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陽織、悪霊と闘う

悪霊は一人ではない。

目の前にある墓石から、次々と湧いては、子どもたちを追いかけ、乱暴を働いていた。

恐怖で逃げ回ったり、怯えて動けないところを、捕まえられている。そんな子どもの姿を見た途端、陽織のスイッチが入ってしまった。


「あ、」

黎人が手を伸ばすまもなく、陽織がかけ出して、一人の子を背に悪霊に氷の刃を叩き付けた。


一瞬、出遅れたものの、陽織が走り出したことをきっかけに、大人3人が悪霊に向かって、術を繰り出す。


その中の一人、拓哉は紫龍を出していた。

剛志は緑鬼、そして彩奈は白い三本の尾を持つ狐だった。


黎人は陽織を引き戻すと、あちらこちらに負傷を負う子どもたちを治し始める。


もちろん治すと言っても、生きているわけではない。

以前陽織がやっていたように、姿を元に戻してあげているのだ。


我にかえった陽織も、戦闘を大人たちに任せて、子どもたちの足や腕、目や耳と、奪われたり、壊されてしまった身体を元に戻すことに、専念する。


今回、黎人と陽織が、あの3人と一緒に呼ばれた理由が、少しだけわかった。


たぶん、彼らは戦闘向き、こういう力の使い方はあまりしないのだろう。


陽織が一人ずつ治す間、黎人は陽織と子どもたちの周りに結界を張り、さらに綺麗な身体に戻った子ども、一人一人を行くべき場所に送っている。


(ヘェー、力の使い方、上手になったな。)

背中で一人一人の身体を元に戻す陽織を見て、黎人は感心した。

(これなら、今日は大丈夫かな?)


大人3人たちは、後ろの2人が連携よく、一人一人を浄化させてあげていることに、関心していた。


あと二体!

拓哉がそう思った時、陽織の後ろにあった墓碑が大きく揺れ、今までの悪霊とは、桁違いの大物が現れた。


手の空いた剛志が、緑鬼をその悪霊にぶつける。轟音が響き、黎人の結界が軋む。


子どもたちの浄化を終えた黎人が立ち上がり、悪霊の背中目掛けて炎を放つ。

しかし、その悪霊自体が1人の人間の霊ではなく、複数の霊が集まってできたものだった。


黎人の炎を受けると、霊が霧散し、また一つになる。

それを見て、剛志が霧散した一体が集まる前に切りつけた。


しかし、切りつけられた霊を補うかのように、墓碑からまた新しい霊が引き寄せられるように、一つになっていく。


「あの墓碑をぶっ潰すか?」

剛志が物騒なことを言う。

「いや、それよりも中にいる親玉的な霊を祓わないと、キリがないです。」

黎人が答えた。


あまりに多くの霊を取り込んだ一体の、誰が心臓部になる霊か、全く見えない。

キリがなくても、少しでも減らすしかない。


黎人は3人が霧散させた霊、一つ一つを握りつぶす。

大人3人は、その前にも散々戦っていたので、そろそろ限界が来そうな雰囲気だ。


とにかく、帰りの運転ができる体力を残さないと。

など、拓哉と剛志は頭の隅で考える。


結界の中で、その様子を見ていた陽織が、守られているだけが申し訳なくて、何かできないか、とキョロキョロし始めた。


その時、はじめに陽織が放った氷の刃で倒れた悪霊の、墓石が目に入る。


その瞬間、陽織は自分の3倍くらいの太さある悪霊全体を包む、冷気を放った!


すると、悪霊が足元から、氷漬けになっていく。

「いっ?」

「な?」

大人3人が、陽織の方に振り返る!


全体が、完全に凍ったところを狙って、黎人が悪霊に向かって右腕を突き出した。

さらに大きく手を開くと、強くギュッと握る。


その瞬間。

凍った悪霊の体が、バリーン!

と、大きな音をたてて、まるで氷砂糖が砕けるように、散って行く。

黎人によって、氷漬けにされたモノが、握りつぶされた瞬間だった。


「なんだ、この桁違いは!」














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