陽織、たぶん
クリスマスの翌日、みんなで美織の家に集まった。
今日は初めての女子会!
メンバーは、羽織、千織、陽織、そして美織だ。
羽織と千織は、美織の家がすごく立派なこと、美織の部屋がめちゃくちゃ可愛いことで、ものすごく盛り上がる。
みんなが揃うと、最初に一日遅れのクリスマスパーティー。プレゼント交換やケーキを食べて、キャーキャーと騒ぐ。
ごく普通の女子高生の集まりだった。
しかし途中、美織と千織の首元にある、ペンダントとネックレスが目に入った羽織の質問から、ちょっと方向性が変わった。
「ねえ、美織のネックレスって、もしかして誰かからのプレゼント?」
羽織の質問に、美織が一気に顔を赤らめた。
どう見ても普通の高校生が買える代物ではない。
「え、え、と。和嶺様からの、クリスマス、プレゼント、なの。」
「えーっ!和兄様、わたしにはうさぎのぬいぐるみだったのにー!」
美織の言葉に、陽織が不満の声を上げる。
それを聞いて、ちょっと美織も気が楽になったのか、もじもじしていた様子が少しだけほぐれ、楽しそうに笑った。
「千織も、だよねー。」
千織の首元にあるのも、高校生には、ちょっと頑張らないと手に入らないブランドのペンダントだった。
「それ、湊人くんからだよねー。」
羽織の揶揄うような目に、千織がうなづく。
「いいなー、いいなー。わたしも彼氏欲しい!で、どうせ陽織ももらったんでしょ?」
と、3人が陽織に注目する。
仕方ないので、陽織は美容師の人が最後に撮影してくれたスマホの写真を見せた。
「え?どれがクリプレ?」
そう。普通はそうなるだろ。
陽織が首を横に振ると、千織が、
「もしかして、全部?」
と聞き直す。
「う、うん。」
そこで、全員が固まった。
そーだよねー、どう考えても、そうなるよねー。
「ちょ、それって陽織ちゃん。」
「全部で、50万は、超える、よね?」
「いや、もっと、でしょう。」
「え?そうなの?」
陽織は改めて血の気が引く。
自分のお小遣いの100倍…。
「でも、祈梨さんも、同じような感じ、だったし。」
それを聞いた千織が
「えーっ?同じ兄弟で、何この差?」
「いやいや、仕方ないよ、悠人さんと黎人さんは大学生だもの。アルバイトとかもできるでしょう。」
「じゃあ、湊人くんも大学生になったら、千織にこれやるのかなー。」
陽織は50万円の衝撃が大きすぎて、固まったままだ。
実際にはアクセサリーなど含めると、100万円近いのだが。
「そーだよねー。和嶺さんも、湊人も、高校生にしては、かなり頑張ったよね。」
と、羽織の一言で、その話は終わったかのように思えた。
しかし、第二段!
「で、みんなは何を返したの?」
えっえっえっ?
その質問には、3人が同時に固まる。
「わ、わたしは湊人くんに、マフラー、あげたよ!」
と千織。
「わ、わたしも、和嶺様に、だ、その、服、を。」
と美織。
え?みんなちゃんとお返し、用意していたんだ。
そう思ったら、陽織は何も用意していなかった。
「それだけー?例えばー、わたし、とかは?」
羽織がだんだんと暴走を始める。
千織と美織は顔を見合わせて、キス、くらいなら、と答えていた。
陽織はそんな3人の様子を、まるでフィルターの向こう側の会話のように、ただぼーっと見ていた。
その時、ドアがノックされ
「美織様?お風呂とお食事、どちらを先にされますか?」
と声が掛かった。
「それじや、お風呂に行きましょう!我が家のお風呂には大浴場があるの!」
と美織が嬉しそうに提案した。
4人は着替えを持ってお風呂へ向かう。
あまりの賑やかさに、常日頃静かな美織の家が、とても賑やかになっていた。
4人は服を脱いで、体を軽く洗うと湯船に入る。
10人くらいは余裕で入れる広さに、みんなのテンションが上がる。
きゃっきゃっと騒ぐなか、千織が一番端でおとなしくつかっている陽織に気づいた。
「ネェ、陽織ちゃん。なんか、体中にアザみたいなのが、あるんだけど。」
「え?」
千織に言われるまで、陽織は全く気づかなかった。
昨日、一昨日、その前までは何もなかった。
途端、陽織は恥ずかしくなって顔を赤くして身を縮めた。
「それって、きす、マークって、やつだよね?」
羽織が言った途端、千織と美織が、えーっ!?と、立ち上がり、陽織の近くに集まる。
「ネェ、陽織の胸元にある、花と龍?みたいなのは、何?
「こ、これは、その、花嫁、の印。」
と答えたあと、龍?というのに陽織は驚いて自分の胸元を見る。
なかった!
前は花、だけだった。
花よりもすごく薄いけれど、龍の姿がある。
これは、初めて黎人から見せてもらった印に近い。
ーーーー
「神様の花嫁のことなんだけど。」
あの日。2人ベッドの上に座っている時、黎人が真剣な顔で陽織に話をしてきた。
もうすぐ黎人の時間が止まること。
花嫁を神様に召し上げないと、時間のずれが生じること。
昔は女性が13から15歳で婚姻をしていたのて、あまり支障がなかったこと。
夫婦の営みの中で、花嫁に神気を注ぎ神格に召し上げていたこと。
陽織は黎人と時間のずれができるのは嫌だと、黎人を一人にしたくないと、泣きながら抱きついたこと。
そのあと、黎人に優しく愛されたことをうっすらと思い出した。
ーーーー
わたし、黎人さんに。
「ひおり?」
「陽織ちゃん?」
「大丈夫?」
3人が心配そうに陽織の顔を覗き込んでいた。
「あ、うん。わたし、たぶん、黎人さんに、その、たぶんなんだけど、抱かれた、みたい?」
3人はほぼ同時に固まった。




