黎人にごめんなさい、と口の形だけで告げて、引っ張られながら入り口まで歩く。
途中、高嶺と和嶺が合流し、やっと陽織は父の手から解放された。
父は、他の人から声をかけられても、サラッと挨拶だけを交わし、余計な話をしない。
その後、高嶺の運転で、陽織たちは家路についた。
会場には、美織や千織たちもいただけに、陽織は色々いたたまれなかった。
3学期に入ると、和嶺は車の免許を取り、陽織は学校の送迎をされるようになった。
「寒いので風邪をひいては困る。」
と言うのが母の言い分だが、陽織を1人で歩かせない、と言うことらしい。
もちろんいつまでも続かないのは、両親だってわかってはいるはずなのに。
そんな中、陽織は和嶺と高嶺が受けた神嶋の依頼について行くことになった。
現場近くの駐車場に車を停めると、隣から悠人、黎人、祈梨が降りてきた。
黎人は陽織の姿を見ると、まるで引き裂かれた恋人のように、陽織に駆け寄って、ギュッと抱きしめた。
「れ、黎人、さん。」
「黎人、本当にウチの父が申し訳ない。」
高嶺が頭を下げる。
「みんなの前で、本当に大人気ないよな。」
和嶺は、正月の時の父親の行動に呆れていたらしい。
どうやら、兄2人が今回の依頼をお膳立てしたらしい。
「いや、神月さんが、怒るようなことをしたのは、事実、だから。」
そう黎人が答えると、
「それはそうか。んじゃ、黎人さん、殴っても構わないよな?」
となぜか和嶺が楽しそう。




