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陽織、感謝する

陽織の冷気で、全身が氷漬けになった悪霊を黎人がにぎり潰した!


その瞬間、幽霊屋敷が、轟音に飲み込まれ、潰れて行く。

悪霊が全て姿を消した途端、幽霊屋敷がゴゴゴーッと言う地響きをたて、崩れていく。


大人たちが、自分の使役獣に陽織と黎人を乗せ、建物から脱出する。

いくら遊園地の仮説建物とは言え、瓦礫の下になれば、ただでは済まない。


ギリギリのところで外に出た5人は、崩れ行く建物を呆然と見ていた。

「かん、一髪、だったね。」

拓哉が大きなため息をつき、黎人を降ろす。


紫龍から降ろされた黎人は、すぐに彩奈が連れて来た陽織の方へ駆け寄った。

案の定、陽織は枯渇寸前だ。

最後の氷漬けで、一気に力を使い果たしていた。


「陽織!陽織!」

黎人は三尾の狐から崩れるように降りた陽織を抱き止める。


そして、自分の力を陽織に注いだ。


うっすらと目を開けた陽織は、いつもこうやって黎人が助けてくれていたんだ、ということを初めて知った。

目の前には黎人の顔がある。

「気がついた?」

と声をかける黎人に

「ありが、とう。」

と陽織は、柔らかく笑って呟いた。


(え?何?今の。いつもなら、絶対に怒られるのに!この前は怒って車から、降りちやったのに!)

黎人は顔が真っ赤になるのを感じた。

顔が熱い!

(か、可愛い!可愛すぎる!)


そう思った途端、もう一回!

と黎人の口が陽織の顔に近づいたとき、

「ゴ、ゴホン!」

という、わざとらしい咳払いが後ろから聞こえた。


「黎人くん、今どさくさに紛れて何かしてなかった?」

彩奈が、黎人の肩をガシッと掴む。


恐る恐る黎人が振り向くと、大人3人が三者三様の顔で、見下ろしていた。


(しまった!他人に見られていた!)


なんとなく騒がしい雰囲氣に、陽織が覚醒して行く。

「陽織ちゃん、大丈夫?」

彩奈が陽織の顔を覗き込んでいた。


「すっげえな、あの氷!」

「攻守両方とは!」

拓哉と剛志が、陽織を称賛する。


彩奈に支えられて陽織がヨロヨロ起き上がった。

まだ、足元がふらつく。


その時、黎人が

「そうだ!陽織、ハクを貸して。」

と前回と同じように言った。


陽織が、胸ポケットの内側から、白桃を出すと、自分の小龍も出して、建物に戻って行く。


白桃と小龍に話しかけて、幽霊屋敷全体を光で覆った。

これで残っていた、小さな霊たちも、綺麗になって行くべき場所に登って行く。


白桃と小龍の姿を見ながら、黎人は

「良かった、勝手にハクを探さなくて。」

と、また赤くなった。


「なるほどねー。だから小龍と白兎様、なんだ。」

拓哉が呟く。

他の大人2人も、その言葉を聞いて、納得の顔をしている。


陽織一人が、何を言っているのか、よくわからなかった。




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