陽織、ドリアを食べる
陽織は黎人から力を少しもらって、なんとか歩くことはできた。
しかし、帰りの車に乗って、数分もたたないうちにウトウトし始めて、高速に乗る頃には、彩奈に寄りかかって眠り始める。
彩奈に寄りかかって眠る陽織を見て、黎人は優しく陽織の頭を包むと、自分の方へ倒し直す、
そんな様子を見た彩奈はクスクス笑う。
「こんな可愛い娘が、こんなやつのモノになると思うと、納得できないなー。」
彩奈が小声で黎人を揶揄った。
黎人はそんな彩奈の言葉にムスッとする。
もちろん、前の2人にも聞こえていたらしく、助手席の剛志も振り向いて笑った。
「ま、確かに高嶺が心配するはずだわ。こんな可愛い妹が、こんな無防備に寝ているなんて。」
剛志の言葉に黎人は殺気を見せる。
「おっと、怖いなー今世の神様は。」
剛志の言葉に、黎人が違う意味の殺気を出した。
「神様、なんだよな?」
剛志に言われ、黎人は小さくうなづいた。
「でも、すっごく普通の男子!だなー。」
そう言われ、黎人は何を言われているのかわかり、顔が赤くなったなった。
「そりゃ、こんなに可愛い子が"花嫁"じゃなー。」
「なんで、わかったんですか?」
黎人が珍しく小さな声で聞き返すと
「そりゃ、逆だもん。わかるよ!」
と言われた。
「逆?」
「そう。もし陽織ちゃんが巫女なら、逆だろ?使役神獣を操る俺たちの方が枯渇して、巫女様が力を補給する。でも、さっきは陽織ちゃんに、お前補給していたじゃん!て、いうか、あれだけやっても、全っぜん、ケロッとしてるじゃん。」
「いえ、それはみなさんだって。」
「いやいや、子どもたちの霊を癒して、祓って、闘って、建物全部を浄化、なんてできないもん!」
「そうですね。運転も、行き帰り交代ですし、僕も早く帰って巫女ちゃんに会いたいです。」
「そ、これが普通!」
「それに、黎人だけじゃないよ。陽織ちゃんだって、まだ本格的なの、数ヶ月前からだろ?どんだけ力あるんだ、って。」
「まだ、制御の仕方が上手くないんです。」
陽織の代わりに、黎人が答える。
「はじめに子どもたちの霊に気付いたのも、彼女ですし。なんと言っても、白兎様ですから。」
剛志と拓哉に、畳かけられるように言われた。
「白兎様は神様の使い。滅多なことでは使役できない、とぼくたちは聞いています。」
「そう、使役できるのは、神様か、その伴侶となる人くらい。」
黎人はため息をつく。
「おかしいって思ったよね。あの神月の姫が能無し、なんて。」
さらに彩奈も、口を挟む。
「ずっと、父親が力を封印していたそうです。」
観念して黎人も答えた。
「そりゃ、大切な一人娘だもの。早々に神様の花嫁なんかにしたくないって。」
「陽織にも話しましたが、みなさん勘違いしています。僕は、普通の人と同じで、ちょっと違うのは、そろそろ歳を取らない身体になって、たぶん、みなさんよりも老いるのに、少し時間がかかるだけです。」
「少しって?」
「‥‥‥、たぶん10倍、くらい。」
全員が、急に押し黙った。
「じゅ、」
「じゃあ、20代が100年、続くのか?」
「たぶん。」
「こわっ!」
「羨まし、あ。」
「陽織ちゃん、は?」
「彼女だけ年取るのか?」
「いえ、今でも、織子様、は、母より若い、ですから。」
「織子様、って、あの、織子さま?」
「でも、どうやって?普通の人、なんだよな?」
「それは、神気を‥。」
「神気を?」
3人は興味津々だったが、黎人がそのあと黙って顔を背けたので、それ以上は聞かなかった。
顔は背けても、腕はしっかりと陽織を守っている。
大人3人から見ても、なんかくすぐったくなるくらい、羨ましい姿だった。
都内に入って、陽織が目を覚ましたのを見計らって、ファミレスで夕飯にする。
大人3人はハンバーグやステーキのセットとデザート。
彩奈も同じようなものを注文した。
黎人は和食定食、陽織はエビドリアだ。
「お腹空くんだよねー。」
「まあ、食事するだけでも、少しは回復しますし。」
「お酒!欲しいよねー!」
「お酒はやめてくださいね。」
黎人が言うと、彩奈が
「えーっ?黎人が運転してくれるんじゃないのー?」
と聞いてくる。
「運転しても良いですが、そうなると、みなさん3人が後部座席ですよ。」
と、冷たく言われた。
剛志、拓哉、彩奈の3人は、それぞれが同じ座席に収まることを想像して、おとなしくノンアルに変える。
「それより、陽織。食べ切れる?」
黎人はドリアをハフハフしながら食べている陽織を心配する。
今まで、陽織は眠ってしまうと夕飯食べずにそのままか、食べても、おにぎりやサンドイッチ、一個程度だった。
陽織は、ちょっと首を傾げると、ドリアをスプーンにすくって、黎人の口元に持って来た。
「あーん?」
と陽織が言うので、黎人がバクっと食べると、陽織が嬉しそうに笑う。
口に入れたもののびっくりした黎人が、目を白黒させると
「え?黎人さん、食べたいのかな?と思って。」
と陽織が、恥ずかしそうに言った。
そんな陽織の隣に座る彩奈が
「なに、この子!可愛すぎる!」
と、陽織をギュッと抱き寄せる。
そんな陽織を、黎人が慌てて抱き寄せ返す。
「ちよ、黎人さん、恥ずかしいで、す。」
そんな陽織を前に座る大の男二人は
(今更。)
と、生暖かい顔で見ていた。




