陽織、冬の始まり
陽織を自宅の前で降ろし、車が去る、
陽織が玄関を入ると家族が何故か総出で迎えた。
「??」
「陽織、一人で大丈夫だった?」
「良かった、遅いから迷子にでもなってるかと。」
「怖かったろう、早くお風呂に入って、休みなさい。」
両親と高嶺が次々と声をかける。
(わたしは小学生か?)
11月、和嶺の大学合格が発表された。
和嶺以外にも、悠人の巫女になる祈梨を始め、高3の明暗が次々と明らかになり、学校の中にも緊張が走る。
湊人は祈梨が大学に合格し、悠人が落ち着いて来たことで、少し安心している。
他にも、兄弟や知り合いに高3がいた人にとって、ここから3月までは、色々な意味での緊張が走っている。
「ね、ね、陽織。和嶺様の合格祝い、何がいいと思う?」
美織がもじもじしながら、嬉しそうに話かけてきた。
和嶺のお祝い、陽依は自分も兄の祝いをしたいとは考えている。
陽織は、あまり一生懸命な美織が可愛すぎて、ちょっと揶揄ってあげたくなった。
「一番もらって嬉しいのは、美織、じゃない?」
美織は一瞬何を言われているのかわからず、無言だったが、しばらく考えて、
「え?えーっ?何言ってるの?」
と、顔を真っ赤にした。
そして。小さな声で、
え?え?と、キ、キス、くらいなら。
と言うのを見て、陽織は思わず吹き出しそうになってしまった。
秋が終わり、冬の色が街を染める頃、いつもの勉強会メンバーが学校の正門を出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
以前の反省から、まとまった外歩きは避けていたが、暗がりを女子だけで歩かせるのは、と言う話になった。
当然、葉鳥と羽織は双子なので一緒。湊人と千織はお付き合いしているので一緒。
と別れ、今日はあとは翔太、美織、陽織の3人だったので、翔太が2人を途中まで送ることになった。
駅までの道、3人は翔太の姉の話になる。翔太は、なぜ陽織が姉のことを知ってる?と、焦った顔をしたのが、ちょっと笑えた。
前回、一緒に山梨の廃遊園地へ行った話をしたら、翔太もあー、となんとなく聞いたことを思い出す。
しかし、実際姉はあまり仕事の内容は話さないので、陽織がいた、と言うくらいしか聞いてない。
陽織はあれから彩奈さんと、時々連絡を取り合うようになった。それを聞いた翔太は、真面目に顔色を変えた。
「な、冗談だろ?」
と赤くなったり、青くなったりする翔太に、美織と2人笑ってしまった。
「大丈夫だよー。翔太のことは、全然話さないから。」
と言われ、それはそれで、ちょっと寂しい。
「でも、良いお姉さんで、羨ましいな!」
「あ、わたしもお姉さんって、憧れる!」
と美織と陽織が2人に言われ、翔太はそうかなー?
と、ちょっと嬉しくなった。
駅まで行くと、翔太はJRになる。
そこから陽織と美織は歩いて、美織の家まで揃って歩く。
美織と別れた後は、陽織は自転車に乗り、家路を急いだ。
自転車を家の中にある駐輪場に停めると、陽織は家の中に入った。
今日、父と高嶺は遅くなる、ということで、夕飯は母と受験が終わった和嶺との3人だった。
和嶺は今年のクリスマス、美織とデート?のようだ。ちょっと羨ましい。
陽織は夕飯の後お風呂に入り、そのあとは一週間後に迫った、2学期の期末試験勉強。
それが、ここ数日の毎日のルーティンだった。
以前と少し変わったのは、受験が終わった和嶺が、時々勉強を教えてくれること。
二学期になって、苦手だった古文と日本史も、人並みの1割弱?くらいまで、点が取れるようになったことだ。
期末試験まで三日となった、12月最初の日。神月家にちょっとした事件が起こった。
それは、フィギュアスケートの全日本選手権の出場メンバーに、陽織の名前がないことに気づいたスポーツ記者が、神月家に連絡をとって来たことだ。
高校一年生で、世界Jrチャンプの陽織は、全日本Jr.はもちろん、全日本の出場権も持っている。
そして、陽織は引退会見なるものをしないまま、フェードアウトしようとしていた。
それを疑問に思った記者がいた。
いや、スルーして良いのに!




